第11話 採集と狩り
そろそろ夕食にしようと部屋の鍵をかけ1階の食堂に下りていった。
食堂に入ったところ、夕食には少し早いのか、テーブルの空きが目立った。
奥の壁際の席に着くとすぐに、ウエイトレスの例の女の子がやってきたので飲み物とつまみを頼んでおいた。
「飲み物は、エール。今日の夕食とは別に何かつまむものを」
「それじゃあ、赤鹿のスペアリブなんかはどうですか?」
うなずくと、女の子は厨房に戻っていきすぐにエールとつまみのスペアリブを持ってきてくれたので代金を払った。いちいち支払うのは面倒だけど、紙か何かに書いたうえで合計することは結構大変な作業なので、この世界では合理的なのだろう。
エールは例によって冷たくし、のど越しを楽しむ。
うまい!
スペアリブはタレで焼いたわけでなく、塩コショウで焼いただけのものだが、エールにはよく合った。
エールを3分の1ほど飲んだところで、今日の夕食の定食が運ばれてきた。
メインはタン?シチュー。キャベツの漬物とソーセージ。それに黒パン。まあまあか。
俺が食べている間に少しずつ客が増えていった。
長居しても邪魔なので、エールを飲み終わり完食した俺は、席を立ち部屋に戻った。
翌朝。やや遅めの朝食をとり、冒険者ギルドに向かった。どういった薬草があるか、どのあたりで採集できるのかギルドで聞いてこよう。もしも薬草採集のついでにできるような依頼があれば一石二鳥だしな。
朝が遅かったためか、ギルド内はそこそこ人はいるものの混み合っているほどではなかった。一番端の依頼掲示板がG、Fランク用の掲示板でその隣がE、Dランク用の掲示板だ。G、Fランク用の掲示板の前では15歳くらいから20歳前後の青少年たちが張り出された依頼票を眺めている。俺は昨日Eランクにはなったものの新人であることは紛れもない事実なのでまずはG、Fランク用の掲示板をのぞいてみることにした。
「当ギルドでは以下のようにギルド貢献ポイントを算定します。
買取金額金貨1枚に対して、ギルド貢献ポイント1
討伐報酬金貨1枚に対して、ギルド貢献ポイント1
その他報酬金貨2枚に対して、ギルド貢献ポイント1
指名依頼1件に対しギルド貢献ポイント1から10
G->F、10ポイント
F->E、20ポイント」
「赤葉草(あかばそう)の採集:常時依頼
赤葉草の葉を買取窓口に提出。
備考:赤葉草の葉の買取価格は通常重さ10S当たり250
「黄金蓬(こがねよもぎ)の採集:常時依頼
黄金蓬を買取窓口に提出。
備考:黄金蓬の買取価格は通常重さ10S当たり350Cになります」
「紅光茸(べにひかりだけ)の採集:常時依頼
紅光茸を買取窓口に提出。
備考:紅光茸の買取価格は通常10S当たり750Cになります」
「緊急のお知らせ!
東の丘陵地帯で複数のオークが確認されています。G、Fランクの冒険者の方は決して東の丘陵地帯に近づかないようご注意ください」
俺はG、Fランク用の掲示板からE、Dランク用の掲示板に移動して討伐の常時依頼を見たところ、ゴブリンとオークの討伐が常時依頼として張り出されていた。
「ゴブリン討伐:常時依頼
討伐証明としてゴブリンの左耳を買取窓口に提出。左耳1個あたり銀貨3枚」
もう少し右にズレたところにはオークの討伐、オーク肉の買取の常時依頼が貼られていた。
「オーク討伐、オーク肉の買取:常時依頼
討伐証明としてオークの左耳を買取窓口に提出。左耳1個あたり銀貨10枚。
オーク肉の買取単価は肉の状態によって上下します」
窓口を見るとマリアさんの前に人が並んでいなかったので、赤葉草、黄金蓬、紅光茸の特徴と自生していそうな場所をたずねてみた。
「おはようございます」
「オオヤマさん、おはようございます。何でしょう?」
俺の名まえを覚えていたのか。大したものだな。
「赤葉草、黄金蓬、紅光茸の特徴と自生していそうな場所を教えてもらえませんか?」
「少々お待ちください。そういえば昨日登録されて、即日Eランクに上がった方ですね?」
「はい。たまたまこの街に来る前に狩ったウルフの皮が売れたので」
マリアさんが図鑑のようなものを足元あたりから引っ張り出して、それでそれぞれの特徴を説明してくれた。
赤葉草は、茎も葉も赤紫で、葉には、のこぎり状にギザギザがあり、シソの葉に似ていると思う。
黄金蓬は、黄色の蓬。紅光茸は、形はシイタケだが、白地に赤色星形の模様が傘の表面に5カ所あり、白地の部分が暗がりで発光するということだった。
どの薬草も街から街道を東に3時間ほど進んだ先の丘陵地帯に多数生えているらしい。
「貼り紙にもありますが、昨日東の丘陵で複数のオークが徘徊しているのが確認されています。オオヤマさんは現在単独での活動ですよね? Eランクといっても単独でオークと遭遇した場合、危険ですので東の丘陵には絶対に近づかないでください」
誰かが討伐に向かったかもしれないが、昨日のことなら、まだオークがいるに違いない。運がよかった。
マリアさんは危険な場所に決して行くな。と、言った代わりに街中での荷物運びや工事の手伝いなどを勧めてくれた。もちろん俺はそういった仕事をするつもりはなかったので丁寧に断った。
「オークがいなくなるまで、他の用事を済ませてしまいます」
マリアさんに礼を言いってカウンターから離れた。
いかにもな理由なので、マリアさんは俺が危険な行動すると分かったと思う。なんであれ冒険者の行動は自己責任だから、マリアさんも諦めたのだろう。
採集と討伐はギルドの売店でポーションを調査してからだな。
そのあと雑貨屋に寄ってある程度の準備をしてから東の丘陵地帯とやらに行けばいいだろう。
東の丘陵地帯で赤葉草、黄金蓬、紅光茸の採集をしながら、オークを見つけたら刈っていけば一石二鳥だ。耳くらい手刀で簡単に切り取れると思うけど、耳の切り取り用にナイフがあった方がいいよな。そういえば昨日の連中から巻き上げたナイフがあったハズ。あの連中も少しだけでも俺の役に立つことができて本望だろう。
そういえばあの連中、この街から逃げ出したかな? どうでもいいけど。
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