第17話 グランモール②
男陣とは別の場所へ行っていた女陣四人は、沢山の服が飾られた「フロクニ」に来ていた。
「アオイはどういうの買うの?」
アイは彼女にそう聞くと、アオイは困った表情になる。
「うーん、私あまり服とかの知識ないからなぁ」
アオイがそう呟いた時、一人だけ明らかに
「じゃ、じゃあさー。誰が一番の服のセンスがあるか勝負しなーい?」
何かを企んだ顔を浮かべるカタリナは言って、一つの提案を出した。
そんな彼女の様子を見たアオイは、心配した顔で「大丈夫? なんか顔が変になってるよ?」と語り掛けた。
「大丈夫だよ、アオイしゃん。グヘェー、このカタリナ・グライアスに体調不良などないのだぁ〜」
そう言うカタリナは何時もとは違い、血眼となった目と、ヨダレを垂らし、手にはカメラを持っていた。
グヘヘ……私の名はカタリナ・グライアス! あのグライアス家の! ——落ち着けカタリナ! 私はこのチャンスをずっと待っていた! そう! リュウとカイトがいなくなる瞬間を! あの二人がいない事でこのグランモールでする計画を邪魔する者はいない! さぁ! 撮るぞ美女達の写真を!
「ならいいんだけど……あ、今さっき勝負とか言ってたけど……どういうとこと?」
アオイがそう言うと、アイは「勝負、て何するの?」とカタリナに聞いた。
すると、カタリナはニヤリと笑い、
「それはこの中の誰が服のセンスがあるかを決める! いわば! コーディネート対決さ!
そしてルールは簡単! 三十分以内で自身が気に入った服を持ってきて、一人一人試着室で順番に着替え、それを全員が一から十点満点で採点するのさ! そして点数の合計点が一番高かった人は! 私とその格好でデートしてもらう!」
「「「エッ」」」
突然として始まったコーディネート対決。
一通りの説明を終えたカタリナは、ポケットからスマホを取りだした。
「じゃあ制限時間内は三十分、一分前になったらみんなにメールを送るから」
彼女はそう言うと、それを聞いていたアオイ達は困惑顔で言葉を並べた。
「「「なんで私の連絡先知ってるの?」」」
そうカタリナに問うが、彼女はその質問を無視し「スタート!」と言って、コーディネート対決の幕を開いたのだった。
そして、アオイ達は彼女の態度に疑問に思いながらも、互いに分散する事を決め、己に見合う服を探す旅に出た。
アブねぇ、危うく私がグライアス家の名前に泥を塗る所だった……あ、この勝負わたしも入ってたんだった。
※ ※ ※
別々に分かれた彼女達は、自身に似合う服を選び終わると、一同は試着室前に集合した。
「ところでカタリナ、最初は誰にするの?」
アカリの質問に彼女は返答した。
「もちろん私からだよ、だって途中からだと君たちの可愛い姿が撮れな——見れないからね!」
そう言って、カタリナはノリノリの様子で、試着室に入った。
※ ※ ※
しかし、私も一人の女! 多少の気合いを入れなければならない! 女として! いや! カタリナ・グライアスの意地として!
カタリナは着ていた服を脱ぎ、水色のブラとパンツ姿になる。
そして、自身の長い髪をヘアゴムで結び、ポニーテールの髪型にすると、自分が選んだ服に着替え、部屋から出た。
※ ※ ※
バサッと試着室のカーテンを開けた彼女は、気合いの入った表情で立っていた。
そこに居たカタリナの服装は、薄い青色のTシャツ、
その身なりを見たアオイは「八!」と評価すると、次にアイとアカリは「「七」」と口を揃える。
「やったぁ! えーっと……二十二か!」
彼女は喜びながら言うと「んじゃ次は私がやる」とアカリが名乗りを上げた。
「分かった次はアカリちゃんね。ぐへへ」
カタリナは不敵な笑みを浮かべてそう告げて、再び試着室に戻った。
数分後には元の姿になって彼女が、戻ってくる。
そして、今度はアカリが試着室に入室して行った。
※ ※ ※
次にアカリが部屋から出てきた時の格好は、白と黒が入ったシャツと、肌色のショートパンツをきめ込んでいた。
アカリ 総合点数 二十五点。
その後、順々とアオイ、アイの評価を終えると、カタリナは合計点数順位の発表をした。
「ゴホン! それでは順位を発表するね!
