第32話 イジメっ子に復讐する
俺は堂島のパンチに合わせてカウンターを1発。
「――う゛っ!?」
隙だらけの腹を殴ると、堂島は不細工な声を吐き出して前のめりに倒れた。
「……え?」
先ほどまで楽しそうに動画撮影していた周囲のクラスメートたちは写真で切り取られたかのように口をポカンと開いて制止する。
そりゃそうだ、今まで殴られてばかりだったクソ雑魚陰キャ伏見甚太を前に巨体の堂島が膝をついているんだから。
迫り上がる横隔膜、浅くなる呼吸、ジワジワと凍りつくように動かなくなる手足。
俺という戦闘のプロによって的確に決められたボディブローは堂島の顔色を青白く変化させていった。
「おーおー、どうした? 大丈夫か?」
「て……てめっ……いったい……何を……」
「自己防衛だ。このままじゃお前の無様な姿がみんなに撮影されちまうぞ?」
俺が煽ると堂島は顔色を悪くさせたまま立ち上がる。
「う、うぉぉぉ! 死ねやぁ!」
そして、また隙だらけの状態で殴りかかってきた。
俺は再び堂島の腹。
さっきは横隔膜だったが今度は
顔面より目立たないし、何よりこいつは殴られる痛みを知るためにジワジワと苦しむべきだ。
「――うっぷ、おぇぇ」
苦悶の表情で堂島は吐いた。
ただでさえ呼吸もおぼつかないのに、度重なる腹部への強打。
堂島は今、地上で溺れているに等しい状態だ。
俺は先日、伏見甚太がされた時のように堂島の学ランを拾い上げると投げてやる。
「ほら、雑巾が落ちてたぞ。使えよ」
「……うぅ。くそっ……」
「どうした? 確かお前らにとってはこれが雑巾なんだろ?」
堂島は顔中に脂汗を流しながら苦し紛れに叫ぶ。
「おいっ! お前らも見てねぇでこいつを殺せ! 『アレ』を使え!」
堂島の命令を聞いて、クラスにいる何人かの堂島の舎弟たちは屋上に隠してあった鉄パイプを持ちだした。
俺を粛清する際に使う予定だったのだろうか。
武器を手にした彼らは俺に襲いかかる。
「おらぁぁぁ!」
「道具が使えるなんて、猿と同じくらいには賢いみてぇだな。どうやら使い方は知らねぇようだが」
俺は流れるような動きで鉄パイプの攻撃を受け流し、それを逆手に取る。
単調な攻撃を見切り、避け、同士討ちをさせ、蹴り上げて鉄パイプを奪ってはそれを自分の足元に捨てていった。
堂島の舎弟たちが全員床に転がる頃には、俺の足元に鉄パイプが整頓された食器のように綺麗に並べられていた。
「どっから持ってきたか知らねぇが、ちゃんと返しに行けよ。お前らのせいで流れるはずの水が流れなかったご家庭があるんだからよ」
軽く埃を払うと、俺はまた自分のスクールバッグを手に持って背負う。
周囲からは唖然とするクラスメート全員からの視線を浴びていた。
その前をあくびをしながら悠々と歩き、俺は1人教室に向かった。
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