第10話 悪役、街で暴れる 2(今度こそ)

どうも、町への買い出しを頼まれた悪役です。

楽しみっす。

あれでしょ?防具、武器とか魔法の書とか売ってる場所でしょ?

居酒屋があって冒険者たちがワイワイやってる所でしょ?

ファンタジーな世界の町ってどんなんだろ~。


「町への買い出しだと?はあ、構わんが…」


町に降りることに対して面倒臭い自分を演じながらサリーさんから離れる。

俺はめっちゃ期待してた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


リュック背負って、売るための穀物類も持って、山を下りて、

ということで、町に着いた。

ざっと家を出てから6時間といった所か…。

なかなか普段では来れないな。


でも、苦労してでも町を寄る価値はある。

この光景を俺は忘れないだろう。

…さっすが異世界。

コンクリートで固められている前世の世界と違って地面が完全に石。


家も、レンガで作られている。

本当に俺って異世界転生したんだなあ。


「…」←感無量


家に帰る時間まで結構余っているから、

取り敢えず、買い出しの前に町でも散策しますか。

散策、迷いたくないから裏路地とかは使わないようにするかあ。

そして、目印の建物を見つけたりとか…。

…?


なんか周囲から視線を感じる?

えっと…あぁ。

んー?

俺って有名人な感じ?


耳を澄ませてみる。


「またアイツが降りに来たのかよ」「あー気分最悪」「マジでアイツのすまし顔気持ち悪いよな」


うん。

俺は有名人らしい。

悪い意味で。


知ってたけどさ。

俺が乗り移る前までも悪役だったからなあ。

それはヘイトを向けられてしまうわ。


さっきまで俺は開拓したばっかりの町に興味津々だったが少し萎えた。

そして俺は人目を避けるように人通りが少ない道を歩き始めた。


歓迎されていないと乗り気にならない。

やはり、散策は控えるべきか…。


そう考え始めた時だった。


「あ!弱虫のヒョーゴちゃんじゃん!」

「ぶは!あいつ金取られてたのにまた町に降りてきやがった!」

「今度はオンボロリュック背負ってきたのかよw」


近くで俺を馬鹿にする声が聞こえた。

しかもヒソヒソした声では無く俺を直接煽るような言い方だった。


声の方を向くとガラの悪そうなお兄さん。

チンピラ三人組が俺を馬鹿にしたように見つめていた。


今度?

まじか、俺が町訪れるたびに絡まれてたのか?

この、怖い人たちに。


「マンマを亡くしてから思春期入っちゃったかなぁ?」


「笑い止まんねえ!!」


続け様に罵倒される。

なんだコイツら?

まあ、無視して穏便に済ませよ。

喧嘩するのは周囲の目があるし面倒臭い。

てか、怖いっす。


さあ、やること済ませて帰りますかぁ。

なんか失望した。

もう、この町を俺が仕事以外に来ることはないだろう。

悪役ってこういうものなのかぁ。

精神的に厳しい。


俺はキビスを返す。

そして、人通りの方へ歩き出し始めた。

…その時、


「…その言い方。良くない。」


…?誰?


ヒョーゴは聞き慣れない声に振り返った。

チンピラのドスの効いた声でなく、透き通ったような声が聞こえたからだ。

さっきまで居なかった声。


チンピラに向けられた声だった。


声の方をふり返ると、そこにはフードを深く被った者が居た。

背が小さく、顔はよく見えない。


「…誰だよ?」


別のチンピラが謎の人物に声を掛ける。

その声には怒りがこもっていた。


「アナタ達みたいなクズに名乗る必要ない」


「…」

「っ!」

「お前…」


煽るような発言にチンピラたちの顔が真っ赤になる。

それは、自分よりも小さい奴に見下されたことに対しての怒りだった。


「お前!ガキのくせに舐めた口聞いてんじゃねえぞ!」


チンピラはフードの首元を引っ掴む。

取り返しのつかない事に発展したのは明確だ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


どうも、ヒョーゴです。

チンピラに絡まれる俺。

チンピラを煽るヤベー奴。

絶賛、爆発寸前です。

何してるのかなぁ?(怒)


俺がせっかく穏便に済ませようとしてるのによお!

いや、否定してもらったことは嬉しいけどさ。

ちょっとタイミング違うと思うんだ。


推定、フード少年。

勇気の塊や。勇者じゃね?あいつ。


とにかく、こんな状況になったら喧嘩するしかないじゃん。

見捨てたらフード少年死にそうだし。

そしたら、罪なすりつけられて死刑にされそう。

俺がな。


人気ないし、味方はいないから証拠なくてもまずは牢屋行き確定だろう。

ただでさえ時間ないのにぃ!


「ちっちゃい子にお前ら何してんだよ?」


恐る恐る話かけた。

人生初、チンピラに話しかける。

あ…前世では一回もしてないわ。

まじ、緊張する。


「は?なんだヒョーゴの野郎。俺に楯突いてんのか?」


違うっす。

平和解決を望む!


「まあ、何方にせよガキは殺す。お前は家に帰ってメイドさんにギャン泣きしながら抱き着いてろよ」


「ヒーロー気取りとかキッショw」


あー。その子、殺す気かぁ。

だったら俺も一肌脱ぎますかぁ。

怖いけど。


「黙って聞いてりゃ、俺の同居人も汚すつもりか?」


許さーん。

サリーさん、いつも頑張ってるんよ!

それを蔑ろにするのは許さん!


「だから、ヒーロー気取り、止めろよ。吐き気する」


は?ヒーロー気取りじゃないが?

戦いたくないって言ってんの。

痛いから。


「違えよ…」


でも、お前らは俺のルールに違反しました。


「は?」「なんだって言うんだよ?」


【悪役信条】

一条…


「お前らが俺を舐めてることが問題だろ?」


頑張るぜ。

昨日書いたルールが早速、使われるとは…。


【悪役信条】

一条…舐められた奴に対しては容赦なく殴り飛ばす。

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