第11話 クラフトフェスタⅤ - 脱衣麻雀・後編
※今話でちゃんと脱がせます。
麻雀のルールがイマイチ分からない方はスクロールして読み流してください。
南二局、もう勝負は終盤戦だ。
俺の親番だから、ここでアガれば得点が増えるしこのチャンスも継続する。
最初の配牌は…………悪くない。
いや、むしろ良い!
白と東の役牌がそれぞれ2枚ずつ、更に数牌まで重なっている。
役牌から鳴いて対々和で早上がりするも良し、ツモの調子が良ければ四暗刻とは言わずとも三暗刻くらいなら狙えそうだ。
さて第一ツモ…………白ッ!
面前のまま役牌が成立、これなら鳴きは控えてじっくりいこうじゃないか。
打牌、西。
「っ! …………」
ネクロンの口角がぴくりと反応した。
鳴きかけて我慢したってところか?
とすると既に、彼女にとっては役牌となる西を2枚抱えていそうだな。
次いでパリナはツモった九萬をそのまま切り、ネクロンは手牌から一索切り、ムラマサは手牌から白を切った。
そこからは特に動きはなく進み────。
「時は満ちた────リーチッ!」
三索を強く叩きつけてリーチ宣言、投げられたリーチ棒が優雅な軌道を描いて卓上に転がった。
テンパイ即リー、これが俺の闘牌であるッ!
さてこのリーチ、特大の爆弾である。
白、東、ドラの四萬が暗刻で揃い、対子はなんと九萬と二萬。
九萬か二萬のどちらかをツモれば役満の四暗刻になり、ロンアガリでもジャスト13翻で数え役満というビッグハンド。
親の役満が直撃でもしてみろ、誰だって吹き飛ぶぞ。
そう、点棒も────服すらも。
パリナは手牌から打三索、リーチ宣言牌に合わせる形で安全に一発回避の構えを取ってきた。
「その自信、相当良い手みたいじゃん」
「全然、安いですよ」
「はいはい、言ってろ」
と、ネクロン、ツモからそのまま打六索。
これも数巡前に俺が切っているから安全だ。
パリナは手を崩して安全牌を切ったことから降りの姿勢か、ネクロンは……ツモ切りだったからまだ判断がつかないな。
だがしかし、俺のアガリ牌は二九萬。
手牌に現物が無くなれば十分に出てくる可能性がある絶妙なラインだ。
端っこの九萬はもちろんのこと、俺は既に────赤五萬を切っている。
この赤ドラ切りは強く印象に残っているはず。
よって、二萬の強烈なスジヒッカケまでもが生まれている。
「うーん、これは困ったね。安全牌が1枚も無いやっ!」
先の二倍役満で堂々のトップをひた走るムラマサからあま〜い一言!
出せ、出せ、出せッ…………!
大量の点棒と、身に着ける衣服のすべてを奪わせろッ…………!!!
「えーい、通れっ!」
打八萬。
うーん、スジはスジでも逆側だ。
「スルーです」
「ふぅ〜〜〜ヒヤヒヤしたよっ!」
まあ良い、直撃でなくともツモアガリで三人平等に脱がせられるからな。
ムラマサはさっきの役満アガリで何枚か衣服を回復したとはいえ、一気に4枚も脱がせばほぼ全裸。
その豊満なバストを、自らの手で晒してもらおうじゃないか。
そして未だ鉄壁の防御を誇るパリナとネクロン、お前らの生肌だって晒させてやるよ……ッ!
「…………来ない、か」
ツモは西、一発は消えた────付いても意味無いけどな。
リーチを掛けている以上そのまま切るしかない。
……ん、西?
マズい、1枚目の西を切った時にネクロンが反応してたよな?
あれ以降、西は卓上にまったく姿を見せていない。
しかもネクロンはきっとテンパイ、せめて一向聴くらいには到達しているだろう。
何故なら、対面でずっと観察していた俺は、彼女がここ数巡ずっとツモ切りし続けていたことを知っているからだ。
西ポンならまだ良し、ロンだけは止めてくれ……パンイチだから誰かにアガられた瞬間に全裸確定なんだ。
スキンヘッドマッチョの全裸姿なんて見たくないだろ?
「…………ちゅーーー」
ネクロンは素知らぬ顔で、“レッディサワー”のボトルにストローを挿して喉を潤していた。
良かった、西はアタマで確定してるらしい。
そして続く、パリナ打八萬、ネクロン打六索と、安全に地雷原を回避していく。
さて、ムラマサの手番だ。
さっきも「安全牌が無い」と言っていた。
だから出るとすれば彼女からに違いない。
さあ吐き出せ、すべて晒しあげてやるッ!
