第5話 

 夜弥美は真飛流とタクシーに乗って移動をする。



 一通り、真飛流は泣き疲れて、落ち着いたあとに小さな声で夜弥美へこう言った。


『ちゃんと貴方を愛している証明をしたい』



 タクシーが突き進む先の回りの景色は繁華街から、歓楽街へ変わる。



 そしてラブホ街へ。


(……え、ヤる気満々なの?)



 しかし、そのちょっとした期待も、直ぐに薄れる。


 更に突き進む。



 行き先は知らない夜弥美。


 住所の紙を真飛流はタクシー運転手に渡したので。



 景色は徐々に住宅街と農地、自然が広がる地域へ。



 そろそろ目的地を聞こうと思い、夜弥美は真飛流に尋ねる。


「真飛流、どこへ行くんだい?」



 真飛流は「あとちょっと」と一言だけ言う。



 するとタクシーは止まる。


「真飛流」


「……何?」


「ここどこ?」



 タクシーを降りる夜弥美と真飛流。

 


真飛流は、


「ここから少し歩きましょう?」


と言いながら、歩こうとするが、夜弥美それを止めて、尋ねる。



「僕を何に『利用』しようとしてたの?」



「……」



(これだけ……。これだけ聞いたら僕はもう---)





 真飛流は何も言わず、夜弥美の手を強く握る。


 そのまま歩こうとしたので、夜弥美は抵抗して手を振り解く。


「答えて」



 振り解いた瞬間、真飛流は夜弥美の方を一瞬向く。


 ……今にも泣きそうな顔が見えた。



(演技……ではない?)


 判らない。



 真飛流はまた俯く。


 そのまましばらくの間が空く。



 誰も通らない田舎道。


 日差しが降り注ぐ中、向き合う男女。



 夜弥美は、(このまま真飛流が何も言わないなら戻るか……)と思いながら、溜め息を吐く。


「もう良いかな?僕はもう---」


「---そうね、利用していたのは事実」



 真飛流が夜弥美の言葉を遮って、口を開く。


 夜弥美は覚悟をしていたので、(やっぱりか)と言う程度ではあったが、それでも精神的ダメージはある。


「そっか」



(もう真飛流との関係はこれで終わり。……別れの挨拶をして帰ろう)


 一瞬、そう思ったが、タルトの言葉を思い出す。





『悪い癖出てる。---ちゃんと向き合って話をすべき』





(---だっけかな)


 うろ覚えなので、差異はあるかもしれない。


 なので、夜弥美はもう一つだけ問う。



「……その心は?」



(いや、落語か)


 夜弥美は心の中で勝手に滑る。


 思い付いた言葉がそれだったが、間違いでない筈……。




 真飛流は少し驚いた顔をする。


「そ、それは……。---弾除けとして使わせて貰ってた、わ……」



 夜弥美は思い出す。


 オバチャン受付嬢からの内部リーク。


 法令遵守が言われる世の中だが、未だ緩いので“噂”と言うのはマッハで広がる。



 夜弥美はどう言うつもりで、自身を“弾除け”にしていたかは気になった。


 しかし、例の父親が決めた婚約者相手とは“お家”的に、政略結婚は免れないだろう。


 ほぼ別れたも同然の今となっては、言い訳に使えまい……。



 夜弥美は深呼吸をして天を仰ぐ。


「そっか……」



 次に飛流を見る。


(……ライウンとその内、結婚するんだろうなぁ)



 そう思いながら、夜弥美は言葉を選びながら言う。


「『利用』していたのがバレてしまったからには……。---もう僕は要らない?」



 それを言うと、真飛流が泣き始めた。


 頬に伝わる涙。


 小さな声で「……嫌」と言う。



 夜弥美はそんな真飛流と、その言葉を聞いて揺らぐ。


 しかし、どこまでが演技なのかと言う思いが邪魔をして、素直に話しを聞けない。


(どうする?)





