26話 勇者の現在(原罪)

さてみなさん~!

ヒョーゴ君視点で今日も話が進むって思ったのかな?

結果から言って、今回にそのようなシーンは無いんだよねえ~。

そーいえば自己紹介忘れてたね。

おいらは『賢者』だよ。


最近、おいらの護衛が面白い情報が持ってきたんだ!

情報源はどこかって?

超有能土ゴーレムをとっ捕まえて、吐かせたわけだよ?


そしたらもう一人の『勇者』の情報が聞けてね。

ヒョーゴ君の方じゃないよ?

たしか…名前はブラン・レオン。

ソイシー街の端っこに住んでる、親なしの一人っ子みたいだね。

説明は終わり!

……じゃあ、そろそろ。


〈この情報をもとに『賢者』の権能を発動〉


~~~~~~~ブラン・レオンSIDE(称号『賢者』を発動)~~~~~~~~


一体なんだよ!

あのヒョーゴっていう奴は!

僕が絶対に本物の勇者に決まってるぞ!


レオンは怒りが隠し切れずに自分の机を蹴飛ばした。

しかし、彼の家も一人しかおらずその光景を見た者はいない。


「更にイラつくのは、この聖書だよ!!」


レオンはそう吐き捨てながら、聖書を睨んだ。

少し光沢がある、本。

そして、表紙はラノベチックだった。

つまり、ヒョーゴが予想した通り、ブラン・レオンはシナリオを盗んでいた。


「盗んだ?いや、僕は取り返してきたんだ!!」


自分で勝手に妄想を広がらせる。

そう、彼はひどいほどの自分勝手であった。

元々は主人公であるはずの存在。

果たしてどこで誰が道を間違えたのか……?


「なのに……この聖書の文字は一体なんだよ!!」


更に聖書に対して怒鳴り散らす。

実はこのライトノベル、女神様がヒョーゴだけに閲覧できるように日本語で書いてあったのだ。

それを知らないレオンはそそくさと持ち帰っていった。

彼は別の教会で『祝福』を受けた後、

別の『勇者』が出現していることを知り、帝国の馬車を借りて、例のヒョーゴがいる教会にたどり着いた。


更に、

良いところで『賢者』が来たこともあって、人々が騒動することも無く家に帰宅。

しかし最終的に、この聖書に書かれている内容に絶句しているのだ。


もちろん、この世界の住民であるレオンは日本語を知る由もない。


「取り返した意味が無いよ!はあ、時間を無駄にした……」


努力が水の泡であることを嘆いているレオン。

努力の方向性が間違っていることに気付いていないのだろうか?

その時、


リンリン、リンリン、


と、入口辺りで音がした。

これは、現代で言うインターホンらしい。

それに対してレオンは半ギレした。

最高に気分が悪いらしい。


「はあ?!誰だよ?こんな時間に!」


愚痴をこぼしながら、ダイニングを出て、扉を開ける。

そして……。

レオンは尋ね人と顔を合わせた。


「…っ!!!!」


その拍子、レオンの目の色が変わる。

そう、訪ね人の正体。

それは……


「お邪魔いたす、拙者は『最官帝国騎士さいかんていこくきし』を担っている者なり」


勇者二人騒動に最初に介入した一人、

謎の仮面とマントをかぶった、白い騎士だった。


「『帝国』?」


「あぁ、拙者は帝国から派遣された。少し部屋を覗かせて貰う」


そういうなり謎の仮面を被ったものは、レオンの家の中にずかずか入り込んで来た。

急な展開に唖然するレオン。

しかし、彼は何とか仮面の者を引き留めて理由を聞いた。

レオンの勇気は大したものだ。


「なんで僕の家の中に入るのかを聞きたい!!」


すると仮面の者は答える。

仮面の下からとても呆れた声が出たような気がした。


「お前はあの教会にあった聖書のことを存じ上げないと?」


とても挑発するような声、その裏には何か黒いものを含んでいた。

そう、完璧にレオンは怪しまれている。

この白い騎士はは彼がシナリオを盗んだのは見え見えだった。

しかし、レオンの方はというと、は未だにバレていないと慢心していたのだ。


「ちょっと部屋をかたずけていないから待っててほしい」


「いや、別にそんなことはかまわない」


「待てって言われたら待てよ!!」


レオンは暴論をぶちかますと、そそくさとひとりで自分の部屋に入って行った。

そして彼自身の部屋を眺める。

当然だが、テーブルの上には盗んだ聖書があった。

そして何を思ったか知らないが、彼は聖書を持ち上げる。

とにかく証拠隠滅させたかった。

帝国の人が聖書の聞き込みを行っている時点で、レオン自身、立場が危ないということに気付いていたのだ。


「何処に隠せばいいんだよ!!」


そして彼はおたおたしながら家中を歩きまわる。

しかし、最終的に彼は証拠隠滅をさせるための場所を見つけた。

……レオンの目の前には暖炉がある。

そして彼は火が燃え盛っている光景を見て笑みを浮かべた。


「別に僕が読めないものなんてもう必要ないよね?」


そう言いながら、レオンはニヒルな笑みを浮かべる。

そして、なんと彼は聖書を暖炉の中に放り投げた。

放り投げられた、聖書はその火によって、自身の身を焦がす。


自分のやっている罪も知らない、哀れな男だった。

もちろんその後、レオンは仮面のものを快く部屋に招き入れた。


「ほら見ろ、何を勘違いしてるかわからないが、聖書なんて物はないだろ?」


レオンは言いながら、平常心を持っていると偽りながら答えた。

その様子を仮面のものはじっと見つめる。

部屋中をくまなく探すが、聖書は出てこない。

その様子を満足そうに、レオンは眺めていた。

そして仮面の者はこう言った。


「確かに、聖書は見当たらない。これは失礼したな」


白い騎士は頭を下げて、謝る姿勢をした。

その反応にレオンは一安心する。

まあ、馬鹿な彼は、仮面の視線が暖炉に行っていることに気付かないが、




