第4話 サリー Side

私の名前はサリー・ブラウンです。

オーガという種族であり、人との仲はあまり良いとは言えません。

どちらかと言えば魔物という認識の強い種族です。

そのため私の住む村は人族から、エルフ族から、ドワーフ族まで様々な種族に厚い壁を置かれながら生活していました。

オーガは生まれつき高い戦闘能力を所持します。

その為他の種族との交流がなくとも自分の村を守り続けられることができました。


角が二本生えていて、ほとんどの人が銀髪か金髪。

私は名前の通りブラウンの瞳を持ち、

この種族では呼び名のほかに目の色を名前に付け加える習慣があります。


そんなオーガ族の私は事の成り行きで今はヒョーゴさんの家に同居させていただいています。

始めはヒョーゴさんの母からいろいろな面で支えてもらえました。

なので私はそれなりに満喫した日々を過ごしていました。

初めて会った時から変わらず、ずっとヒョーゴさんは目も合わせてくれませんが、


しかし、ヒョーゴさんの母は一年足らずで亡くなってしまいました。

残されたのは家と、私を嫌ってくるヒョーゴさんだけ。


もちろんヒョーゴさんは母の死去にショックを受けておりました。

三日間なにも飲まず食わずで部屋に籠られるほどに。

そんなことがあってからかヒョーゴさんはさらに私へのあたりが強くなりました。

それが私の心を酷く擦りへらしました。

私だって…あの人の死は悲しかったのに。


始めは対等な関係でしたが

段々と家事の負担する割合が私の方に傾いてきました。

力仕事はヒョーゴさんに任せているものの、あまり多く睡眠時間を取れない日々が続きました。

そしてすれ違うたびに言われる言葉

「…魔物のくせに、」

私は、同居したばかりのあの頃の自分と今の自分を比べてどう思うでしょうか…。


使用人のような存在になり果ててしまった自分に…私に…。


また憂鬱な日々が始まるのね…。


ガタンッ!


「…?どうしたんでしょう?小屋でものすごい音が…」


靴を履いて小屋の方に向かいます。

なにか動物が脱走したのでしょうか…?


不安を胸に小屋のドアを開けます、

するとそこにいたのはボーっと突っ立っていたヒョーゴさんでした。

母を亡くした日からボーっとすることが多かったヒョーゴさんですが、今日は何か雰囲気が違う気がしました。


「あの、変な音響いてましたけど…。大丈夫ですか?」


恐る恐る声をかけてみます。

いつもヒョーゴさんは声をかけられると嫌そうな顔をして去っていってしまいます。

それはとても存在を否定されているような気分になってしまう…

きっと今日も同じことをされるのかと、想像した嫌な未来に少し指が震えます。


「…」


「あ…、えっとな…」


すると彼は言葉を探しているような反応をしました。

そして私の瞳をしっかりと見据えていました。

…っ!

これまでの彼は私と一度も目を合わせようとしませんでした。

そんな彼が私をしっかり認識している。


「…あ」


そんなことを考えていると突然彼は倒れ始めました。

よく見ると、手にベッタリと血がついていることが分かりました。

…このままだと死んでしまうかもしれない。

私の本能がそう呼びかけます。

急な事に動揺を隠せないまま、私は彼をベッドまで肩を貸して連れて行きました。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ベッドで目を覚ました彼に私は状況について説明をしました。

やはり、彼の眼は私を見据えています。

やっぱり悪いところでも打ったのでしょうか?


「…俺はヒョーゴか?」


自分の名前を忘れてしまっている?

あ、手遅れかもしれません。

名前まで忘れてしまうなんて…これからどうすれば…、


「いや、ちょっと気が動転していただけだ。お前がこれ以上深入りする必要は無い」


…。

その言葉に彼はいつも通りであることが分かりました。

私を必要としない、

魔物の私を必要としない彼…

もしかしたら私は少し期待していたのかもしれません。


彼が生まれ変わって、私の存在をもっと肯定してくれるような人になっていると。

でもそれは私の願望。

これ以上深入りする必要はない

そうですか。そうですよね。

死んだような声で別れを告げる私、仕事に戻りましょうか…

足取り重く、部屋を出ようとします。


もうこの際、家を出てしまいましょうか?

そして…っ

呼び止められた?


「ありがとな。お前が居なかったら俺死んでたわ」


引き留められた私に言われた言葉。

初めは言われた言葉の意味が理解できませんでした、

でも段々と言葉の意味が頭の中に入ってきます。


ここで私は違和感に気付きました。

なぜか…あったかい。

彼が?この部屋が?私が?

何があったかいのでしょう…


「…それは、どういたし…まして…?」


やっぱり信じていいのでしょうか?

彼は誰よりも温かい存在になっていることを…。

こんな些細な事だけで信じるのは正直怖いです。

でも、彼の温かさは今までとは違います。


もし、私を…必要としてくれる存在…で…あるなら…、



「…ごちそうさま」


いつもは残されているはずのご飯、

そしていつもは何も言わずに去ってゆく彼、

理由を聞いても「魔物の飯なんて毒でも入っているんだろ?」

「は?どうでもいいだろ」

でも今日は違った。

何も言わないけど、目を細めて美味しそうに私のご飯を食べている彼、


これ以上私を困らせるのであれば、

本当にヒョーゴさんのこと信じてしまいますよ?




作者より

勇者パーティーに会うまで長い。

網羅回用意しました。十五話分飛ばせます。

https://kakuyomu.jp/works/16817330657550288540/episodes/16817330659295480768

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