第10話 白ユリ亭2
頼んだ料理が来る前に、アテナシステム用システム操作の使い方を紹介しておこう。
操作構文
<範囲>:<サーチ>や<検索>などの対象範囲を設定する。<サーチ>の場合、俺を中心とした範囲がデフォルトとなる。
<サーチ>引数や<検索>引数:対象の設定。引数は対象そのもの。指定しない場合は、現在見ているものや、持っているものなど妥当なものが対象になる。<サーチ>や<検索>などの補助コマンドで対象を絞り込むことができる。
<ロック>:対象が確定されマークが付される。引数はなし。マークとは脳内の記憶域に対象のアテナシステム内の固有記号のようなものの記憶。ロックされた対象は俺の脳を破壊=俺を殺さない限り、マークが消えることはない。従って逃げることはできず、いつでも俺のシステム操作の対象となる。
<オペレーションコード>引数:対象に対する、何らかの作用。引数は繰り返し回数などをとる。
例えば、<インスタントデス>の場合。
<範囲>半径30メートル。
<サーチ>敵性生物。
<ロック>。
<インスタントデス>16。
これを実行すると、俺を中心として半径30メートル以内にいる全ての敵性生物に対して同時並列的に、即死攻撃を16回連続で行う。16回連続でレジストできなければ、そのままその敵性生物は死亡する。
発動時間は、<ロック>までに0.2秒程度、<インスタントデス>16で0.8秒程度。敵性生物の数は10匹だろうが100匹だろうが関係なくおよそ1秒で半径30メートル以内にいる敵性生物は一掃される。
また、汎用操作はマクロとして名まえを付けて登録できる。マクロ化しているとマクロは、意識してマクロ名を唱えるか、実行を意識することで実行される。
そのマクロ登録の構文は、
<ネーム>マクロ名。
<スタートマクロ>
操作構文
<エンドマクロ>
こんなところ。
大ジョッキに入った十分に冷えたエールをごくごくと飲む。この世界には飲酒に対する年齢制限はない。確認はしていないが、俺はそう思っている。
ジョッキが半分ほど空いたところで、料理が来た。
「お待ちどおさま。今日のお勧め、ウサギの腿肉のソテーです。ごゆっくり召し上がりください」
さっそくフォークをウサギの肉に突き立てると、透明な肉汁がじゅわーとにじみ出てバター仕立てのソースに混ざり、食欲をそそる匂いが鼻孔をくすぐる。
ナイフで一口大に切り分けさっそく実食。表面の焦げ目がカリッとして中が柔らかくジューシー。付け合わせの人参と、ジャガイモもウサギ肉によく合っておいしい。野菜スープの中身は、キャベツとトマトのようだ。若干薄味だが、まあまあかな。
最後は、皿に残ったソースをパンにつけていただきました。
俺のエールが4分の1くらいになったときに、ローブの女性は食べ終えたようで、無言で席を立った。向かいの席は今は空いている。
料理を食べ終えジョッキも空になったところで、そろそろ俺も席を立とうか。
「ごちそうさま」
バックパックを片手で持ち上げ食堂を後にした。
食堂を出た俺は、早めに宿を探そうとその辺りを歩いていたら手ごろな宿屋が食堂の裏手、表通りにあった。というか、宿屋の食堂の入り口が裏通りにあっただけだった。
宿屋の受付けで、朝、晩の食事付きで10日分の宿泊費として金貨1枚を支払った。
階段を2階分上がり、3階の奥の部屋に案内された。
応対してくれたのは、先ほどのウエイトレスの女の子である。名前はリリーと言うそうな。別にコミュ障でもないので、名前ぐらい聞ける。今回はリリーが自分から名乗ったわけだけど。
部屋には、ベッドと腰丈ほどの小さなタンスと丸テーブル、それと椅子が1脚。清潔そうには見える。
冒険者ギルドカードも手に入れたし懐も温かい。宿も決まった。午後からは、仮通行証を南門の衛所に返した後、日用品の買い出しをしよう。
部屋を出た俺は南門に向かった。南門の位置は記憶しているので転移で跳んでもよかったが腹ごなしに自分の足でできるだけ歩こうと思い、歩いて向かった。
南門の衛所では、朝の番兵さんとは別の人が対応してくれた。冒険者ギルドのカードを番兵さんに見せて、仮通行証を返し、大銅貨2枚を受け取った。
「冒険者になったのか。あんまり危険な依頼は受けんなよ。お前さんぐらいの若造が身の丈以上の依頼を受けて大勢大けがしたり、死んだりしてるんだ」
この世界の番兵さんはみんな親切なのか。
俺は一言礼を言ってもと来た道を引き返し、冒険者ギルド前の広場に戻った。
広場に面した雑貨屋で、日本手ぬぐいのようなタオル数本と歯ブラシ、歯磨きを買った。これで金貨1枚。タオルが何気に高い。次に衣料品屋に入り、上下の下着を4、5枚ずつと、雨よけに、フード付きのマントを買った。マント以外はバックパックの中にちゃんとしたものを持っているが、こっちの生活に慣れるため購入した。
マントの色は表が黒で裏がこげ茶、古着だったが金貨1枚也。下着は銀貨10枚。値切ればもっと安くなるんだろうが、面倒なんで言い値で買おうとしたところ、店のおっちゃんに買い物するなら値切らなきゃだめだ。と、叱られてしまった。それで、値切ったわけではないが最初の言い値より1割ほど負けてくれた。買ったものは、全部バックパックに放り込んでおいた。
一仕事終わったところで、そろそろ宿に戻ってゆっくり夕食を待つか。
宿に戻ってベッドの上に寝転んで、これからのことを考えた。しばらくはギルドの仕事をこなしつつ、金を稼いでいこうか。ある程度金が貯まったら家でも買って落ち着こう。
最初に神様?に持たされたお金が金貨5枚ちょっと。ギルドで毛皮を売って金貨30枚、ごろつき退治で25枚くらい。締めて金貨60枚。
使ったのが、宿屋で金貨1枚。買い物、飲食で金貨2枚とちょっと。お金にも少し余裕ができた。しかし、もう少し金儲けしたいところではある。
金儲けで効率のいいのは、ポーションだろう。某ゲームでも錬金術のスキルを上げて希少なポーションを作れば高額で販売できた。この世界でも、希少なポーションは高額だろう。野山で素材を集めて、それでポーションを作れば、原価はビン代だけだ。よし、これでいこう。
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