第6話 勇者たち

[まえがき]

カクヨムのスケジュール投稿というのを試してみました。ちょっとだけ便利かも?

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ゲンタロウのいるアルス市が属するアビシカン王国の王都アビシ。


 王都の中央には堀をめぐらした王宮があり、王宮からそれほど離れていない一等地にベーサイヤと呼ばれる大神殿があった。王族の葬儀や新王の戴冠式が行われる王国随一の格式と伝統を誇る神殿である。


 その大神殿の大ホール。現在は入り口の大扉が閉め切られ、神殿内に部外者は誰一人いない。


 大ホールの正面奥には、この神殿がまつっているベーサイヤ神の石像が宙を見据えており、ベーサイヤ神の石像の左右にはベーサイヤ神の眷属神の石像が並べられている。


 その大ホールの脇の通路から奥に入った一室。今は青銅製の扉が閉ざされている。

 その部屋の石床の中央に複雑な魔法陣が描かれ、魔法陣の周りを白い神官服を着た12人の神官が囲んでいた。


 魔法陣から一歩離れた位置で、金糸のがらの入った赤い神官服を着た神官長が祝詞のりとを唱え、12人の神官がそれに続き祝詞が殷々と響いていた。


 3巡目の祝詞が始まり、床に描かれた魔法陣がわずかに青く輝き始めその輝きが次第に強くなっていった。


 そして祝詞の詠唱が6巡目に入った。一心に祝詞を唱える大神官も神官たちが気づいているのかいないのか、床の魔法陣はギラギラと輝いている。


 6巡目の祝詞の最後の一節が神官たちによって唱えられた。と、同時に魔法陣が目もくらむばかりに輝いた。


 輝きがおさまり、いまや床の上のただの模様となった魔法陣の中に5人の男女が立っていた。もちろん誰も意識することはなかったが、大山源太郎がこの世界に現れたのと同時刻のことである。


 5人は神官たちからすれば見慣れない服を着ていたが、その見慣れない服装こそ異世界から召喚された者たちであることを如実に物語っていた。





 妙な白服を着た見知らぬ男たちに囲まれて、見知らぬ場所に立った5人は最初周りをキョロキョロ眺めていた。そして自分の置かれた状況を徐々に理解し始めた。


 5人の名は和田勇わだゆう田中一郎たなかいちろう佐藤美紀さとうみき鈴木奈々すずきなな高橋愛たかはしあい


 5人とも同じ高校に通う2年生。そして同級生だ。それぞれの部活が終わり、部室で着替え終わって荷物を取りに教室に戻っていたところ、いきなり教室内に現れた魔法陣に驚いていたら見知らぬ部屋の中で白い服を着た男たちに囲まれていた。と、いうのが今の彼らである。


