【第五章】わたしの皇子さま〜一緒にダンスを踊りましょう
part5:
「つい、お
いつもの見慣れた星空で、アストロはいつものように奇妙なことを呟いた。
でも、いつもより具体的な奇妙さに、わたしは首を傾げながら「ん?」と問いかけた。
「愛依ちゃんの小学校で今日、
「えぇっ、文化祭に来てたの!?」
驚いた。
「あれが人類の
「おおげさだよ。あれは普通のコーヒー牛乳よ。ハチミツも垂らしているから甘かったでしょう……、」
そう笑いかけて、「あれ?」と疑問が頭の中を駆け巡った。
アストロは中性子星からワープホールという技術をつかって通信で話している。以前「地球から、うんと離れた宇宙の星にいる」
……そう言ってたよね。
「愛依ちゃんの理解にあわせて地球に存在する技術で説明したにゃ。
「えーっ、と?」
「いま愛依ちゃんとおしゃべりしている黒い
「わたし黒猫のお客さんが来たなんて、誰からも聞いてないわ」
「さすがにこの
アストロが「ぱっ」と変身した。現れたのは疲れた顔をして、お腹の出た中年のおじさんだった。パパとは正反対のお餅のような躰をしている。
なんで、この姿を選んだんだろう。
それにしても、このおじさんが小学校の
「ふふっ」
可笑しくなって声が出た。
「なんにゃ?」
「お客様係はね、大葉くんがやっていたのよ。彼、きっと驚いただろうなぁって」
「ああ、あの太った男の子が大場太陽かにゃ。大丈夫にゃ、見ての通り人間への
「仕切りの奥で
「愛依ちゃんが、僕の
「うん、毎朝頑張って作るね」
アストロの優しい笑顔──それが「にんまり」と笑った。
さぁ、と両手を広げた!
大宇宙の煌めく星空のなかを、小さな躰が浮かんでいる。
「愛依ちゃん。こんどは僕たちのお祭りだよ!」
ばーんっ、と大きな火球が視界いっぱいに大写しになった。それが破裂して四方八方へ一気に飛び散る。大量の炎が星空を埋め尽くしていく。
「花火大会のはじまりにゃ!」
わー、とどこからともなく歓声があがる。姿は見えない。でも間違いなくそこにいる。大勢の拍手が一斉に鳴り響いた。
「愛依」
黒猫だと思っていたものはパパだった。
「愛依」
パパだと思ったらママだった。
「いま一番会いたい人はだあれ?」
咲良ちゃんが訪ねる。
「えっとぉ、えっとぉ……」
「約束を果たすにゃ。愛依ちゃんに僕たち中性子星の秘密を打ち明けるにゃ。僕たちは
「吉沢ッ、おれと踊ってくれよ!」
心臓が「どくんっ」と鳴った。躰中に熱いものが込み上げてくる。
「大葉くん?」
わたしは握り返す。
「いいわ、太陽」
「ありがとう、愛依」
空にいくつもの炎が飛ぶ。そこら中にぶつかって飛散して、また空にあがる。
わーっ、
わーっ、
大歓声のなか、わたしはアストロ皇子と──ううん、大場太陽とダンスを踊る!
「僕と結婚して欲しい!」
皇子からのプロポーズ。
わたしは、わたしは──
──わたしは、もっと生きたい。
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