【短編】もういない君を想う
奏流こころ
もういない君を想う
「はぁ…」
放課後、1人で手紙を書いている。
ここにはいない君に送る手紙だ。
溜め息ばかりついてしまうのは何故だろう。
10回は溜め息をしている気がする。
幸せが10個分減ったのかもしれない。
またペンを走らせる。
本当に好きだったあの人はいない。
転校するなんて思わなかった。
嘘だろうと思っていたから。
今思うと、タラレバになるが、いろんな事を一緒に経験出来た事はあるはずだ。
グループだって、一緒になれば良かったな。
もっと話せば良かったな。
連絡先、聞いとけば良かった…。
「はぁ…」
11回目になるであろう溜め息が出た。
心の中はもやもやだ。
淋しさが靄になっている感じ。
その人は、大人しくて落ち着いていて、所作が綺麗だったからおしとやかに見えて、髪は丁寧に手入れがされていて艶々しく見えた。
雪のような白い肌は柔らかそうで、恥ずかしがっている時に頬が少し赤くなると可愛らしかった。
また、会いたいなー…。
時間が経つと彼女の事は鮮明に覚えていても、小さな出来事は記憶が薄れてしまうのだろう。
それは、秋の知らせを告げる、朝霧のように。
儚いな…そう思いながら、手紙を完成させた。
※
あれから4年…。
「「あっ」」
キャンパスですれ違った時に、何かを感じて振り向くと。
初恋のあの子がいた
心にずっとあった思い出に掛かっていたあの朝霧は一瞬で消えて、美しく輝く目の前の彼女を、太陽が優しく照らしている。
「久しぶり」
「久しぶり、元気だった?」
あの頃の2人に戻る。
【短編】もういない君を想う 奏流こころ @anmitu725
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