第21話(超絶改稿)周りへの信頼を取り戻した流(下)

早乙女雄大(さおとめゆうだい)さん。

享年28歳。

流の.....自殺した父親の名前である。

ビルから飛び降りて自殺した。


俺は目の前の山子さんから全ての真相をその時に知ったのだが。

何故自殺したのか。

それは.....今でも分からないそうだ。


「.....私と雄大が出逢ったのは結構前。.....私たちが学生だった時。その時に出逢ったの。それは運命の出会いだって思ったわ。雄大と私は惹かれあって.....そのまま結婚した。それから生まれたのが流だった」

「.....」

「雄大は良い旦那さんだった。でも今回はあの子の為を思って再婚したんだけど.....負担だったのかしらね。流はお父さんが大好きだった.....。だけど雄大は自殺した。.....今でもその唐突な自殺理由が分からないけどそれもあって流は歪んでしまったのよ」

「.....そうだったんですね」

「ええ。.....決してあの子もあんな態度を取りたい訳じゃない。だけど2回も裏切られたの。だからあの子は.....男の人を嫌悪している。でもその中でも流は自分のお父さんが自らのせいで死んでいると思っている。私の為を思って磨いている。そこら辺の認識がおかしくなっている。.....私も何度も止めた。.....だけどこの癖は治らなかったの」


正直に言って.....流がやっているのはきっと自らへの戒め.....かもしれないわ、と沈黙する山子さん。

俺はその姿に、分かりました、と答える。

それから、え?、と言う山子さんを見ながら、俺、アイツと仲良くなります、と切り出した。


「.....このままじゃいけないですよ」

「.....でも.....」

「俺に任せて下さい」


とは言っても小学生の俺に何かが出来るとは思わなかったが。

俺はそれでも.....流の行動を止めさせないと、と思って動き出した。

それから何日か経過してから流は完治してから。

そのまままた強迫行動を始めた。

俺はその姿を見てから襖を開ける。



「.....何でしょうか」

「.....流さん。.....その行動はお父さんに捧げる意味で.....お母さんの為を思ってやっていたんだね」

「.....そうですね。.....それが何か」

「.....俺もさ。.....母親を失っている。.....飲酒運転の車に跳ねられてな。それも俺の送り迎えの時に」


流の出血する磨いていた手が止まる。

それから俺を見上げる。

俺はその姿に、人ってもんはあっという間に死ぬよね、と告げる。


そして俺は胸元を開けてからネックレスを見せる。

俺に似合わない女性ものの三日月型の金色のネックレス。

これは事故死する前に母親が身に付けていたネックレスであり薄汚れている。

黒く固まった血液が付着しているのだ。


「.....その.....まさか」

「.....そうだな。.....まあ人に見せたのは初めてだけど」

「.....」

「君とはえらく状況が違う。そして失った状況も違う.....だけど.....俺は君。流さんと分かち合える気がする」

「.....」


流は手を止めたまま俺を見てくる。

そしてその姿に俺は胸元のボタンを留めてから、挨拶しても良いかな、と俺は流に微笑んでみる。


すると流はその時.....その載っていた座布団から退いてくれた。

それから俺を見てくる。

俺は手を合わせる。

そうしているとこんな声がした。


「.....何で.....ここまでしてくれるんですか」

「.....何でって.....どういう意味かな」

「これまで出会った男はみんな獣でした.....そして裏切りもあった。だけど貴方は違う。これまで出会った人の中で.....最も印象に残ります」

「.....俺は君を助けたいって思う」


まさかの言葉だったのだろう。

目を丸くした。

助けたいってどういう意味ですか、と尋ねてくる流。

俺はその言葉に手を合わせるのを止めてから仏壇を見上げてそして、俺は君の様な人を放っておけないから。家族だから、と言葉を発した。


「.....」

「.....俺としては君のやっている行動は無意味とは言わない。.....だけどもう充分に罪は償えていると思う」

「.....貴方は本当に不思議な人ですね.....。私を抱えて病院まで連れて行ったり。.....おかしな人です」

「.....そうだね.....俺はおかしな人だ」


それからクスクスと笑う俺。

するとその姿に流も、ふふ、と笑ってくれた。

そして仏具を置いてから。

俺を見上げてくる。


「私.....男の人はまだ信頼してないです.....でも。.....貴方となら上手くやれそうな気がします」

「そいつは結構だね。俺としても君とは上手くやりたい」

「.....信頼はまだ出来ないです。貴方の事は。.....でも私は.....貴方と信頼を分かち合える気がします」


それから流は父親の写真立てを見てから俺を見る。

そして、これから家族として宜しくです、と頭を流は下げた。

俺は初めて見せた行動に、勿論だ、と流れに返事をしてからこう言う。

流、って呼んでも良いかな、と。


「.....はい。じゃあ私は貴方の事を、お兄ちゃん、と呼ばせてもらいます」

「それはそれで何かこそばゆいな」

「.....?.....駄目ですか?じゃあ何と呼べば」

「.....そうだな。でもお兄ちゃんで」


それから.....俺達は5年ぐらい一緒に暮らしている。

因みにだが流の強迫行動。

これは当初はまだあったが。

でも徐々に俺達に笑顔を見せてからしなくなった。


今でも完治した訳ではないだろうけど。

止めてくれた事に意味があると。

俺は何も言ってない。

そしてたまに磨くがそれは止めてない。

流を信じているから。

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