第20話 カレン5、トレーニング2
[まえがき]
公開失敗したようで。申し訳ありません。
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手を握っていたためかカレンのレベルが低いためか、相互作用か分からないが一切のレジストなく簡単にパラメーター操作できた。
簡単に対象のパラメーターが操作できてしまうと、マイナス方向にも変更できるわけで、それはそれで恐ろしいことができてしまう。おそらく、対象が高レベルであったり、距離があったりすればパラメーター操作の成功率は極端に下がるのだろう。
「カレン。今のカレンは、さっきまでのカレンに比べ、身体能力値が上昇している。力、スピード、正確さがそれぞれ1割ほど上昇しているはずだ」
「強化魔法を使ったんですか? それにしては何も感じなかったのですが」
「強化魔法とは違い、今回のきみの身体能力値の上昇は恒久的なものだ。
体を積極的に動かすことによってこの身体能力に慣れてもらい、基礎体力も上げていく。この状態に慣れてきたら、その都度身体能力を上げていくから。当面の目標は元の2倍だ。
試しに、そこらでちょっと飛び跳ねてみてくれるかい」
その場で2、3度飛び跳ねたカレンが驚いた声を上げた「体がすごく軽い!」
「わずか1割の変化でも、体感ではかなりの変化になるだろうからね。だからこそ徐々に慣らしていく必要があるんだ。
それじゃあ、まずは走り込みからだ。走り込みを通じて持久力の向上と体幹の安定維持を図る。
体の軸がブレないように意識して走ること。重心の上下動を抑えること。この2点に注意して走っていこう。ある程度走って疲労がたまってきたら俺が回復させるから」
まだ夜明け前の通りに走り出た。カレンは俺の後ろについてきている。
10分ほど走っていると、カレンが遅れ気味になってきた。息も上がってきているようだ。もともとの体力が低いので仕方ない。それでも頑張ってついてきている。
少しスピードを落としカレンと並走する。カレンの背中にそっと手を置き<リフレッシュ>。
これで、疲労はなくなった。呼吸も軽くなったはずだ。
この<リフレッシュ>は地球の管理者を名乗る神さまが俺にしてくれたリフレッシュのような大層なものじゃなく、体の中に溜まった疲労物質を強制的に排出して、体内の酸素をおぎない負荷前の状態に戻すだけのものだ。有酸素運動効果そのものはやや落ちると思うが高めの負荷の運動を継続的に行なえるので無酸素運動効果は高いだろうし、ある程度の有酸素運動効果も期待できる。ハズ。
さらに10分経過。すこしカレンのスピードが落ちてきた。先ほどと同様に<リフレッシュ>。
1時間ほどぐるりと街の中を走ってランニングは終了。今日のランニングの速度は時速8キロで行なった。明日は身体能力をもう10パーセント上げたうえで、時速9キロ1時間の予定だ。
「軽く体をほぐしたら、着替えて朝食にしようか」
「はい」カレンは疲れているはずなのに疲れていない今の状況に戸惑っているみたいだが、すぐに慣れる。
それよりも、汗に濡れてやや上気した顔や首筋を手ぬぐいで拭いている姿が実によい。
いったん部屋に戻って汗ばんだ服を着替えたカレンと、汗はかかなかったがエチケットとして服を着替えた俺は食堂で集合して、二人席に向かい合って座った。そこで朝食を取りながら今日の予定を話しておいた。
「食事が終わったら冒険者ギルドに行こう。俺は昨日預けたオークの精算をする。カレンはその間、掲示板の中から良さそうな依頼を探しといてくれるかい。軽い討伐系があればありがたい。
話は変わるけど、上級ポーションを売ってるところを知らないかい?」
「上級ポーションですか? わたしは見たことはありませんが部位欠損まで直すことが可能とか。おそらくこのアルスでは売ってないんじゃないでしょうか。あるとすれば王都アビシか、迷宮都市あたりだと思います」
「迷宮都市? 迷宮都市というのがあるのかい?」
「ご存じありませんか?」
「いや、ちょっとした事情で一般常識が欠落してるんだよ」
自分の頭を人差し指で軽くたたきながら答えた。俺のことは、普通じゃないと思っているだろうから、いまさらそれが少々増えてもモーマンタイ。
「それでその迷宮都市について教えてくれるかい?」
「わたしも人から聞いた話なので詳しくはありませんが、迷宮を探索する冒険者のための便宜を図るために、いろいろな施設やお店が集まって、やがて村になり、そして町になり、さらに発展して、立派な都市になったところらしいです。冒険者たちによって迷宮から持ち帰られるモンスターの素材や希少なアイテムなどが日々高額で取引され、非常に活気のある街だそうです。この国には第三迷宮という迷宮があり、その出入り口を囲むように第三迷宮都市があります」
「その迷宮はどのくらい大きさなのかな?」
「大きさについては、巨大であるということしか分かっていないようです。発見されたのが200年ほど前ですが、現在でも10階層あたりが最前線だと聞いています」
「ありがとう。そのうち行ってみたいもんだね」
……。
「そろそろ行くか。カレンは一応冒険者用の装備に着替えておいてくれ。俺は出口で待ってる」
白ユリ亭の玄関で待っていると、カレンが急いでやってきた。案の定フード付きのローブ姿で、フードを被っている。今は何も言うまい。すぐに自信をつけて自分からフードを取るだろう。
白ユリ亭から冒険者ギルドまでは歩いて5分もかからない。冒険者ギルドの中に入って、カレンと別れた俺は買い取りのグレンさんのところに行った。
「おはようございます」
「ああ、オオヤマか。おはよう。昨日のオークの買取りの件だな。オーク1匹丸ごとで買取価格は金貨1枚と銀貨10枚が標準だ。3匹で金貨4枚と銀貨10枚だが、状態がかなり良かったから、金貨5枚だ。頭1個分はおまけだ。たいして高いもんじゃないからな」
一礼して金を受け取った俺はカレンのいる掲示板前に向かった。
俺がオークの代金を受け取ってカレンを探したら、カレンは討伐関係の掲示板の前で、案の定若い男達に絡まれていた。
「Gランクで討伐なんかできやしないぜ。しかも女1人で。なんだったら俺たちのパーティーに入れてやってもいいぜ、なあみんな?」
「ああ、俺たちが休憩してるときだけ、働いてくれりゃいいだけだ。ヒヒヒ」
「Gランクが俺たちDランクパーティーの戦いを見て勉強できるんだ、分け前なんかいらないよな」
チャラい4人組。4人とも二十歳前後に見える。それでもその歳でDランクなら結構優秀なのだろう。
「そこの皆さん、うちの連れに何か用ですか?」
俺は少し軽めに言いながら連中に近づいていく。
「何だ、お前は?」
「そこの女の子の連れですよ。二人でパーティーを組んでるんです。Eランク冒険者のオオヤマといいます」
「Eランク? 俺たちはDランクパーティーの風の牙だ。今大事な話をしてんだから、野郎はすっこんでろ」
「カレン、鬱陶しいのがいるからとりあえず外に出るか?」
軽く挑発してやった。馬鹿はすぐに引っかかるはず。
「なに? お前、Eランクのくせに俺たちを舐めてるのか?」
ほらな。かかった。
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