 自分たちを囲んでいた白い服を着た男たちが後ろに下がり、白いひげを顎に蓄え手の込んでいかにも高級な赤い法衣ふくを着た老人が5人の前に進み出た。


「ようこそ、アテナの地に。わたしはここベーサイヤ神殿で神官長を務めるネイサンと申します。

 みなさんは特別な力を持って、この地にはびこる悪を倒すためこの地に招かれました」


『これって、異世界召喚だよな? 僕たちが特別な力を持っているってことは勇者召喚じゃないか?』

『きっとそうだ。ほんとにこんなことが起こるなんて。これで学校に行かなくて済むぜ』

 和田勇わだゆう田中一郎たなかいちろうが小声で話している間にも神官長の話は続いた。


「悪を倒すことは、安全な仕事ではありません。しかし使命を達成すれば恩賞は望みのまま」


 佐藤美紀さとうみき鈴木奈々すずきななも小声で話し始めた。

『安全な仕事じゃないって、危険な仕事って事よね? 大丈夫かな?』

『わたしたちって特別な存在みたいだから、何とかなるんじゃない?』

『わたしたちに何とかならないほど危険なことさせるわけないか』

『そうじゃない。そうじゃないとわざわざわたしたちをここに連れてきた意味なくなるもの』

『そう言われればそうか』


「もちろん訓練の後、実戦に臨んでいただくわけですから、みなさんなら『悪を倒す』という崇高な使命の達成は容易になるでしょう」


『訓練ってどんなことするんだろ?』

『ランニングとか?』

『違うんじゃない?』



「みなさん、わたしについてきてください。みなさんの能力を見極めます」


『分かるのは能力だけなのかな? 職業とかないのか? ゲームによるけど職業あった方が面白いと思うけど』

『職業があるなら、俺の職業は勇者に違いない』

『田中、そんなこと言って外れたら恥ずかしいわよ』

『俺以外、勇者にふさわしいやつがいるわけないだろ!』

『わたしは華麗な聖女一択だわ』

『妙な職業だと嫌だなー。盗賊とかになったら最悪』

『まだ、職業があると決まったわけじゃないんだから』


 5人は私語を続けながら神官長ネイサンの後について部屋を出て、廊下を歩いていき別の部屋の中に入っていった。彼らの後には12人の神官しろふくが続いている。



 5人が連れてこられた部屋の真ん中には、四角い石の台が据えられ、その台の上の座布団に透明の丸い玉が置かれていた。玉の材質は水晶ではないのだが、5人は勝手に水晶玉と認識していた。


「それでは順にその玉に両手を乗せてください」


 神官長の声に従って、5人の中から最初に和田勇が玉の前に進み出た。彼は2年生ながらバスケットボール部のレギュラーで3番のゼッケンをつけている。


 和田勇が玉の上に両手を置くと、玉が白く光り玉の中に文字が浮かび上がった。その文字を白服が紙の上に移しとった。


名まえ:ユウ・ワダ 年齢:16 種族:人

職業:勇者

称号:召喚されしもの

レベル:1

HP:155/155

SP:75/75

力:22

体力:22

知力:22

精神力:18

素早さ:18

巧みさ:18

運:9

スキル:聖剣

特殊:アテナの祝福。剣技補正大


 和田勇は紙の上に書かれた『職業:勇者』の文字にニンマリした。他の5人からは白服の文字は見えていない。


 次に進み出たのは田中一郎。彼も2年生ながらサッカー部のレギュラーで5番(センターバック)のゼッケンをつけている。


名まえ:イチロウ・タナカ 年齢:17 種族:人

職業:戦士

称号:召喚されしもの

レベル:1

HP:175/175

SP:25/25

力:22

体力:22

知力:18

精神力:18

素早さ:16

巧みさ:16

運:11

スキル:シールドバッシュ、ウォークライ

特殊:アテナの祝福。剣技補正。


 紙の上に書かれた『職業:戦士』を見た田中一郎は、


「なんで俺が戦士なんだよ!? 和田の職業は何だったんだ?」

「僕か? 聞きたいか? 僕は何を隠そう『勇者』だよ。ハハハ。田中、悪かったな。

 格の差ってやつじゃないか?」

「くそっ!」


「和田が勇者かよ。やる気なくなるなー」と、高橋愛。


「次はわたしね。希望は聖女。どうかなー?」

 そう言って佐藤美紀が玉の上に両手を乗せた。佐藤美紀は2年生ながら生徒会の書記を務めている。


名まえ:ミキ・サトウ 年齢:17 種族:人

職業:魔術師

称号:召喚されしもの

レベル:1

HP:65/65

SP:225/225

力:12

体力:14

知力:22

精神力:20

素早さ:15

巧みさ:14

運:8

スキル:鑑定

特殊:アテナの祝福。魔法効果強化


「あれ? 何でよ!? 魔術師じゃない。魔法が使えるならそれでもいっか」



「次、あたしいくよ」

 高橋愛が進み出て玉の上に手を置いた。彼女は陸上部で短距離走者。県体の100メートル走で入賞経験がある。


名まえ:アイ・タカハシ 年齢:16 種族:人

職業:盗賊

称号:召喚されしもの

レベル:1

HP:115/115

SP:15/15

力:15

体力:15

知力:14

精神力:16

素早さ:22

巧みさ:22

運:22

スキル:罠発見、罠解除、スニーク、バックスタブ

特殊:アテナの祝福。


「げっ! 盗賊じゃん。何でだよー」



 高橋愛のあと、鈴木奈々が最後に玉の上に手を置いた。彼女は図書委員を務めている。


名まえ:ナナ・スズキ 年齢:16 種族:人

職業:僧侶

称号:召喚されしもの

レベル:1

HP:95/95

SP:155/155

力:16

体力:16

知力:18

精神力:22

素早さ:12

巧みさ:13

運:14

スキル:解呪(呪いの解除、アンデッドの解放)、聖別(武器などに対してアンデッドに対する特効効果を与える)

特殊:アテナの祝福。魔法効果強化


「僧侶ってお坊さんじゃないですよね?」

「いや、坊さんのことだろ」

「そんなーー」



 各人それぞれの思いはあるようだが、神官長は一人ひとりの鑑定結果に満足して大きくうなずいていた。



[あとがき]

恒例の能力値なんですが、これやってしまうと管理がすごく大変なんです。

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