第6話 悪役っぽさ鍛えようか?2

転生してから一週間ほど経った。

体調もすこぶる元気になって自由に歩き回れるほどまで回復した。

ここまで楽しくなかった休養は初めてだわ。

日記読んで、

本を読もうとしたらよく分かんない言語で大苦戦して、

机漁ってたら大きな蜘蛛が出てきたりとか…


実は休養中に一度家を出ることを試みたんだよね。

そしたらどうなったと思う?

サリーさんに腕をガチっとつかまれて部屋に戻されました。

いや、力強すぎだろ!!

てか、放って置いてくれなかったんだが?!


しかも冷たい笑顔だったし、こえーよ

オーガ族こえー。


「アップ・グラウンド」


因みに意味不明な言語で書かれている本を読んで一つだけ新しい魔法を覚えた。

言語が少しだけ英語と類似してたから学べた。

解読って本当に精神がすり減る作業だった。


覚えた魔法とは、

【土魔法】

である。

一番人気がない魔法らしい、

家内で覚えられる魔法はこれしかなかったんだよ。

しょうがないじゃん。家の中で炎魔法なんて展開してみろ、誰かさんが激怒するぞ?


この魔法の効力、それは

モコッ

お、魔法成功だ。

地面を数センチほど盛り上げる魔法。

はっきり言って使えない。

俺って女神さまに言われた通りに本当にチートスキルもらってないんだなあ。

この先が思いやられる。


あー。また気分が暗くなる。

せっかく休養を終えたばかりなのに気分が悪いのは許せないな。

気にしちゃいけない。

外の空気でも吸って頭をクリアにさせとこ。


「さあ、今度こそ正式な外出だな」


独り言を漏らしながら家のドアに手を掛ける。

おんぼろリュックを勿論、背負ってゆく。

今日の仕事に必要なものだからね。


少し錆びてしまっているドアノブに手を掛ける…。

そしてドアを思いっきり開けた。


「…まじか」


目の前の景色に面を食らった。

予想外だったのだ。

俺は勝手に村というイメージを作り上げていた

しかし今、目の前に広がっている光景は緑が生い茂っており、

自然しか見当たらない。


うーん。

追放でもされて辺境暮らしでも始めたの?

っていうぐらい何もない。

ここで暮らしているのか…不便すぎて笑える。

本当に俺の家庭環境に謎が多いな。


俺は久しぶりに土を踏んで背伸びをした。

そして少し歩いてみる,


…周囲の状況が何となくわかった。

山だな。

ここら一帯は山の頂上みたいだ。

いや、どんな場所に住んでいるんだよ?

日記によれば日用品は町で買うらしい。


遠いなあ。

町ってあの米粒みたいに見えるところだろ?

一時間はかかりそう。

帰りは上るから倍以上の時間を要するな。


理解できたところで仕事に移ろうか、(切り替えの早さ)

軽めの仕事から始める。

まずは飼育している動物にエサを与える事、

前々からやろうとしてた事だ。

理由は単純。

一番負担が少なさそうだと思った。


俺は転生した小屋とはまた別の小屋に向かって歩き出す。

ここには主に、仕事に必要な道具が備わっているらしい。

小屋に入るとクワが転がっていた。

なんか乱雑に扱われてるなこれ?


先っぽが曲がっているし、

俺の仕事の中に畑作業とか入っていた気がするし…

まあいいや、後々考えよう。


それよりも今はエサを探しているのである。

見つかんねえな…

ここの小屋には道具とゴロついた石しかない。

町まで買いに行く必要あるとか言わないでくれよ?

…でも家出てく前にサリーさんにエサあるか聞いたんだよね。

そしたらエサは常備してありますって言われた気がするんだよなあ。


でも目の前にあるのは道具と石だけなんだよなあ。


…まさか石なわけないよね?

見た目で語っているけど完全な石だし。

触ってみたらもちろん固い、何の変哲もない石

…裏返してみる。

エサ用って書いてあった。


無言でつかんでリュックサックに放り込む。

もう突っ込まないわ。早よ餌あげて帰ろ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


Q悪役において必要なスキルとは何か?

