第15話 渚の過去 (渚視点)

―私と翔が未来の家に遊びに…いや、勉強会をしに行く前日の事。

いつもは三人で帰り道を歩む私たちだけど、今日は違う。

今日は私にとって大事な事情がある日。

毎月19日は、私のお兄ちゃんの命日だ。

私のお兄ちゃんはいわゆる不治の病、と言うやつにかかっていた。

未だ原因不明の病気で、体の成長に対して臓器の身長…主に心臓の身長が追いつかず、成長とともに容態が悪くなっていく…

私のお兄ちゃんはちょうど今頃、私たちぐらいの歳の時にこの病気を発症した。

初期症状は、頭痛や立ちくらみが増えるなどの軽いものだが、次第に激しい運動ができなくなり、容態が悪化すると満足に動くことはほぼできなくなる…

そんな病気だ。

私はお兄ちゃんが無くなってから、毎月、月命日には欠かさずお供えに来ている。

だから、今日、5月19日は二人と帰れなかった、というわけだ。

…私はまだ、お兄ちゃんの死を受け入れられていないのだろうか。

お兄ちゃんがいなくなってから、私は友達を作るのを辞めた。

…やめたと言うより、体が本能的に拒んでいるような気がする。

どうしても、友人と関わる際、大切な人が居なくなることの辛さを思い出してしまう。

…まだお兄ちゃんが生きていた時のことを思い出す。

「…俺が死んでも、そのことを足枷にはするなよ?むしろ、こんなに素晴らしいお兄ちゃんがいたんだ、って、みんなに自慢してやれ」

お兄ちゃんは…何度もこういっていた。

優しい人だった。自分がいちばん辛いはずなのに、私のことをいつでも気にかけてくれて。最期の最期まで、私のことを励ましてくれた。

…きっと、私は今のままじゃ翔に思いを伝えることなんてできない。

…だからこそ、次は私が頑張る番なのかもしれない。私は、自分の心に嘘をつきたくない。

…一度自覚してしまった、この恋心には。


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