 真飛流は引き止めようとする雰囲気はある。


 それに応えるか否か。





 1つ目のルート。



 ここで無理にでも別れて、のらりくらりと過ごすルート。


(多分、今後は何も無い)


 勇者と言う夢を諦める。


 冒険者も辞めてしまえば、特筆すべき事の無い人生になる。



 ---新たな人生!新たな恋!



 夢を見過ぎだ。


 今が正に、そのピークなにに。


 これを逃せばあとは下火。


 恐らく……。


 いつか後悔が生まれるであろう。





 2つ目のルート。



 真飛流とヨリを戻す。


(とは言え、その前に正面から向き合う必要がある)


 その話し次第では、別れ話へなる可能性は十分にある。


 しかし、そっちの方が後腐れはないだろう。





(タルトのアドバイスを実行するにはこっち……かな)


 真飛流が夜弥美の正面へ抱き付く姿を胸元で見ながらそう思う。


 それと、


(相変わらず、泣き虫だなぁ)


 と、思いながら、自然と夜弥美を優しく抱きしめる。



 真飛流から鼻を啜る音がする。


「ごめんなさい。……何を言っても。……言い訳にしかならない。……。けど……。アタシの気持ちはね。……ヤミちゃん一本だから。……信じて」



 それを聞いた夜弥美はアサダに言われた言葉を思い出す。





『お前、冷徹人間だよなぁ。信じてたのに、いきなり断ち切るし。そう思えばまた手のひら返すし。単なる効率厨かと思ってたけど……。---ま、利用していたのはどっちか考えもんだ』



