第34話(超絶改稿)グレーゾーンに立ち向かう

そんなパーティーの後の翌日に俺達は佐藤さんに会っていた。

俺は自嘲する様な感じの佐藤さんを見る。

大変なんだろうな、と思いながら、であるが。

佐藤さんはブラック缶コーヒーを揺らしつつそれを飲みながら俺達を見る。


「今日は.....有難うね。来てくれて」

「.....全然。気にしないでください」

「そうですね」


近所の公園。

その場所に佐藤さんと俺と流が居る感じだ。

そして遊んでいる子供達を見ている。


そんな中に佐藤さんの小学3年生の妹さんも居る。

名前は佐藤小春(さとうこはる)ちゃんである。

発達障害のグレーゾーンの子供である。

ちょうど発達障害と認識されるかされないかの境目の。


「.....佐藤さんがどうしてこんなに働いているか分かりました」

「行政に認識されるのも大変だからね.....でも俺は小春を守りたいって思うよ。.....心からね。.....でもそれを悪用されてしまった。働くとは思った以上に大変だね」

「そうですね。俺達はまだガキですからそういうの分からないかもです」

「君は僕が思っている以上に大人だ。大丈夫だよ」


佐藤さんはそう言いながら缶コーヒーをリサイクルボックスに直しながら笑みを浮かべつつ俺を見てくる。

君は本当に大人の顔になったね、と言いながら、だ。

俺は首を振る。

それから、俺には何が大人か分かりませんよ、と否定をした。


「でもね。1つ言うと君は顔付きが変わったよ。俺と出会った頃と比べたらね」

「.....そうっすかね?.....有難うございます」

「君達、若者を見ていると、ああ。少年少女ってやっぱり成長が早いな、って思うよ。小春もそうだけどね」

「成程ですね」

「君達は確実に成長していると思うよ。安心して日々を過ごしたらいい」


そう言いながら佐藤さんは重たい腰を上げたままな感じで駆け寄って来た小春ちゃんを受け止める。

そして佐藤さんはその小春ちゃんを抱きしめながら頭をゆっくり撫でる。

俺はその姿を見ながら流を見る。

流も笑顔が弾けていた。


「可愛いよね。小春って。.....正直色々あったけどね。でも今となっては最高の俺の妹だよ」

「.....そっすね。心から信頼している感じが見えます」

「.....でも佐藤さん。若者って佐藤さんだってまだ20代ですよね」

「俺はもう20代だよ?.....それにこの先が見えないしね。だから若くはないよ」


佐藤さんはそう言いながら小春ちゃんを座らせる。

それから小春ちゃんの足に付いている泥とかをゆっくり取り除いていく。

そんな姿を見ながら俺は小春ちゃんを見る。

小春ちゃんはニコニコしながら俺達を見ていた。

とても可愛らしい様な笑顔だ。


「.....小春が自閉症の発達障害のグレーゾーンって指摘されたのは.....1歳の時だった。それまでまだ言葉が出なくてね。歩けなくて。.....それで何かおかしいって思ったんだ」

「.....そうだったんですね」

「幸いにも重度ではなかったけど。だけど人との関わり合いが苦手でね。.....さっきも見ていて分かったかな。.....小春が1人で居たい感じだったの」

「.....」


苦笑しながら佐藤さんは小春ちゃんの靴を整える。

そうしていると流が胸に手を添えた。

そして、私ですね。将来.....社会福祉士を目指しています、と告白する。


俺はその言葉に驚きながら流を見る。

そんな事を宣言する様に言うとは、と思ったのだ。

今まで見られなかった。


「.....社会福祉士.....そうなんだね。流さん。君はとても優秀だ。だからきっとなれるよ。社会福祉士にね」

「はい。絶対に私.....困っている人を助けるって決めたんです。.....横に彼が居るから」

「そうだね。瞬くんが居るから大丈夫だね。きっと」

「私は困っている人が居ない世界を作りたい。.....きっと私のお父さんも望んでいます」

「.....君は.....俺と似ているね。頑張る所が。.....俺も父親を失っているから。心臓発作でね。育英会を利用した経験がある。お互いに頑張ろうね」


佐藤さんはそう言いながら頷く。

俺はそんな言葉を力説する流を驚きながら見る。

そして流は、私は絶対に小春ちゃんも佐藤さんも救ってみせます、と宣言する。

何かちょっと寂しい感じがした。

それは流が大人になっていっているのが、であるが。


「それにしても社会福祉士か.....いい職業を選択したね」

「障害者施設に行ったんです。この生かされた命は.....きっとこの為にあったんだって」

「そっか。.....自殺未遂をしたって聞いたけど.....鞠のせいで。.....その裏にはそういうストーリーがあったんだね」

「.....はい」


話を聞きながら小春ちゃんは俺達を見渡す。

小春ちゃんは何の事か分かってない様だったが。

だがゆっくりと手を差し伸ばした。

それから流の手を握る。

そして、おまじない、と切り出した。


「.....小春.....滅多に喋らないのに」

「.....小春ちゃん。おまじないだね?有難う。私.....そのおまじないで頑張る」

「.....驚いたな。奇跡すらも起こすんだな。君の妹さんは」

「はい。それが流なんで」


小春ちゃんと流のゆびきりげんまんを見ながら。

俺と佐藤さんは暫くその光景を見ていた。

そして空を見上げる。

今日の空は.....雲一つ無く容赦なく晴れ渡っていた。

それがまた嬉しく感じる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る