第32話(超絶改稿)言葉の重み

春樹は陽毬を好いている様だ。

陽毬の事を心より大切にしている様である。

俺はその事に少しだけ揺れる感情がある。

だけどそれもまた人生か、と思いながらコンビニのアイスを見る。

色々なアイスがあるんだな、と思う。


「何だか美味そうなアイスばっかりだな。例えばこのキャラメルサンドとか」

「たっけぇアイスじゃねーか。ブランド有名メーカーだぞ」

「ははは。まあそうなんだけどよ」

「良い加減にしろよ?300円もするぞそれ」


そんな感じで会話をしながら俺達は適当にアイスをカゴに入れる。

そしてお菓子も入れてからそのままレジに向かう。

ジュースもついでに、と思いながら。

それからレジを打ってもらおうと店員を読んで俺はビックリする。

何故なら佐藤さんが居たから。


「佐藤さん?」

「あ。こんにちは」

「何で佐藤さんが?」


不思議そうに聞いていると春樹も目をパチクリした。

この人が佐藤さんか?、という感じで。

すると佐藤さんは、実は俺の家は貧乏でして、と告白してくる。

レジ打ちをして商品をスキャンしながら。

俺は、!、となる。

お金を出しながら、そうなんですね、と複雑な顔をする。


「.....でも今は幸せです」

「?」

「鞠のアホが捕まったみたいですから」

「あ。聞いたんですか?」

「テレビのニュースで知りました。極悪犯が捕まったと」

「.....ですね」


レジ打ちをしながらその手が止まる。

それから、俺はアイツに心から反省してほしいです、と切り出す。

そして、俺の幸せも食い潰しましたから、と目を逸らしてお菓子に目線を合わせる。

俺は、それはどういう意味ですか、と聞くと。


「アイツは成金です。お金は無限にあるものと思っている。だから貧乏だったウチの家族も俺も手駒にしました。だけど真面目に生きるって決めて逃げました」

「.....そうだったんですね」

「成金で人使い荒くて最低。.....救いようが無いんですけどね」

「はい」

「でも俺は期待しました。アイツが反省するって」


今はそんな感情すら湧きませんけど、と佐藤さんは苦笑する。

すると春樹が、佐藤さん、と聞く。

その言葉に、はい、と春樹を見る佐藤さん。

アイツに期待しているんですか?、と春樹が聞く。


「.....今は無いですよ。.....でも昔はありました。成金であっても変わるって。でもギャンブル依存症と同じですね。残念ながら金遣いの荒い人は直りませんねなかなか。だからこそ今は捕まってくれてホッとしています」

「成程です」

「.....すいません。嫌な話をしてしまって」

「いえ。まともに話さないといけない話でしたから」


それから佐藤さんは、1567円です、と言いながら俺から2000円を受け取りそのまま精算してから小銭を俺に返してくる。

俺はその佐藤さんの顔を見る。

佐藤さんは疲れた様な。

ホッとした感じの様なそんな顔をしている。


「鞠。アイツは幼馴染で俺は今まで鞠に突き動かされる様なそんな感じの人生でした」

「.....ですね」

「刑務所で反省して表に出てきてほしいですね。.....でも正直言って一生出て来なくて良いんですけどね。俺としては。周りを傷付けすぎていますから」

「そうですね。俺としてもそれは思います」


佐藤さんは台に手を添えながらゴミを払う。

それから俯いた。

そして、でも俺はどうしたら良いんでしょうね。.....まだ期待している自分が居る、と告白してくる。


俺はその言葉に、そうなんですね、と複雑な顔をする。

そうしてからハッとして商品を渡してくる佐藤さん。

御免なさい。余計な事ばかりで、と言いながら。

俺は首を横に振る。


「気にしないで下さい」

「有難う御座います。多分.....俺自身が疲れているんでしょうね」

「.....そうですね」

「瞬さん。それから春樹さん。人生を謳歌して下さい。俺みたいなゴミクズにならないで下さいね」

「佐藤さん.....」

「俺は最低最悪です。.....壊れていますから」


言いながら佐藤さんは盛大に溜息を吐いてから、仕事に戻りますね、と笑みを浮かべてから俺を見る。

その顔は本当に疲れ切っていた。

大丈夫なのだろうか。


「.....佐藤さんも疲れてんのな。やっぱり」

「それはそうだろうな。.....それに貧乏だって話だし」

「母子家庭か.....な。それか父子家庭とか」

「さあな。そこまで聞く様な人間じゃない俺は」


そう思いながら佐藤さんの背を見る。

すると佐藤さんは、俺の事なら大丈夫ですよ、と前を見ながら作業をしつつ話す。

それから振り返ってから俺達に笑みを浮かべる。

そして、俺は瞬さん達より.....マシな領域に居ますから、と柔和になる。


「少しだけでも元気出ますしね。全ては瞬さん達のお陰です。本当に有難いです。鞠を捕まえてくれて。本当に感謝しかないです。頑張ってくれて有難う御座いました」

「.....鞠は傷を負ったんで。.....それを考えると.....」

「彼にはそれも荒治療の一つです。誰が刺したか分かりませんけどね。良かったです」

「.....」


俺はその言葉を重く受け止める。

佐藤さんは.....それだけ鞠を憎んでいる。

だけど変わってほしかったとも思っている。

そう考えると。

やけにその言葉には重みが感じられた。

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