 アサダと2人で、道案内の老人に道を尋ねながらクエストをしていた時の事。


 3人で片道の道中は助け合いながら進んでいた。


 主な仕事は、歴史的資料の回収任務だったが、夜弥美は高価そうなモノを見付けてはこっそりと回収していた。


 帰る直前。


 その中でも、1番怪しい代物があった。


 それを老人が懐に入れて盗もうとしていたのを夜弥美は目撃したが、何も言わなかった。



 しかし、老人が懐に入れたそれは、やたら魔獣を呼び寄せ、帰り道は苦労の連続であった。


 その内、それらに追い詰められ、夜弥美もアサダも対応し切れず、魔獣に囲まれ、崖っぷちの老人に命の危険が迫る。



 そんな中、夜弥美はアサダにこう言った。


「怪しい鉱石だと思ったらやっぱり危なかったか……」


「知ってたんかい!」


 アサダはズッコケる。



 老人は「助けてくれ!」と言うが、夜弥美はそんな気は無い。


「その鉱石を谷へ捨てたら良いんですが」



 老人はそれを頑なに嫌がる。


「ならぬ!」



 アサダは助けたい気はある。


 しかし、目の前で襲い掛かって来る狼の魔獣の処理に精一杯である。


「お姫ちん、真面目に戦ってくれ」



 夜弥美は涼しい顔をして、襲い掛かって来る魔獣を刀で断ち切る。


 目にも止まらぬ速さで。


「真面目に戦ってるよ。あと、その呼び方辞めて。---そもそも、あの鉱石をそのまま街に持ち込む訳にはいかないからなぁ」



 老人は怒る。


「貴様、試しおったな!しかも案内した恩を仇で返すとは、下賤な人間め!」



 夜弥美は呆れる。


「じゃあもう良いです、下賤な人間で。---僕は帰るよ、アサダ」



 回収した代物が入った荷物はアサダが背負っている。


 アサダも怒る。


「おい、そんな事出来るか!」



 老人はそれを聞き、


「もう良い!」


 と、叫んで、懐に入れていた鉱石を谷へ向かって投げ捨てる。


 すると、魔獣は大人しくなった。



 それと同時に、夜弥美は“飛行術”で飛び、それを回収。


 目にも止まらぬ速さで。



 夜弥美が鉱石を掴むと、魔獣が今度は夜弥美に襲い掛かろうとする。



 しかし、飛距離が足りずに、谷底へ全員まっ逆さま。



 申し訳程度にしか谷底が水が流れていない水路なので、鈍い音が響く。


 アサダはそれを覗き込む。


「……やったか?」



 夜弥美は老人の横に降り立つ。


「ほい」


 鉱石を渡す。


 老人は夜弥美を睨んで受け取らない。



 夜弥美はアサダに鉱石を渡そうとする。


「あげる」


「捨てなさい」



 そう言われた夜弥美は懐から、何か袋を取り出す。


 紋章が色々書かれている。


「ま、効能が判ったし、助かったよ」



 それを袋に仕舞い込む。


「本当の目的物はこれ。---村が滅んで理由を探る大切な手掛かりさ」



 そう夜弥美が言うと、老人はその場に座り込む。


 夜弥美はそれを見て、こう言った。


「……さて、この苦情ギルドの所長に言ってね。僕もこれは覚悟の上で来たんだ。---じゃないと、こんな茶番なんかしないさ」


 そう言って、鉱石を入れた袋を懐へ仕舞い込む。


「---さ、帰るかな、アサダ」



 何かと不服そうなアサダは『むす』っとしながら、夜弥美と老人の傍をすり抜ける。


「ふん。菜々緒様にヤミ姫に。---人を試すのが好きだな」


 そう言いながら、早足で進む。


 夜弥美は溜め息を吐く。


「それ1番嫌な呼び方。---あ、待ってよー、アサダー」



 その姿をしばらく老人は眺めていたが、直ぐに追い掛ける。


「……わしのせいじゃ。---まさか、わしがあの鉱石を村に持ち込んだせいで……」



 そんなセリフを夜弥美とアサダは聞いたが、何も言わなかった。


 聞かなかった事にしたのである……。





 この話しは真飛流が入院中の事である。


 夜弥美のふとした思い出しエピソード。









 現在、二人は廃線となった路線バスの停留所に残されたベンチで座って休憩をしている。


 囲いと屋根がある。



 張り紙に『雨宿りとして使うのに、残して貰っています。綺麗に使いましょう』と書いている。


 真飛流は夜弥美の腕に抱き付いてボーッとしている。


 豊満な胸が押し当てられて、その柔らかい感覚が判る。



 真飛流はタルトとは逆で、沈黙があるまでずっと喋り続けるタイプである。


 一度、沈黙すると次の行動に切り替えるまで少し時間が掛かる。


 切り替わったらあとは早い。



 夜弥美は真飛流を見る。


 視線に気付いたのか、真飛流は顔を上げて、夜弥美と目が合う。


 真飛流の目元は少し腫れている。


 涙袋が特に赤い



 そのまま見つめ合う2人。



 真飛流は目を瞑る。


「……ん」



 付き合い始めの時、真飛流がよくしたキス待ち顔である。


 当時、奥手の夜弥美を誘う手段であった。



 夜弥美はそれを思い出し、それに乗ろうか悩んでいたが……。





「んん〜?中々来ないと思ったら、抜け駆け相引きかな?」





 菜々緒だった。


 夜弥美はそっちを向く。


 しかし、真飛流は夜弥美の腕に抱き付けていた両腕を離し、そのまま夜弥美の顔を両手で包む。



 そして、そのまま真飛流は夜弥美に顔を近付けて---。



「はいはい、それは後にしたまえ」


 菜々緒が真飛流の顔を両手で掴んで動きを阻止する。



 真飛流は抵抗をする。


「離しなさい」



 菜々緒も抵抗をする。


「『するな』、とは言わん。『後にしろ』、と言ってる」



 そう菜々緒に言われた真飛流は力を抜く。


 菜々緒もそれに従って、力を抜く。



 もう一度、真飛流は夜弥美に顔を近付け様とするが、また菜々緒に阻止される。



 それを5回位繰り返して、先に真飛流が折れる。


「……はあ。---お邪魔虫」



 真飛流は夜弥美の顔を包んでいた手を避ける。


 菜々緒も真飛流の頭から手を引く。



 真飛流に『お邪魔虫』呼ばわりされた菜々緒は、


「略奪愛でヤミ君と寝なかっただけでも褒めて欲しいモノだ」


「アンタ、婚前交渉はしないんじゃないの?」


「ふっ。略奪愛の成功の秘訣は性交だ」


 ドヤ顔で言うが、真飛流は真顔である。


「……」



 これに夜弥美は苦笑いをするだけにした。


(……菜々緒さんにそうされたら、鞍替えはあり得たかもしれないけど、今、そんな話しをするのは辞めておこう)



