第33話 ポーション販売1

[まえがき]

1カ月かかってやっと序章が終わったようで、そろそろ序・破・急の破?か。起・承・転・結の承か。そんなところです。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 屋台でのポーション販売を考えたが、どこで屋台を売っているのか分からない。この世界にホームセンターなどないので工具も材料も揃えるだけでも大変だ。工具と材料があったとしても自分で作れるとも思えない。


 いちおう屋台について心当たりはないかカレンに聞いてみた。


「屋台を出してポーションを売ろうと思ってるんだが、屋台を売ってるというか作っている所をカレンは知らないか?」


「いえ、全然わかりません。

 考えられるのは、家具屋さんか、馬車屋さん?」


 なるほど。家具屋は微妙だけど、馬車を作っているところなら可能性はあるな。


「馬車屋で売ってそうだけど、馬車屋がどこにあるかカレンは知ってるか?」


「分かりません」


 カレンも俺と同じよそ者だから知らないのが当然だった。



 結局どこで売っているのか分からないときは商業ギルドに聞いてみれば何とかなるような気がしたので商業ギルドに跳んでいくことにした。


「カレンも付いてくるかい?」


「はい」



 カレンを連れて商業ギルド近くに転移して、正面玄関に回って中に入っていった。


 そのまま窓口まで歩いていき受付嬢にどこで屋台を売っているのか聞いてみた。


「車輪付きの屋台ですと馬車屋で扱っています。店舗の前に出す車輪なしの屋台ですと、家具屋で扱っています」

 おっと、カレンの推理は満点だったか。しかし、窓口の受付嬢のレベル高いな。商業ギルド恐るべし。


「それなら馬車屋の場所を教えてもらえませんか?」

「少々お待ちください」


 受付嬢は隣の同僚と少し話をしてから馬車屋までの道を教えてくれた。


「ありがとうございます」

「どういたしまして」



 商業ギルドを出た俺とカレンは馬車屋をめざして教えられた道を歩いていった。


「ゲンタロウさん。商業ギルドの受付の人、美人でしたね」

「そうだったかな? 容姿については気にしてなかったからあまり印象はないな」


「商業ギルドの受付の人、親切でしたね」

「一応、俺は商業ギルドの物件を借りてるお客さまだしな」


「ゲンタロウさん」

「なに?」

「いえ、何でもありません」



 しばらく教えられた通り歩いていたら、それらしい建物が見つかった。


「ここだな」


 扉が開いたままだったのでそのまま建物のなかに入ると誰もいなかった。そうそう客など来ないだろうからこんなものだろう。入り口の先は仕切りがあってその先は工房らしく人声も聞こえてくる。


 俺は仕切りから首だけ出して、


「すみませーん」と、大声で中の人を呼んだ。


『今行くー』


 工房の中で作業していた一人のおじさんがそう言ってこっちにやってきた。


「なんの用だい?」

「実は屋台を始めようと思っていまして、手ごろな屋台を作ってもらえませんか?」

「そうかい。なら、だいたいの大きさを教えてくれればそれで作れる」


 ポーションを売るわけだから、そんなに大きい必要はない。リヤカーの幅を狭くした感じで2輪の屋台を説明した。


「それくらいだと、明日の昼までに作っておくよ。値段は金貨3枚ってところだな」

「じゃあそれで。今払った方がいいですよね?」

「その方が有難い」

「お願いします」


 金貨3枚を親父さん?に払ってその建物から出た。

 


 ポーション瓶を購入した雑貨屋でポーション瓶500個なら10日は見てほしいと言われていたし、どうせ事業は軌道に乗るので、早めにポーション瓶を注文しておこうと俺はカレンを連れてその雑貨屋に向かった。


