第3話 子供?

「お母さんとは何だ!人を子供扱いするな!」


「いや、どう見たって子供だよね!三歳ぐらいだよね?お母さんはどこにいるのかな?」


「ふざけるな」


その子は、俺に向かっておもちゃのパチンコを向けてくる。


「ちょっ、ちょっと待ってくれ……。そんなの人に向けたら危ない」


俺は、女の子を止める。


「じゃあ、これをくれ」


女の子は、おもちゃの剣と【エルフです】というTシャツを差し出してきた。


「こ、これ?!」


「そうだ!これだ」


「ちょと待ってね」


俺が、値段を調べようとした時だった。


「これで、足りるか?」


「これ?何?」


「金貨だ」


「き、金貨?!」


女の子は、金貨を三枚差し出してきている。


金、三枚……。


俺は、女の子の差し出した金貨の意味がわからない。


「何だ!足りないのか?」


「い、いや。たぶん、多いぐらいで……」


俺の言葉に、女の子は驚いた顔をした。


「ドラゴンは、いつも金貨三枚でいいと言ってくれているが……」


「ド、ドラゴン……?!誰?」


俺は、女の子に驚いて尋ねる。


「ドラゴンは、いつもここに座っている」


もしかして、伯父さんの事を言っているのだろうか?


「眼鏡をかけて、七三で、白髪頭かな?」


俺は、伯父さんの髪型を女の子にやって見せた。


「そう、それだ!それが、ドラゴンだ」


どうやら、伯父さんであっていたようだ。


「じ、じゃあ、三枚で」


「そうか!じゃあ、三枚」


俺は、女の子から、金貨三枚を受け取ると袋に、Tシャツと剣のおもちゃを入れた。


「出口まで、お持ちします」


俺は、袋を持って女の子を見送る。


「あ、あの出口は……」


女の子は、俺を気にしないで歩いて行く。


「ここでいい!」


「はい、ありがとうございました」


俺は、試着室の前で女の子と別れた。


女の子は、三つある試着室の真ん中に入って行った。


(えっ?試着しに行ったのか?)


俺には、意味がわからない。


(さっきのTシャツをまさか試着しているとか?)


俺は、その場で、暫く待っていた。


しかし、女の子はなかなか出てくる様子がない。


「し、失礼します。お客様、開けますよーー」


俺は、声をかけてから、シャアーーっとカーテンを開いた。


「い、いない……何でだ?」


そこには、誰もいなかった。


俺は、試着室の中に入って叩いてみるけれど、ただの試着室だ。


どうやら、マジックではない事がわかった。


俺は、カーテンを閉めてレジに戻る。


「おい!テメー。早くしろよ」


「す、すみません」


二人目に来たのは、白髪の若い男だった。


【俺は、勇者だ】と書かれたTシャツを着ている。


「えっと……」


「これだろ?」


彼も、金貨三枚を俺に渡してくる。


「あ、ありがとうございます」


俺は、すぐに袋に入れる。


彼は、【勇者見習い】と書いたTシャツとオモチャの剣を買っていった。


俺は、彼を見送りに行く。


「これな!弟へのプレゼントなんだよ」


「そうなんですね」


「喜ぶよ!これを、渡したら」


「そうですか」


俺は、彼の言葉に苦笑いを浮かべる。どこの世界に、そんなTシャツを貰って喜ぶ人がいるのだろうか?


もしかすると、海外の人なのか……?


「ここでいい」


「ありがとうございました」


俺は、彼に袋を渡す。


彼も、また試着室に消えて行く。


(マジック?手品?裏口か?)


俺は、暫くしてからまた試着室を開けた。


「失礼します」


シャアーー。


やっぱり、ただの試着室が広がっているだけだった。


(どうなってるんだ?)


俺は、レジに戻った。


「ドラゴン、ずいぶんと若返ったな」


レジに戻るとまた別の男の人が立っていた。


顎髭を生やしたイケメンなのに【王様です】と書かれたダサいTシャツを着ていて俺は笑いそうになってしまう。


「あっ!伯父は、今、休みなんです」


「あーー。あんたは、甥っ子さんか……」


彼は、そう言って笑っている。


「はい」


「じゃあ、これな」


差し出されたのは、【息子】と書かれたTシャツだった。


「あと、これな」


そう言われて、渡されたのは犬がキャンキャン鳴くタイプのおもちゃだ。


「はい、えっとお会計は……」


「これでいいか?」


さっきとは違い。金貨四枚を差し出される。


「お、多くないですか?」


「生き物は、金貨三枚って約束だっただろ?」


「い、生き物ですか?」


俺は、彼の言葉の意味がわからなかった。


どこに生き物がいると言うのだろうか?


もしも、この犬の鳴き声のおもちゃが生き物だと言うのなら……。


俺は、生き物ではないと彼に話すべきだろうか?


「悪いな!時間だ!早く帰らなくちゃならない」


「あっ、はい」


俺は、急いで袋に詰める。


「送ります」


「ありがとう」


俺は、彼を送りに行く。


「今日、息子に、初めての鎧と魔獣をプレゼントするんだ」


「へーー。そうですか」


鎧?魔獣?いったいどこの世界の何の話をしているのか、俺にはさっぱりわからない。


「だから、買えてよかった!助かった!ありがとう」


「いえ、こちらこそ、ありがとうございます」


彼は、俺から袋を取って試着室に入って行く。


俺は、暫く待ってから、また試着室を開ける。


シャアーー。


(やっぱり、誰もいない)


時計を見ると23時になっていた。


「えっ?あれ?さっきの人達は?」


さっきまで、店にたくさんいたはずの人はいつの間にかいなくなっていた。


「どうなってんだ?」


俺には、意味がわからなかった。


俺は、レジに向かう。


レジに置かれた金貨を見つめる。


本当に金貨なのか?


明日、質屋にでも持ってくか?


俺は、レジに金貨をしまった。


12時になって、今日がようやく終わった。


あの仮装した人達は、何だったのだろうか?


明日、伯父さんに話を聞いてみよう。


俺は、金貨を袋にいれて鞄にしまってから家に帰宅した。


帰宅すると、今日は母も眠っているようだった。


俺は、母を起こさないようにご飯を食べてシャワーを浴びて部屋に行く。


さっき渡された金貨を見つめる。


「これって、本物の金なのかな?もし、そうなら……」


かなりの重さだ!これが、金だとしたら……。


母さんが、伯父さんが一括で、戸建てを買えたって意味が理解出来る。


明日、伯父さんに聞いてみようかな?


そしたら、何かわかるかも知れないよな……。


疲れがいっきに押し寄せて、気絶するように眠った。



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いらっしゃいませお客様!~お帰りは試着室ですね~【仮】 三愛紫月 @shizuki-r

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