~~~~~~~~~~~~




『あれー?こんなところに土魔法のゴーレム君がいるじゃーん!!』


「『賢者』……。来てたのか、」


『うんうん、仮面マントさん。でも、まあ、おいらはもうすぐさ帝国に帰らなくちゃいけないけど、』


「あぁ、それは理解している。

……そなたは帝国に尽くす『称号』を得て幸せか?」


『幸せというか……義務感というか……何も感じないね』


「いらないことを聞いたな。」


そして沈黙の後。


「聖書は発見できなかった。……心当たりはあるがな」


『えぇ?!レオン君持ってなかったの?もしくは隠してる?!面倒くさいなあ……』


「『賢者』は面倒くさいで済むのか……。

これはどうしたものか…。帝国が許すはずも無き……」


『聖書を見つけるさ!!この土ゴーレムを使うんだよ~』


賢者はニコニコな顔で、ゴーレムの首をひっつかむ。


『コイツ、相当強かったけど、何とか抑え込めたよ!!へへへ』


戸惑いながらも、仮面のものは答える。


「……そいつの目線は外から感じていたなり。

まさか、その土ゴーレムはレオンの部屋をずっと監視していたのか?」


「そうそう、この土ゴーレムは優秀でね。

誰が作ったか分からないけど、これほど精密な構造は魔王ぐらいしか作れないかな~?

それが『勇者』の部屋を観察してたわけだよ~」


『賢者』は随分、土ゴーレムを大きく評価した。

それほどまでに世界の土ゴーレムの常識を裏返すほどの造りで会った。


「だから、逆手に取る。この土ゴーレムちゃんから記憶を分析しちゃうね!

おいらには知識があって、魔王に情報が入らない。優越!!!!!」


「……勝手にしてくれ……」


こうして、外での『賢者』と仮面の者の会話は終わる。

その後、聖書はこの世界から消えていることを『賢者』は知ることになる。





作者より

次回、サリーさんとヒョーゴ君の話し合い。

諸々、指摘お願いします。

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