A、他人から見て悪印象を抱いてもらう事。


つまり、他人がいる時だけ悪人気取っておけばいいのだ。

別に倒すつもりのあるモンスターに悪役を気取ってフラグを立てる必要は無い。

悪役キャラの一番の死因、ラノベではフラグだった。


慢心して死ぬ。

「こんな雑魚モンスター楽勝だぜ!」ってな。

これだけは避けたいため出来るだけフラグを自分から建てることは少なくしたい。

今の所、悪役を演じてるがフラグは一本も建ててない(慢心マン)


話を戻す。

悪印象を抱いてもらうための方法とは何か?

これは俺が独学する。


【悪役信条】、これは新しく日記帳を作って書き始めた。

まだ表紙しか書いていないがこれから随時追加してゆくつもりだ。


小屋についた。

やはり地面に引きずった跡がある。

これって俺の足だよなあ。

倒れた後、あの人ベッドまで運んでくれたのか…。

優しす。


「久しぶりだな、」


「ヒヒッ、ヒヒッ」


豚と牛を合成したような動物に一週間ぶりに対面する。

…こいつブタ牛って呼ぼう。

容貌は牛にそっくりだが色合いがブタっぽい。

あと、鼻がブタっぽい。

魔物にしか見えない。


そういや、転生直後に聞こえた羊とかの鳴き声はどっから聞こえてきたんだ?

…出荷?

そんな言葉が頭をよぎる。


出荷先って町だよね?

え?でもあの羊だよ?めっちゃ重たい気がするのだが…

考えない方が良い気がしてきた。


よし、話題を戻そう。

ではエサを広げて…。

リュックから石を転がす。

縄で繋がれているので自由には見えない。

だが、結構縄に余裕があるため少し広い範囲まで自由に動くことができる。

だからエサを近くまできて適当に投げとけば食べてくれるのだ。


ブタ牛、ご飯だぞー。

まあ、石を食べるわけないもんな。

パクッ


するとブタ牛は口を大きく開けて石を口の中に放り込んだ。

バリバリとものすごい音がする。

異世界こえー。


ブタ牛が石を食っている、

その間に俺は小屋を眺めていた。

掃除とか、畑の方の様子確認とかやること多いな…。

魔法極めている時間とか圧迫されちゃいそうな気がするんだよなあ。


そんなことを考えていると小屋の隅に置かれている物に焦点が行った。

そこには一つの鉄製のバケツが置かれていた。

少し汚れているが最近まで使った痕がある、


「そういや、このブタ牛って乳しぼり出来るんだっけ?」


【俺の仕事一覧】に書いてあったな。

毎朝の欠かすことなき仕事らしい。

欠かすことなき…

まあ、これまで闇落ちしていた俺がちゃんと仕事をこなせてたかは知らんけど。

ずっと部屋に籠ってた時期があるとか書いてあったし、

これでサリーさん任せは頭が上がんない。

今の状況でも全く上がらないのだが…。


バケツを引っ手繰ると、ブタ牛の方へ向かう。

今の仕事とまったく関係の無い事を考えながら千鳥足で歩いていた。


俺が死んだ後の前世ってどうなったんだろ?

思うように高校生ライフエンジョイできなかったしな…。

ここでも当分はエンジョイできないし。

あーはやく勇者パーティーから追放されてえわ。


そんな無駄なことばかりに頭を使っていた矢先、

ブタ牛に近づいて乳しぼりを始めようとした俺。

直後、全身を吹っ飛ばされた。


「グハァ!!」


え?え?

理解が追い付かない。

しかし吹っ飛ばされた痛みは鈍く残る。

攻撃された部位がジンジンとする。

…。…。

腹を攻撃されたからめっちゃ息しずらい。


状況整理。

バケツを取ってブタ牛に向かいました。

いま、食べることに夢中なブタ牛の乳に触ろうとしたら死にかけたんですか?

乳絞りで死にかける馬鹿がいるか?

…。

ここにいるぜ。


まさか危険がこんなに身近にあるとは…。


今更気づいたのだが、どうやら俺はブタ牛の前足で蹴られていたみたいだ。

前方を確認すると、ブタ牛は濁った眼でこちらを睨んでくる。

こんなにも乳絞りが難しかったとは…。


投げ出すか?

答えは、投げ出す訳にいかない。

サリーさんに、乳絞りができませんでしたー。なんてこっ恥ずかしくて言えたもんじゃない。

異世界来て最初のバトル相手がこいつかよ。

やってやろーじゃないか!

土魔法使い(笑)舐めるなよ?



作者より

・土魔法使いw(^▽^)/

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