第12話 悪役、街で暴れる。4

俺はまだ、異世界風の交番にいた。

てか、このおじさんここを統治してる国の役人とかいってたな。

国家公務員的な感じね。

さぞかし収入が安定してるだろうに!


「ありがとな。じゃあ」


交番からでま〜す。


ふう、やっと死闘(笑)が終った。

見かけによらず弱かったな。

あんなに大きい音が響いたパンチでも威力が五歳児レベルは驚いた。


弱かったのは不幸中の幸いだ。

今後は喧嘩を慎もう。

俺が意図的に始めたわけじゃないけど。不可抗力、不可抗力。


今日分かったことは、町には俺の敵しかいないということ。

町歩いてて刃物を突出される悪役。

そんな、悪役は嫌だ。


さてさて散策も終わりにして買い物に行きますかぁ…


「おい待て、ヒョーゴ。この子はどうするつもりだい?」


背後らか例のおじさんに声をかけられる。

もちろん、役人のおじさんである。


「知らん。俺は帰る」


この子?

知らないね。

フードを被ってる子供なんて知らないね。

喧嘩の原因となったこの子は俺の記憶にない!


「ヒョーゴ、聞いてくれ。俺も暇ではない。もしこの子が迷子であるならば連れて行ってくれないか?

まあ、本音を言ってしまえば定時でもう帰りたい」


「…」


迷子という単語に隣りに座っているフード少年が頷く。

どうやら迷子であることに間違いはないようだ。


ってかなんて言ったんだ?このおじさん。

定時だと?

ずっる。俺ずっと起きてから寝るまで家事してるのだが?


「…」


おじさんの帰りたい意志は十分に伝わった。

別に俺としても問題ないけど悪役として駄目だ…

拉致してると思われてしまう。

てか、悪が迷子の子を助けたりするか?

…しないな。


「喧嘩の原因となった奴を無事に帰すと思うのか?」


少し嫌味の混じった言葉を残してここを出る。

もちろん、戸惑いながらもフード少年はついてきてくれたが。


「…今までのお前だったらその可能性があった。しかし、今のお前は違うだろ?安全に届けてくれることを信じている。」


…真面目に返されたじゃねーかよバカ野郎。



こんな事もあって今はフード少年と一緒に歩いている。


目的地はここの街にあり、

すべての大通りが辿り着く場所、クロス・トニー、って言う地名が目的地。

盛んに取引が行われている場所だ。

フード少年の口から教えてもらったのだ。


ここの街自体の名前がロイロ・クラシーっていう名前って言われた気もする。



フード少年…

少年ってのも推定だけどね。

フードが大きすぎて顔が見れない。


でも、チンピラに喧嘩売る勇気、悪く言えばバカっぽさが男子な気がする。


「…名前教えろ」


フード少年は呼びづらい。

本名教えてくれ。


「教えても意味ない。どうせ別れちゃうから」


うん。

喧嘩腰な返答をどうもありがとう。

殴ってもいいですか?


「…ちっ」

顔を背けて前を向いた。


本当にウザいわあ。

迷子を助けているのはどこの悪役だと思ってるのか…。

結構、大人気取ってる気がするなあ 

このフード少年。


「お前なぁ…」


説教したい。

この子の言動は誤解を生む可能性が大きい。

将来的にまずいのだ。

…まあ、チンピラの煽りに正面から否定してくれたことは嬉しかったけどよぉ。


そんな複雑な思いをいだきつつ、フード少年の方を向く。


「…」


当の本人は景色に夢中でした。

異世界の町ってかっこいいよね!悪役のお兄ちゃんでもその気持わかるよ…。

…いや、子供かよ!


子供だったわ。

まあ、俺も人のことを言える立場ではないが…。

ロマンを感じているのは良いんだよ。

でも、景色に夢中すぎで周囲の安全確認できていないなあ。


商店や街の人々に興味津々なご様子だ。

そのせいで足取りがふらついている。

自動車に撥ねられたらどうするん?


…自動車はないけど危険だ。

しょうがないなあ


「おい、しっかり前向いて歩け、」


そう言いながら俺は手をつかむ。

お手手をつなぎましょーねー。

外の世界は危ないですよーってな。


あるえ?思ったよりも指細いね。

栄養不足…?

いや、そこまでは細くない。体温もしっかりあるし超健康体。


フード少年は俺の行動に少し体を震わせると普通に前を向いて歩くようになった。

…やっぱ怖がっているのかな?


「…」


おっと、俺は車道側を歩こうか。

自動車はやはり通っていないけど、人通りの多い方を歩かせるのは危険だからね。

なんか…保護者になった気分です。


道曲がった。

よし、今度は反対側が車道側になったから移動してっと…、


「…ヒューゴさん? なんで外側を歩くの?」


突然、フード少年に聞かれた。

透き通った声は簡単に聞き取れた。


俺はヒョーゴさんよ?

ヒューゴちゃうん。


「俺はヒョーゴさんだ。理由?それはな…」


マナーですって俺は言おうとした。

そんな俺の背後に何かが迫る気配がする。

突如、肩に激痛が走った。


そしてぶつかったような大きな音がする。


ドーン!


まるで跳ね飛ばされているような感覚だ!

チンピラのパンチよりも比べ物にならない程痛い。

死にはしないけど…歩きにくい、

てか、歩けない…?

…なんだこれ?


「ヒューゴ!」


俺は地面に膝をついた。

…だから、俺はヒョーゴだっつってんの。

いいから、黙ってろ。心配すんなって。


そんな言葉を声に出そうとしても声にならない。

どうやら、打ち所が悪かったらしい。

俺はぶつかった原因のものを恨めしく睨むことしかできなかった。


「まったく、貧相な者が街を歩いているとイライラとするでおじゃるネ。しかも二人モ!」


痛い部分を必死に抑ええていた横で聞こえる声。

変な言葉遣い。

誰だオマエ?


「まろのことも存じないでおじゃるか?それは困ったでおじゃるね」


俺の向く先には一台の馬車とおっさんがいた。

キモい声を放っているおっさんは妙に高価な物を身につけた服装をしていた。


「まろはエルフ王国の係属の土地を有する貴族でおじゃる!」


あぁ、今日は変な奴にしか絡まれねえな。

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