「今回は2000個注文したいんですが?」

「2000個かい。一カ月見てくれるかい」

 了承して、金貨4枚先払いしておいた。



「ポーション2000本ですか?」

「うん。最初はなかなか売れないだろうが、根気よく売ってれば必ず売れる。

 アイテムボックスの中に収納していればポーションはいつも作り立てだから在庫はいくらあってもいいんだよ」

「そうなんですね」

「そういうこと」


「一本いくらで売り出すんですか?」

「そこらで売ってる初級ポーションの値段が銀貨5枚。中級で金貨1枚=銀貨20枚だ。

 俺たちが作ったポーションは中級ポーションだけど、その値段ではさすがに買い手はいないと思うから、銀貨10枚にしようと思っている。

 そして最初の5日間は初級と同じ銀貨5枚で売り出すつもりだ」

「そこまですると十分売れそうですね」

「だろ」


 カレンでも売れそうだと思うくらいだから十分勝算はある。




 翌日。


 昼前に屋台を受け取りに工房にカレンと一緒にいった。


 でき上った屋台は白木で出来たもので、そんなに重くはない割に結構しっかりしていた。屋台の下は物入れになっていて、押し入れのように引き戸が付き、鍵もかけられるようになっていた。アイテムボックスを持つ俺には不要な機能だが、あって悪いものではない。


 親父さんに礼を言って、受け取った屋台を引いて通りを少し歩いてからアイテムボックスにしまっておいた。


 それから俺はカレンを連れて雑貨屋に跳んでいき、紙を数枚とノリと筆と絵具を購入した。値段の表示用だ。


『中級ヒールポーション、今なら1本銀貨5枚(5日間限定)』


 紙の上に絵の具で書いてそれを屋台の上に貼り付けた。


「屋台もでき上がったことだし、ちょっとポーションを売ってくる」

「ポーションを売るとなると、両替用の小銭が必要になりませんか?」


「それもそうだな。

 カレンは、両替屋ってどこにあるか知っているか?」

「たしか商店街のどこかで見たような」

「商店街に先に行って、金貨を銀貨に替えてくる」

「ご一緒します」



 商店街を歩いていたら、道端で屋台のおじさんがジュースを売っていた。


「カレン、喉が渇いたからジュースでも飲まないか?」

「はい」

「なにがいい?」

「わたしはオレンジかな」


「おじさん、オレンジ2つ」

 代金を払って、おじさんがオレンジジュースを渡してくれた。


 2つとも5度くらいまで冷たくして、一つをカレンに渡した。


「おじさん、ちょっと聞きたいんだけど」

「なんだい?」

「こんど俺屋台を始めようと思ってるんだけど、屋台って税金取られるの?」

「そういったことを聞いたことは一度もないなー」

「そうなんだ」


「ただ悪い連中がやってきて場所しょば代寄こせとか言ってくることがあるくらいだ」

「そういう時はどうするの?」

「ある程度の金を渡せば連中はおとなしく帰っていくな」

「それが税金みたいなものか」

「そうだな」


 俺にとってはそういった連中はどうってことない。場合によってはカモだし。


「おじさんありがと。

 それから、両替屋ってどこにあるか知らないかい?」

「両替屋ならその先にある。それラシイ看板がかかっているからすぐに分かる」

「ありがとう」


 飲み終わったコップをおじさんに返して俺たちは商店街を歩いていたら屋台のおじさんが言っていた通り、積み重ねた硬貨を彫りこんだ看板があった。


「ここだな」


 間口まぐちのやたら狭い両替屋の中に入ると小さなカウンターの先に爺さんが一人座っていた。金貨10枚を銀貨にしてくれと頼んだら銀貨195枚になって戻ってきた。結構手数料取るもんだ。銀貨を布袋に入れてアイテムボックスにしまってから両替屋をあとにした。


 カレンが何も言わなかったところをみると、妥当な手数料だったんだろう。


 ポーション1本の代金を金貨で支払う人間がそれほど多いとは思えないので、銀貨がこれだけあれば困るとこはまずないだろう。



[あとがき]

2024年12月31日。

2024年中、皆さまありがとうございました。来年もよろしくお願いします。


宣伝:仮想歴史もの短編『皇国2436』(全2話6800字)

織田信長が日本統一を果たし国名を日本皇国と定めて189年。皇国は西洋列強をしのぐほどの大国に成長していた。そして今、皇国はこれまでの重商主義から帝国主義に向け大きく舵を切った。

何を思いついてこれを書いたのか、全く覚えていません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る