第3話
町田駅南口の小洒落た喫茶店の席に、黒いサングラス姿の二人の男が向かい合って腰掛けていた。そのうちの一人がポケットから何人かの顔写真が貼られた手帳を取り出した。
「世田谷の豪邸に住む例の老人宅を襲い、現金二千万を奪った件についてだが…」
「ああ、目撃者が居たんだろう。まだ通報されていないようだがな。俺も気になっていた」
「私が脅しておいたからな、ただいつ妙な真似をするかは分からん…。早めに消さないとな」
「その必要は有りませんよ、佐久間さん」
二人の前に現れたのは彼らの部下だった。佐久間の向かいに座ると部下は続けた。
「そいつなら僕が始末しておきました。ええ、心配は要りません。誰にも見つかってません」
「それは良かった、全く大したものだな…。だが奴の息子と名乗る輩がウチに反発しているとか…」
そこにまた一人の部下が現れ、佐久間の隣に座った。
「彼なら自分がやります。知り合いなのでね。自分が直接殺すつもりはないですが、策は出来上がっているので」
「お前にその件を任せて良いのか、それは頼もしいな」
佐久間直樹は組織のボスで、No.2の中山龍之介とは昔からの親友だった。詐欺を二人で若い時に始めてから時は経ち、今では詐欺グループでありながら、強盗や殺人にまで手を染め、何百人もの部下を引き連れる巨大犯罪組織へと成長した。
喫茶店で始めからいた二人はこの組織を作った張本人であり、後から来た二人はその部下。部下と言っても何百人の中のただの二人という訳ではなく、特に優秀で若くして組織の最高幹部を任せられた者だ。頭の回転は速く、命令に従順で、人殺しに何の躊躇もない。ここはそんな人間だけが生きていける世界だった。
真犯人 みかん @4a859613
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