 菜々緒は夜弥美を見る。


「んで、ヤミ君は真飛流と腹を割って話せたか?---そうして仲睦まじくしている様子だと」


「……あー、えっと。---……未だです」


「何?そんだけ散々ゆっくりしておいて、未だだと⁉︎」


 菜々緒は真飛流を見る。



 真飛流はそっぽを向く。


「態度で示しているわよ!これから身体で示すところだったけど、邪魔されたのよ、アンタに」



 菜々緒は呆れる。


「あのなぁ。それはダメだっていったぞ?オレは」


「あんたはヤった経験が無いからよ。身体を許す事が一番伝わるの!」


 真飛流は言い返すが、菜々緒も負けじと言い返す。


「性欲解消、都合の良い女。---そう思われてるだけかもしれんぞ?」



 これは効いたのか、真飛流は「うっ」と言葉を詰まらす。



 菜々緒は溜め息を吐いて、夜弥美の横に座る。


「結局、オレが言うハメになるのか?」


「……」


「まぁ、オレは今からヤミ君とハメるのはやぶさかでは無いぞ?」



 夜弥美は所々、下ネタを言う菜々緒にはツッコミは入れない。


 菜々緒は夜弥美を見る。


「全然ツッコミを入れてくれないな、ヤミ君。---何、オレの中にツッコムと言うならば受け入れるぞ?」



 これに真飛流は呆れる。


「アンタ、さっきから見境ないわね。アイデンティティも、もう滅茶苦茶」



 菜々緒は鼻で笑う。


「ふっ。ヤミ君と久し振り会えて嬉しいのはオレもだぞ。---ぐふふ。改めて見ると、婚前交渉しないとかもうどうでも良くなった」



 菜々緒は立ち上がり、クルッと回って夜弥美と真飛流を見る。


「それより、こんな所でずっと話すのもアレだ。---早く行くぞ」



 菜々緒は夜弥美の手を掴んで、立ち上がる様に促す。


 真飛流も立ち上がる。



 菜々緒はそれを見て頷き、歩き始める。


 夜弥美と真飛流はそれについて行く。



 夜弥美は尋ねる。


「一体、どこへ?」



 菜々緒は答える。


「ああ、家を買ったんだ」



 ……。


「……なんだって?」


 夜弥美はもう一度問う。



 菜々緒ももう一度言う。


「家を買ったんだ。真飛流と一緒にな」



 夜弥美は真飛流を見る。


「……マジ?」



 真飛流は頷く。


「うん。---買わされた」



 これに菜々緒は抗議する。


「失礼な」


「アタシが賃貸契約するつもりが、横取りしたのは誰?」


「結果的に良いじゃないか。後々を考えたら持ち家の方が良い」


「アンタはここに骨を埋めるから良いけど、アタシはヤミちゃんを実家に閉じ込め……実家で一緒に暮らす予定だったのに」



 夜弥美は、真飛流に尋ねる。


「しれっと凄い事言わなかった?」


「言ってない。---兎に角、どうやってうちの叔父様言いくるめたか知らないけど、余計な事を……」



 それを菜々緒はニヤっと笑って真飛流に言う。


「いやー、叔父様が話の判る人で良かった。もう一度言うが、『共同出資なら格安にする』って、言ったのは叔父様だからな?あと、今の彼氏と仲睦まじく過すのも条件。



 真飛流は今更もう文句を言うのは諦めた。


「判ってるわよ……」





 そうこう話をしていたら、それらしき物件に到着。


 外観は綺麗だが、広い庭は草木雑草だらけである。



 表札を見た夜弥美は、


「真飛流。表札がおかしい」


 と、ツッコム。



『剛山』



 と書かれている。


 菜々緒が答える。


「将軍家の元別荘だ」









「うえぇ……」


 夜弥美は中を見て驚く。


(どおりでやたら豪華だ)



