華月堂の司書女官 ~消えた『宝玉真贋図譜』と凛冬殿の麗人~

桂真琴

序 みだれそめにし


 はじめてあの人を見た日、すべてが光にみちた。


 つらいことや苦しいことばかりの毎日。

 でも、あの人を見ることができたら、声を聞ければ、すべてをおおう灰色の幕はすべて消えていく。


 世界が鮮やかな色に、染まる。光がみちる。


 あの人のためなら、どんなことだってする。

 そう、どんなことだって。


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