第5話 悪役っぽさ鍛えようか?

おはようございます。

異世界生活二日目っす。

まだ痛くて動きにくいわ。


「今日、できることねえなあ」


宙に向かって呟く。

過度に動けない、

どうしようもないんで日記読むわ。


横になりながらページをめくる。

昨日、枕の下に日記を入れておいたのだ。

体痛くてテーブルまで動けなさそうだったから丁度良かった。

…はよ、シナリオほしいわあ。


そう思いながら読んでいると、あるところで自分の目が止まった。


9月11日

嫌嫌ながらも、あの魔物と話をした。

内容は、俺の母の死による役割分担の変更、

正直、お前が全部やればいいと思った。


おう、、やっぱクズだな。

きっとサリーさんも悲しんでいる最中にいるだろうに、

それでも自分の役目を果たすため、生きるために、俺の母の死を受け入れようとしている。


結構、取り返しのつかないほど迷惑かけてるわ。

でも、…いや、なんでもない。


とりあえず、ここのページ熟読する。

なぜかというと

ここに俺がするべき家事とか、家計の支えとなってるものとか細かく書いてある。

これで生活しているうえで困ることがなーい。


さて、汚い字を解読しますかぁ。



…。別に不平等な役分けでは無いな。

でも、サリーさん相当心すり減ってた印象あったけどなあ。


読んでわかったこと、

この家は経済的に厳しい状況にある。

生活の役目を担う配分は平等。

家計はなんと…作物を売ることで成り立っていた。

それも、援助など無に等しく、凶作の場合は最低限の生活すら切り捨てることが必要になる。


…いや、いつの時代だよ?

俺の飛ばされた世界はこんなところなのか…。

まあ、部屋の作りとかも中世のヨーロッパを真似たところも多いし、 人権なんて無いのだろう。


それは確かに経済的に厳しい状況だわ。


生々しくなってきたな。

…あれ?

てか、俺が動けない時は全部サリーさんが担うのか?

仕事を。

それはまずい。

流石に体力バケモノみたいなイメージのあるオーガ族でも過労死しそう。


【俺の仕事一覧】


日記中に書かれた纏められているページ。


ここに自分の家事の全てが乗っている。

寝ててもできる家事なんてあるんですか?

知らね。

でも、探す他ない。

…うん。


結果から言って無かった。

結果と言っても、寝ていて出来る家事なんてそもそも無い。

もっと範囲を広げて、負担の少なそうな家事。

っとすると、一つだけできそうな物があった。


だが、少し問題があってね…


外に出なくてはいけないんよ。



こっそりと外出の支度をする。

まあ、何をしようとたぶんサリーさんは無視を決め込んでくるから心配ないけどね、

でも、あんまし不安にさせるのも後味悪いから秘密裏に外出いたす。


オンボロリュックを背負う。

ベッドの下で昨日見つけたやつ。


さあ、支度ができた!家を出よう!

散歩も兼ねて仕事だ。

周囲はどんな景色なんだろ…、


「…意気揚々とリュック背負って何をしようとしてるのですか?」


なんか声が聞こえる。

気のせいだね。うん

まさかサリーさんが話しかけたわけない。

…。

っ!早速バレるとは…。

サリーさんが俺の部屋に入ってきてしまった。


「また、倒れていないか確認しに来たので…」


いや、優しいかよ。

更に美人だし文句なしの根っからの美女だな。

てか、どーしよ。

明らかに外出する装備しちゃってるし。

家を出ようとしてたことはバレてる。


ここで、家事がしたくて外出します。

なんて言ったら悪役のレッテルが剥がされてしまう!


言及されないために…

…よし。話題を変えよう。


「サリー、何を持っているんだ?」


彼女が手に何かを持っていることが分かるが

壁越しに見えていなかったから聞いた。


「…これは、その」


恐る恐ると手を差し出してきた。

そこには花瓶が握られていた。

サリーさんは戸惑いながらも説明を始めた。


「これは、あなたの母がくれた植物なんです。直接、手でもらった物は枯らしてしまいましたが、庭に新しく実ってきたので花瓶に入れて育てています。」


説明しながらもサリーさんは少し涙声になっていた。

…。


「ごめんなさい。ヒョーゴさんはまだ立ち直っていませんでしたね。」


…。

あのさ、


「…ヒョーゴさん?」


無言の俺を不審に思いながら彼女は声をかけてきた。

いやさ、感動的になってるところ申し訳ないが、それって…。

この植物って…


スギの枝から先端部分じゃね?

スギ?

え…無理よ?

前世では超重度の花粉症だったからね?

スギの生えた山とかで呼吸しただけで救急車必要だったんよ?


「大丈夫ですか…?」


あ、待て。近づけるんじゃない!

久しぶりにとんでも恐怖心を覚えました。


それからの記憶が無い。

別にぶっ倒れた訳ではなくて、しっかり起きてた。

でも恐怖心のせいで、ぼんやりとしか思い出せない。


スギって本当に大事なの?

とか、俺に近づけるなよ?とか

しまいには、捨てとけ、などなど

なんか言った気がする。


サリーさんはなんか打ちのめされた顔してた気もするのよ…。

悪口言ってしまったのか?

そういや言ったわ。

捨ててくれ、なんて言ってしまったね。

百パーセント嫌われるよな〜。


でも、待てよ。

そうなると、

俺って素でも悪役演じれるようになった?

これは嬉しい。(慢心)


…。

でも尊敬の眼差しで見られてた気もするが…

尊敬…?んなわけない。

多分これは気のせいだろう。


だって俺、悪役だし。



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