 現在、征夷大将軍は『剛山』を名乗っている。


 その家の分家が慰安で昔、過ごしていたと言う。



 大元の持ち主が亡くなってから、この辺りで地主をしている真飛流の叔父が数年前まで、委託を受けて維持、管理をしていた。


 しかし、財政緊縮策でこうした物件を手放した政府は、真飛流の叔父が一部負担で買取となった。


 条件付きで。



 要約すると、『人を住まわす時は、身内のみ。甥っ子まで』と言う縛りはある。


 なので、丸で真飛流を住まわす為の様な物件なのである。





 真飛流はこっちの方へ帰って来たのは3日前。


 菜々緒は一昨日。



 昨日、2人は地道に引越しをしていたと言う。


 元々、モノが無い2人だったので、私物の持ち込みは容易だった。



 家具、家電は若干古いが、備え付けが完全にあるので、買い足す必要は無し。


 電気と水道も昨日、開通済み。


 ガスは今日の夕方から。


 夜にはお風呂へ入れる。





 菜々緒は夜弥美に言う。


「おかえり、ヤミ君」



 慣れない夜弥美は「う、うん?」と疑問系で返す。


 菜々緒は、


「ああ、今日から君もここで済むんだぞ?」



 ……。


(ですよねー)




 単にマイホームへ客人を招待!


 と言う訳ではないのを、『家』の話しをし始める2人の会話から、予め構えていた夜弥美。



(まあ、今、ギクシャクしてなかったら、願ったり叶ったりではあるんだが……。真飛流との話し合い次第なんだよなぁ)



 菜々緒に案内されながら、リビングへ行く。


 そこには綺麗且つ、重層な机。


 見るからに高級感溢れる。



 しかし、菜々緒から指示されたのは、


「そこの畳張りのちゃぶ台の前にでもすわってくれ」


 と、真飛流の部屋にあったそれが鎮座していた。



 菜々緒は冷蔵庫からペットボトルのお茶を持って来る。


 真飛流はコップを三つ、スナック菓子を持って来る。



 あまり新鮮な感覚はしないが、どことなく安心感がある。



 菜々緒は夜弥美の対面に座ってこう言う。


「さて。---いざとなったら大切な事を言わない真飛流の為に妹分は一肌脱ぎますか」


 と言いながら、上着を脱ぐ菜々緒。


「---あ、全部が良かったか?」


 真飛流を見ながら言う。


「いえ、今は要らないです」


「じゃああとでする」


「……」



 真飛流は菜々緒を無視する。


 真飛流はわざわざ夜弥美の隣に座る。


 それを夜弥美が見る。


「……狭くない?」


「ん」


「そ」





 菜々緒はそれをジト目で見ながら真飛流に言う。


「貸しだぞ?」


「判ってる」


 真飛流は面倒臭そうに言う。



 菜々緒は念押しをする。


「約束、守れよ」


「はいはい。好きにしなさい。煮るなり焼くなり既成事実なり、アンタの自由」


「既成事実はちょっと……」


 菜々緒は真顔で返した。



 真飛流も真顔になる。


「……ギャグで言ってる?」



 菜々緒は答える。


「こっちのセリフだ」



 真飛流は夜弥美を見る。


「明日以降、菜々緒と1日デートしてあげて。何してもされても、わたしは何も言わないから」


「……真飛流にしては思い切った約束だね」



 真飛流は俯く。


「それ以上は言わないで」


「うん……」



 菜々緒はニヤっと笑う。


「そのまま、自分の口で言えば良いのに。---あ、ヤミ君のを咥えるのはナシだぞ」



 夜弥美は、


「今日はやたら下ネタがキレキレですね」


 と言うと、菜々緒は『グッド』のポーズをする。



 真飛流は、


「良い。菜々緒が言って」


 そう、言って腹を括るのであった。

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