────打九萬。
「ッ! 来たァ! ロォォォォォォォォン!!!」
「あたしもロン」
「ごめんなさい、私もロンですぅ……」
「んなっ! トリロンっ!? そんなのってないよ〜っ!」
なんと、まさかネクロンだけでなくパリナまでもがテンパイだったとは。
ダマのまま安全牌を手出ししていたから降りているものかと思っていたが、しれっと手を進めていたのか。
パリナ、恐ろしい女…………ッ!
「えっと……何枚脱ぐのかな?」
「あたしは平和ドラ1のみ、良かったじゃん2枚で済んで」
「ごめんなさいぃ、高めの方で一盃口に断幺九に平和ですぅ……」
「そ、それならくまさんクン次第で何とか耐えられそうかな……?」
「クックック……ヌワァーハッハッハッハァ!!! 「たえる」は「たえる」でも、絶えるの方ですけどねェ〜〜〜〜〜!!!」
「うわっ、何その手牌グロっ」
「あっ…………ご愁傷さまです、ムラマサさん……」
「なになに、何枚脱がされるのさっ!?」
「リーチ、東、白、対々和、三暗刻、混一色、ドラ3……裏なんて捲る必要も無く数え役満っすわァ!!!」
「やっ、役満〜っ!? しかもネクロンとパリナの分もあるから、まさか……」
「そりゃもちろん、全裸でしょうねェー!」
「ウッソだぁ〜! まさか一撃で裸なんて酷いよっ! ネクロンとパリナもそう思うよねっ!?」
「幾多の借金を踏み倒したあたしだけど、牌だけは裏切れない」
「大丈夫ですぅ! ムラマサさんはスタイルバツグンですからぁ!」
「フッフッフゥ……ムラマサ先輩の味方は居ないんですわ! さあさあさあ! 自分で脱ぐのが恥ずかしけりゃ、俺の手でキッチリねっとり脱がしてあげますからねェーッ! はいバンザァ〜〜〜イッ!!!」
「うわぁーんっ! 可愛い後輩が野獣になっちゃったよーっ! って、あっ、まずいこれ引き剥がせないホントに脱がされちゃいそう……っ」
なお、フルシンクロVRシステムを用いたゲームの全てに、ゲームシステムの範疇を逸脱した暴力を封じる機能がある。
もしこの状態でムラマサが本気の拒絶を脳内で意識すれば、システムブロックが掛かり俺は彼女に触れられなくなるし、すぐさま運営にまでコトの詳細が自動で報告されるのだ。
しかしそのシステムブロックは起動していない。
つまり、ムラマサはあくまで戯れだと認識しており、役満直撃を含むトリプルロンの支払いを心から受け入れているのだ!
「あららもう下着だけになっちまいましたねェー! でもルールだから仕方ないっすよねェー!!! 脱がせちゃいますねェー!!!」
────その瞬間、視界の隅で光の粒子が揺らめいた。
「ただいま────って、ナニしてんのよアンタっ!?」
「あら〜、盛り上がってるわね〜」
「ナイスタイミング二人ともっ! くまさんクンが文字通り野獣になっちゃったんだよ〜っ!」
「うるせェッ! ルールはルールでしょうがッ! ネクロン、パリナ、ムラマサ先輩を抑えろッ!!!」
「「御意っ!」」
「いい加減にしなさいよね…………【ウォーザ】っ!」
アリアが叫ぶと、虚空から龍神の如き激水流が溢れ出し、一瞬で俺とネクロン、パリナの3人を押し流した。
ごく普通のアパルトメントハウス内で溺れた俺は、そのまま意識を失ったのであった。
「あら〜、この“レッディサワー”……製品化されてない擬似アルコール版だわ〜」
「やっぱりね。うっすら酩酊のデバフを与えるアイテムとか、ホントにパリナは一流だわ……」
「あれ〜っ? おーいくまさんクーン、どうしちゃったのさ〜っ?」
「ムラマサも拒絶しないと思ったら、ガッツリ酔ってたワケね……」
「ふふふっ、それはどうかしらね〜。この子、くまさん君に出会ってから彼の話ばかりするもの〜」
「えぇ……」
こうして、波乱の脱衣麻雀大会は勝者不在のままに幕を閉じた。
数時間後に目を覚ました俺は記憶がぼんやりとしている中、アリアにボコボコにされたのであった。
…………俺、何かやっちゃいました?
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