華月堂の司書女官 ~消えた『宝玉真贋図譜』と凛冬殿の麗人~

桂真琴@12/25『転生厨師』下巻発売

序 みだれそめにし


 はじめてあの人を見た日、すべてが光に満ちた。


 この身にはつらいことや苦しいことばかり。

 夜には褥で祈る。どうかこのまま眠って、永遠に目を覚まさないように、と。

 けれどもまた日は昇り、苦しみは巡る。


 そんな毎日だけれど。

 

 あの人を一目、見ることができたら。

 あの涼やかな声を聞ければ。

 すべてをおおう灰色の幕は、すべてきれいに消えていく。


 光満ち、世界が鮮やかな色に染まる。


 あの人のためなら、どんなことだってする。

 そう、どんなことだって。


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