第16話 報酬
カレンと別れ冒険者ギルドの近くまで転移で跳んだ俺は、アイテムボックスからわざわざバックパックを取り出してちゃんと背負ってギルドの表に回って中に入っていった。そのまま買い取り窓口の方へ進んでいき、グレンさんの窓口が空いていたのでそちらに回った。
「グレンさん、こんにちは。買い取りお願いします」
「おお、昨日の兄ちゃんか。確かゲンタロウって言ったな。今日は何を持ってきたんだ?」
「オークを丸ごと3匹と、あと薬草があります。丸ごとって言ったけど1匹の頭はありません」
「丸ごとって。驚いたな。お前さんのアイテムバッグはいったいいくらものが入るんだよ? オークは後で解体作業場に行って出してもらうか。先に薬草の査定をしよう」
「お願いします」
俺は昼前に採集した薬草をバックパックからテーブルの上に並べていった。
赤葉草が41本、黄金蓬が22本(束)、紅光茸が25枚。そこそこの量を採集していたようだ。
赤葉草の葉の重さが55S、黄金蓬が98S、紅光茸が60S
それぞれ単価が、250C、350C、750C。
5.5×250+9.8×350+6×750=9305C
1C10円として9万3千円か。日銭とすればいい金額になる。
「全然傷んだのがないな。これなら高値で薬師ギルドに卸せる。金貨2枚出そう」
「ありがとうございます」
金貨2枚を財布代わりの小袋に収め、小袋はそのまま収納しておいた。
「これが今買い取った分の買取金額証明書だ」
『買取金額:金貨2枚』と書いた紙きれを渡された。
これで貢献ポイントが2だ。ランクなどあまり気にしていないが、それはそれ。
「解体作業場へ案内するから、そこから入ってきてくれ」
カウンターの脇の小さな扉から事務所側にグレンさんに案内されて入り中を抜けてギルドの裏手に出た。
解体作業場は、ギルドの裏手で倉庫などが立ち並ぶヤードの一角にあった。いろいろなモンスターが首を取られて吊り下げられて血抜きされている。1つの作業台の上では数人がかりで、オークらしきモンスターを解体中で、別の作業台ではトカゲみたいなモンスターが解体されていた。
「ここらに出しておいてくれるか」
作業場の一角を示されたので、1匹ずつオークの死骸を取り出してやった。アイテムボックスから直接出したんだが不審には思われなかったみたいだ。
「この2匹は頸動脈をナイフか何かで一閃か? 恐ろしい腕前だな。だけど、この3匹目の頭のないやつ。これ、どうやったらこうなる?」
グレンさんが、首の付け根部分がちぎれて血管とかがそこから垂れてぶら下がったオークの死体を見て首をかしげている。
「息があんまり臭かったから、思わず顔を手ではたいたら、頭が飛んでいってしまいました。すみません。飛んでいった頭を探すのが面倒だったんでそのまま放っておきました。なので討伐証明の耳もないんですよ。ハハハ」
「顔をはたいたら頭が飛んでいったのか。そうか、そうなのか」
なんとなく笑って誤魔化したが、グレンさんが引いてしまうのも当たり前か。
「オークについては解体が終わらないと値段が付けられないから、今日の夕方遅めか、明日の朝にでもまた来てくれるか。左耳2つは今切り取って渡すから、それを査定窓口に持っていきな。討伐証明の左耳がなくても本体がある以上討伐は事実だが規則なんでな。
それと、さっき渡した薬草の買い取り証明書も忘れるなよ」
グレンさんは腰に差していたナイフで素早くオークの左耳を切り落とし俺に手渡してくれた。
「それじゃあ、明日の朝また来ます。よろしくお願いします」
手渡されたオークの耳を片手で1個ずつつまんで、軽く一礼して、もと来たところを戻り、査定窓口に向かった。
査定窓口には今日も誰もいなかったので「お願いします」と大き目な声で係りの人を呼んだ。
そうしたら、一般窓口に座っていたマリアさんがやってきた。
「あら、オオヤマさん。今日はエレンが休みだから今回も私が承ります」
「オークの耳と、買い取り証明書です。ええと、オークは東の街道の先の丘陵で斃しました。街道から北へしばらく行ったところです」
「東の丘陵へは低位の冒険者は近づかないよう注意書きが出ていますが見なかったんですか?」
「見てもいたし、素人は行くなとも言われてたんですが、オーク程度どうってことないかなーと」
「まあいいです。無事に帰ってこられたみたいですから」
両手につまんで持っていたオークの耳を窓口のカウンターに置き、グレンさんからの薬草の買い取り証明書も収納から取り出して提出する。
「オークを2匹も一人でたおしたんですか? 昨日登録してすぐにEランクに昇格したといっても一人でオークを2匹?
それと採集達成証明書は、金貨2枚分。金貨2枚分の薬草は、かなりの量になりますよ。いったいいつ集めたんですか?
まさかオオヤマさん、誰かの斃したオークの耳を横取りしたり、薬草を盗んできたってことないですよね?」
「冗談はよしてください。わたしが斃したオークは解体作業場にまだありますよ。そこで買い取り担当のグレンさんに切り取ってもらったのがそこの耳です。
たまたま、オーク3匹に襲われている人がいたんで成り行きでその3匹のオークを斃しただけです。耳が2つしかないのは、一匹分の頭が取れてどっかに行ってしまったから。オーク3匹程度を斃すのはルビーウルフより簡単でしたよ。その時助けたのはカレン・アーマットさんというGランクの冒険者です。俺の名まえは教えているから、アーマットさんがギルドに顔を出した時にでも聞いてください。あと薬草を簡単に見つけるスキルをわたしは持ってるんですよ」
少しきつく言い返してやった。
「申し訳ありません。疑ってしまって。それと、アーマットさんを助けていただきありがとうございます」
「いえ、まあ。駆け出しがオークを簡単に狩るのは不自然といえば不自然ですしね。ハハハ」
「そ、そうですね。
それでは手続きをしますから、ギルドカードをお見せください」
オーク2匹分の討伐報酬が金貨1枚。薬草の採集買取金額が金貨2枚で、これでギルド貢献ポイントが3。
ギルドカードを渡して、マリアさんが手続きをしている間、暗算しながら、ひとりニマニマしてしまった。
オーク討伐はなかなか効率がいい。オークの素材がいくらになるかわからないけど、オークの肉1キロで銀貨1枚=250Cは無理としても、手取りでキロ100Cくらいにはなるんじゃないかな。
1匹当たり30キロの肉が取れるとして、キロ100Cなら3000C。討伐報酬は銀貨10枚=2500C。合わせて5500C=金貨1枚と銀貨2枚。悪くない。100匹たおせば金貨100枚と銀貨200枚=金貨110枚。300匹なら金貨330枚、……。ニマニマ。300匹もいてくれればいいけどそこまでは無理か。
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