第27話(超絶改稿)命の大切さ

鞠がナイフか何かで刺された。

それは.....春樹がSNSに救助の連絡をした影響だ。

その影響で鞠は居場所を特定されて最悪の方面に陥った様だ。


俺はそれらの事を、自業自得、と思っていたが。

だけど.....何だか可哀想に思えてきた。

これだけ陥ったのが、だ。


「瞬。.....大丈夫」

「.....大丈夫は大丈夫だけどな.....だけど何で鞠はずっとこんな嫌がらせな事をしてきたんだろうな。天罰が降るって思わなかったのか」

「.....そうだね.....」


俺達は警察署から帰宅しながら.....空を見上げる。

因みに陽毬とご家族は警察署に呼ばれている。

その為、用済みになった俺と春樹は帰宅していた。

春樹に関しては.....正当防衛としての立証になる様だ。

まあ情報を変えなくちゃいけないけど。


「.....ねえ。瞬」

「何だ」

「私って不幸を招いているのかな」

「.....それは無い。.....断じてない。.....これはアイツが招いたものだ。鞠が」

「そうだったら良いんだけど。.....何だか疲れちゃって」


そう言いながら悲しげな顔で流は俺を見てくる。

俺はその顔を見ながら溜息を吐く。

それから、流。ちょっと寄りたい所があるんだが、と告げる。

そして俺は流の手を握る。


「.....何処に行くの?」

「.....障害者施設」

「.....え?.....え?!」

「実は俺は学校の勉強の一環で行ったりしたんだ。その場所に.....それでその職員の人達と仲良くなってな」

「.....そうなんだ.....」


お前がいかに恵まれた身体をしているか見てほしい。

そして必死に生きている人達の姿を見てほしいんだ、と俺は流を見る。

流は考え込む。

それから、分かった、と返事をした。


「.....行ってみようか」

「ああ。サンキューな」


そして俺達は障害者施設。

つまり.....障害者就労支援施設に向かった。

俺は職員の人に事前に連絡を入れてから.....滅多に貰えない見学許可を貰った。

それから俺は職員の中年男性の道部さんに挨拶をする。

丸眼鏡の優しい男性だ。


「今日は宜しくお願いします」

「お世話になったね。あの時は。.....今日は来てくれて有難う」

「.....いえ。俺も世話になりました。あの時は」

「.....今日は.....其方さんは?」

「.....俺の大切な妹です。.....名前は流って言います」

「ああ。.....そうなんですね。.....宜しく流さん」


はい、と言いながらオドオドしながら俺を見る流。

そんなに警戒しなくても大丈夫だ、と俺は流に言い聞かせる。

それから俺は目の前を見る。

すると数多くの職員さんが挨拶をしてくれた。


「.....暖かい場所だね」

「.....そうだな.....まあ確かにな」

「まるで日が当たる場所だね」

「そうだな」


そして俺達は名前札をもらって中に入る。

そこでは数多くの方が就労していた。

小さな作業だが一生懸命に頑張っている。

俺はその姿を見ながら、変わらず、だな、と柔和になる。

それから横に居た流を見てみる。


「.....」


流は真剣な眼差しで立っていた。

そして様子を伺っている。

先程とは打って変わっての感じだ。

俺達はあくまで刺激しない様にゆっくりと見渡す。


すると道部さんが、こうやって若い人達が来てくれる事は本当に嬉しい事ですよ、と笑顔になりながら、興味を持ってくれる事が一番ですから、と話した。

それから前を見る。

そうしていると流が問うた。


「.....この方々は.....その.....」

「障害を持っている方々ですが.....私にとっては息子と娘の様な存在です」

「.....そうなんですね」

「.....可愛いですよ。皆さん。.....そう言っては駄目なのかもしれませんが」

「.....」


流はしっかりと前を見据える。

すると道部さんが、作業をやってみませんか、と向いてくる。

俺達は顔を見合わせてから俺が、やってみるか、と笑顔になる。

流は、そうだね、と返事をする。


「.....じゃあ宜しくお願いします」

「はい。.....じゃあティッシュにチラシを入れる作業なんですが.....」

「分かりました。.....私もやってみます」


それから俺達は暫く作業をした。

障害を持つ方も.....知的障害を持つ方も。

俺達に柔和に接してくれた。

優しく接する流。

その事に俺は笑みを浮かべながら作業を進めた。



「今日は.....有難う御座いました」

「はい。お疲れ様でした」

「俺からもお礼を言います」

「.....いえいえ。有難う御座います」


施設の玄関前で俺達はそう話す。

するといきなり道部さんが、流さん、と向いた。

俺は、?、を浮かべながら道部さんを見る。

道部さんは、何か悩んだ顔をしていましたね、という感じの表情になって言った。


「.....分かるんですか?」

「.....この場所に見学に来られたのも.....何かあられるんでしょう。.....今日の見学はどうでしたか?」

「.....生きようって思いました」

「.....流.....?」


私、素直に言います。

死にたかったんですが.....。

これから.....必死にどんな事があっても優しくて生きようって思いました、と道部さんに向く流。

それから、色々あったんです、と言葉を発する。


「.....そうですよね。.....その事は瞬くんから聞いてます。今日来た貴方は.....顔が複雑だった。.....だけど今は晴れやかだ」

「.....分かるんですか?」

「分かりますよ。.....でも私は医者では無いです。.....だから全ては分かりません。.....でも貴方は、もう大丈夫、っていう顔をしています」


私はこう見えても社会福祉士です。.....だからまあ.....安心して下さい、とは言えませんが.....でもきっと大丈夫です。.....もう貴方は1人じゃ無いですから、と柔和になる道部さん。

俺はその言葉に流を見る。

流は、はい、と笑みを浮かべて返事をしていた。


「.....山あり谷ありの.....今の人生だと思います。.....でもいつかはきっと幸せがありますよ」

「今日を生きているだけでも感謝ですね」

「.....そうです。今日を感謝して生きて下さい。この先も」

「.....有難う御座います。今日会えて良かったです」


そして流は頭を下げる。

俺も頭を下げて見守られながら障害者就労支援施設を後にした。

それから帰宅する。


確かにそうだな。

晴れやかになっている。

流の顔が、だ。

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