第一位! アオイちゃん! そして同率二位! アイ&アカリちゃん! そんで私が三位……ま、みんなのきゃわいい写真が撮れたし! 結果オーライ!」
そう言って、彼女は少し悔しい表情を浮かべる。
が、その数秒後には赤らめた頬をして、カメラ内の写真を確認していた。
自身が選んだ服を買い終えたアオイ達は、次に行く場所を考えていた。
「んじゃ次はどこに行くの?」
アカリは皆にそう質問すると、アイは「喉乾いたしスタファ行かない?」と提案する。
「そうだね」
「よっしゃあ! 早く行こう!」
「分かった」
アイの提案を承諾した彼女らは、そう返事を返す。
そして、女陣は次なる場所『スターファックス』に向けて歩き出した。
※ ※ ※
一方、本屋を後にした男陣らは、リュウが望む場所に行き、最終目的地であるゲームセンターに辿り着いた。
そして、タツキたちが辺りを散策しうとした時、別々で行動をしていたカタリナ達と合流する。
すると、彼女はニヤリと笑う。
「ねぇねぇ、リュウー」
「……」
カタリナはからかうように彼に近づくと、リュウにカメラ内の写真を見せる。
「どうどうー? 良いでしょ〜! アオイちゃん達の可愛い可愛い、お写真」
そんな彼女の態度にリュウは、不機嫌そうな顔をする。
「べ、別にそんなの見せられても! いつもド変態なカタリナだな、て思うだけスよ!」
彼の発言にカタリナは歯ぎしりを立てると、リュウの顔に顔を近づける。
「な、何がド変態だ! 一つだけ言っとくが! 私は紳士だ! 紳士な人間とよべ! そこら辺おぼえとけ!」
その言い合いに聞き呆れたカイトは、二人に近づこうとする。
「カイトさんは怖いんで! あっちに行っててください!」
「カイトくんは怖いから! あっちに行っててください!」
二人は言葉を揃えてそう言った。
カタリナ達の指揮をしていたカイトが撃沈し、残された男女は、ただひたすらに二人の喧嘩を
「あーもういい! リュウ! 決闘だ決闘!」
カタリナが強気で言うと、リュウは「上等スよ!」と言い、その決闘に申し込む。
ま、マズイ! このままだと二人が! どうにかしないと! ——ッ!?
「「クレーンゲームで勝負だ!」」
「へ?」
あまりの意外な決闘内容に、タツキは拍子抜けた声を出す。
「ルールはどうするスか? チーム戦スか?」
リュウは余裕そうな顔で彼女に聞くと、カタリナもまた強気な態度で、
「もちろん! チーム分けは……今日一緒にここを巡回したメンバーてことで! あとルール……こうするよ!」
カタリナはそう言うと、一通りのルール説明をした。
なるほど要約すると「限られた金額でどれだけ景品を取れるか」か、しかもその金額が三千円……僕クレーンゲームやった事ない……。
突然始まったクレーンゲームに、タツキは不安そうな顔を浮かべる。
「よーい! スタート!」
カタリナはそう言って、決闘の幕を開けた。
最初はタツキたちの男チームが優勢になりながらも、その後を追い上げるように女チームが上り詰めてくる。
最終的に[クレーンゲーム決闘ゲーム]をした男女は、なんやかんや対抗心を燃やしながらも、引き分けという事で楽しくその戦いを終わらせた。
※ ※ ※
ことを終えたタツキたちがグランモールから出た頃には、外はオレンジ色になり、彼らを明るく照らしていた。
「うーん楽しかった! またアオイちゃん達と遊びたいな!」
そう言うと、カタリナは背伸びをする。
そして、その姿を見たアオイは「じゃあ遊べる日があったら、私の家で遊ぼうよ」と言うと、カタリナは顔を真っ赤にし「うひょー」と喜んだ。
「タツキ〜、今日一緒に帰ろ?」
と言って、タツキの右手を取るアイ。
「——ッ……うん、良いよ」
笑顔で彼はそう言うと、彼女はタツキの手を強く握る。
「タツキ……ちゃんと私の手を握りなさいよね?」
頬を赤らめたアイは、彼に聞こえない程度で呟いた。
タツキとアイの姿を遠くで見ていたリュウは「青春だなぁ」と言う。
その時、リュウの近くにいたアオイは、涙を浮かべ、
「どうして貴方はそっち側なの? 本当に……どうして……」
「あ、思い出した。アカリ、たしか……あれ?」
カイトは彼女に何かを聞こうと彼女の方へ振り向くと、そこにはアカリの姿はなかった。
「カイトさん、アカリならもう帰ったスよ」
リュウがそう言うと、カタリナは「ハヤッ!」と驚いた表情で言った。
「んじゃ、もう日が暮れ始めてるから、ここで解散しない?」
カタリナが言うと、全員はその場で解散し、自身の自宅へ帰って行った。
※ ※ ※
タツキがカイト達と遊んだ翌日の事。
この日の昼は、昨日と同じ位の空模様で、今日も普段と変わらない日常を、彼は送るはずだった。
タツキがゆっくりとソファーでくつろいでいると、インタホーンが鳴った。
「ごめーん、タツキ出て〜」
「分かった」
アイはそう言って彼に頼むと、タツキは「はーい」と言って、玄関の扉に手を掛け、ゆっくりと扉を開けた。
すると、薄暗い玄関に、外の明るい日差しが入る。
「——ッ!?」
その扉の向こうに立っていたのは化け物だった。
二メートルはあるであろうその身長、両手には見覚えのある大砲、頭には兎のような耳、身体中には大量手榴弾を纏った、ニヤリと笑う疑神が立っていた。
「あ、あ、あ……」
言葉も出ずその場で、硬直するタツキ。
「どうしたの? タツキ」
リビングの方から彼を心配して来るアイ。
「来ちゃ……来るな……来るな」
「どうしたの? タツ——」
彼女がリビングの扉を開け、タツキの方へ顔を覗かせた時だった。
「アイ! 来ちゃダメだ!!!」
その時だった、疑神は不敵な笑みを浮かべると、大砲の発射口からエネルギーのようなものを溜める。
タツキは全速力で彼女の元へ駆けつけ、アイに覆いかぶさるようにすると、
「
「バン」
奴がそう言うと、タツキ達が住んでいた家と、その後方にあった住宅街もろともを吹き飛ばした。
轟音と爆風にあおられ、残ったのは散乱した瓦礫だけだった。
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