第19話(超絶改稿)先に〇〇された方が勝ちって事で
陽毬の家に泊まる事になった。
思えば陽毬の家に泊まるのは相当ぶりである。
つまり最後に泊まった日から3年以上は経過している。
正直言ってこんな事で泊まるとは思わなかったが。
「お兄ちゃんは私達が止める。責任持って。.....だから安心してとは言えないけど。.....絶対に止めなくちゃいけないって思っているから」
「お前の言う通りだが。.....決して無理はするな。鞠のやった事は絶対に許せないけどそれだけは約束してくれ」
「そうだね。瞬。有難う」
そんな感じの会話を陽毬の部屋でする。
思ったけど女子の部屋だ、と思ってしまう。
ぬいぐるみとか置かれていて.....とても可愛らしい部屋だ。
赤くなってしまう。
「む。瞬。私の部屋に入ったことあるでしょ」
「あるけど別格だろこれは。流さんや」
「瞬の変態」
「変態て」
ツーンとする流に俺は苦笑いを浮かべる。
それから流を見ていると。
陽毬が、良かった、と呟いた。
俺は、?、を浮かべながら陽毬を見る。
「元気そうだから.....良かった」
「.....陽毬.....」
「本当はね.....泣きたい気分だから」
「.....陽毬さん.....」
「私が何も出来なかったのが.....悔しくて」
涙を浮かべて顔を覆う陽毬。
俺はその姿を見ながら背中を摩る。
こういう事だ、と流を見る。
流は眉を顰めて横を見た。
「.....流。死んでほしくないんだよ。みんな。.....お前にな」
「.....瞬.....」
「だからこそ生きてくれ。流」
「.....今は何も考えれないけど.....分かった」
流は頷きながら俺を見てくる。
そして複雑な顔をしていたがそれを止めてから陽毬の手に自らの手を添える。
それから涙を浮かべた。
有難う。陽毬さん、と言いながら。
私は.....生きようって思うから、とも。
「.....流。その意気だ」
「流ちゃん.....頑張って生きようね。流ちゃんは瞬には私が居れば良いって思っているみたいだけどダメだよ。貴方も居ないと」
「.....はい」
そんな会話をしていると陽毬が、さて、と手を叩いた。
それから俺をニヤッとして見てくる。
先程とは打って変わっての表情である。
俺は、!?、と思いながら陽毬を見てみる。
「取り敢えず恋バナしようか」
「恋バナ!?」
「それは.....何でいきなり?」
「流ちゃんが死んでも良いけど私がイチャイチャしちゃうし貰ってしまうよ?瞬を」
「.....!」
俺の頬に人差し指を添えてくる陽毬。
真っ赤になりながら、おいおい、と言うと陽毬は何を思ったか。
俺を押し倒す。
まさかの展開に俺は、な、何をしている!!!!?、と大慌てになるが。
陽毬は見下ろす様にしながら俺を見ていた。
「.....ひ、陽毬さん!?」
「私は平気でこんな事が出来るんだよ?死んだら何も出来ないよね」
「お前な!?」
「.....えへへ。動かな.....」
「ダメェ!!!!!」
陽毬を押し除ける流。
それから真っ赤になる流。
俺はその様子に何とか逃げ出した。
そして陽毬を見ると。
陽毬はニヤニヤしたまま俺達を見ていた。
それから数秒後に落ち着いた顔になる。
「.....という事だよ。流ちゃん。だから私と決着をつけるまで死んじゃダメだよ」
「陽毬さん.....」
「私はいつでも狙っているから。.....瞬をね」
「陽毬.....」
それから埃を払ってから立ち上がる。
そしてニコニコしながら俺達を見てくる。
すると陽毬はこう切り出した。
決めた、と言いながら。
「.....私、次の自分の誕生日までに瞬を貰うよ」
「.....!.....陽毬さん」
「瞬から好かれてキスされた方が勝ちだよ。流ちゃん」
「.....でも.....」
「うん。唇はマズイから。だから頬にキスをそのまま受けた方が勝ちって事で」
言いながら陽毬は嬉しそうな反応を見せる。
俺はその姿に真っ赤になる。
ど、どういうルールだよ!?、と思いながら。
だがこれに、上等ですよ、と流が参戦した。
それから俺達を見る。
「どっちが先に瞬にキスされるかですね」
「そうだね。.....どっちが先に好かれるか。それを勝負しよう」
「.....」
「私の誕生日は11月1日。頑張ってみせる」
「.....お前ら。俺の意見は無視か」
だって瞬はへっぽこだから、と苦笑いの陽毬。
すると流は、そうですね。でもやる時はやりますよ。瞬は、と話す。
俺はその姿を見ながら、褒めてんのか貶しているのか、とまた苦笑した。
だけど.....何か知らないけど楽しいもんだな。
今が一番楽しい気がする。
するとこれに気が付いた流が聞いてくる。
「どうしたの?.....瞬」
「どうもしてない。.....ただ今が楽しいなって思ってな。.....流」
「.....そっか」
「流。お前が死なない様に努力するから」
「.....うん。私も.....私自身を安定させるよ。なるだけね」
もう私は負けないと思うから、と真っ直ぐに俺を見てくる流。
俺はその言葉に、ああ。信じている、と返事しながら陽毬を見る。
すると陽毬は、じゃあこの後はどうする?、と笑顔になる。
俺はその言葉に、アルバムでも観るか、と話した。
それ良いね!、と2人も納得してくれる。
「.....じゃあ次はアルバム鑑賞だね」
「そうだな。流」
「私は飲み物をとってくるね」
そんな感じでキャイキャイ騒ぐ俺達。
まあ何というか幸せな気分だった。
今だけかもしれないけど。
でも.....鞠が捕まるまでの辛抱だ。
頑張ろうと。
そう思えてきた。
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