第29話 初めてのデート

中須賀 花梨「まずは服から見てもいい? 私、服を買いたい」


俺「構わない。すぐに向かうかい? 」


中須賀 花梨「うん! もちろん」


 俺と中須賀はエスカレートを利用し、4階のファッションコーナーに移動する。


俺「たくさん選択肢はあるだろう。どこの店に行く? 」


 岡山イヨンには様々な有名なファッションブランドが存在する。多数は世界的ファッションブランドである。


中須賀 花梨「私そこまでお金ないから。ファストブランドのユニシロかな」


 少し考えた後、中須賀は日本で1番有名なファッションブランドを口にする。ユニシロは世界的に有名なファッションブランドである。


俺「ユニシロだな。すぐそこにあるな」


 俺と中須賀は隣を歩きながら、ユニシロに向かう。


モブ男性1「おいおい。あの子超かわいくないか」


モブ男性2「本当にな。隣の人間はもしかして彼氏か? いや違うか。顔はフツメンだし、釣り合ってないしな」


モブ女性1「ちょっとデート中になに他の女性に見惚れてるのよ! 」


モブ男性3「ぐぉ! 」


 中須賀の美貌が起因して周囲の視線を感じる。男性は彼女の虜になる。中には、デート中の彼氏もいる。当然、彼女にビンタやお叱りの制裁を受ける。


中須賀 花梨「ねえねえ。どうやら私達をカップルと思いたくない人もいるみたいだね。この状態はまずいね。カップルであることを証明しないとね」


 さり気なく中須賀は左手を差し出す。手を繋いでカップルである事実を証明するつもりだろう。


 少し恥ずかしいが、仕方がないだろう。それに彼氏扱いされないのは気持ち的に複雑である。悲しみや不甲斐なさも覚える。


俺「ああ。了解した」


 俺は中須賀と手を繋ぐ。柔らかく手触りの良い感触が俺の手を包む。


中須賀 花梨「ふふっ。これでカップルって感じだよ」


 上目づかいで中須賀は微笑む。その表情が魅了的に映る。


 岡山イヨンに身を置く周囲の人間の反応が激変する。大部分の人間達(男性達)が俺と中須賀をカップルと認識する。がっくり肩を落とす男性も視認できる。中須賀の凄さを実感する。


中須賀 花梨「ここだね」


 俺と中須賀はユニシロの店内に足を踏み入れる。


俺「何がお目当てなんだ? たくさん買うなら荷物持ちを担当するけどな」


中須賀 花梨「う~ん。購入する量は決まってないかも。購入する量は木越君の反応次第かも」


俺「は? どういうことだ? 」


中須賀 花梨「秘密だよ。後からのお楽しみだよ」


 中須賀は右目をウィンクする。ぱちっと音を立て、黄色の星が散る。


中須賀 花梨「え~っと。これいいな。これもいいなぁ~」


 気に入った商品をカゴに投入する。ワンピースやジャケットなどアウター以外にもジーンズなどのパンツもカゴに投入する。


中須賀 花梨「試着しようかな。木越君も付いてきて欲しいな」


俺「なぜだ? 自分で確認すれば良くないか? 」


 率直な疑問を口にする。俺が同伴する理由はない気がする。


中須賀 花梨「分かってないな~。デートなんだから。彼氏が彼女の試着した服に感想を言わなきゃ。ほらほら一緒に行かなきゃ! 」


 強引に手を引かれ、試着室に移動する。店員と数回言葉を交わし、試着の許可をもらう。


中須賀 花梨「彼女の試着を楽しみに待ってるように」


 それだけ残すと、中須賀は試着室のカーテンを閉める。影で中須賀の着替える姿が目に映る。上半身を着替えている。なんか見てはいけないものを見ている気がする。


中須賀 花梨「お待たせ~」

 

 ゆっくりカーテンが開く。


 中須賀は茶色のジャケットに水色のジーンズを身に纏う。


 先ほどのブラウスとロングスカートといった女性らしいファッションとは異なり、男性よりの服装だ。


 だが、さすが中須賀と言うべきか。文句のつけようがないほど似合っていた。


中須賀 花梨「どう? 感想が欲しいよぅ」


 甘えるような声を発する。


俺「ああ。満点だ。中須賀のために作られた服みたいだ」


 本心からの気持ちだ。中須賀特注にしか見えなかった。


中須賀 花梨「あ…ありがとう。嬉しいよ。こ、これは購入っと」


 頬を染め、意味深な言葉を呟き、中須賀は再びカーテンを閉める。


 数秒後、再びカーテンが開ける。


中須賀 花梨「じゃ~ん。次はどうかな? 」


 キャミソールの上にネルシャツにショートパンツ。攻めた服装である。胸や足の純白な生肌が所々露になり、色気も漂う。足なんか大部分が露見する。


俺「目のやり場に困る。だが悪くないよ。似合いすぎてる。中須賀のきれいな肌が服の良さを強調している」


中須賀 花梨「あとは? 」


俺「あ、あとは? そんなこと言われてもな」


 困ったな。服の感想はそれ以外に無いな。他に褒め言葉は。恥ずかしけど、これしかないな。


俺「か…可愛い。中須賀は可愛い。だからどんな服でも似合う」


 羞恥心が俺を襲う。でも中須賀の要望に応える。そのためには背に腹は変えられない。


中須賀 花梨「ふぇ! か、かわっ!? 」


 顔を真っ赤にし、口をパクパクさせる。動揺が見て取れる。想定外の言葉を受け取ったのだろう。


中須賀 花梨「こ、これも購入。いや、全部購入。今日は買い物しまくろう」


 シャーッとカーテンを勢いよく閉め、中須賀は再び試着を始める。先ほど大きく異なり、慌てた様子で着替えに勤しんでいる。


俺「お、おい! お金は大丈夫なのかい? 」


 もしや1本取ったのかな。

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