第25話 自宅でイチャイチャ

中須賀 花梨「木越君の部屋は2回目だね。彼女としては初めてだけどね」


 中須賀は意味深な笑みを浮かべる。


俺「そうだな」


 学校終了後、俺と中須賀は帰路に就いた。


 そして、中須賀は俺の自宅にお邪魔した。中須賀の要望があり、自宅に通した。


中須賀 花梨「それにしても木越君の部屋は物が少ないね。勉強机と本とかね。後は必要最低限の生活必需品しか置いてないね」


俺「そうだな。特に物欲もないしな。必要な物しか部屋にないな」


 中須賀の言う通り。俺の部屋は物が少ない。必要最低限の物しか置きたくない。


中須賀 花梨「ねぇねぇ。頭撫でて」


 勝手に俺のベッドに腰を下ろし、中須賀は自身の頭をタッチする。分かりやすくアピールしてくる。


俺「了解。頭を撫でられるのが好きなのかい? 」


 幾分か耐性が整ってきた。午前中よりは中須賀とスムーズに会話できるようになった。


 おねだりにも動揺せず、対応できる。


中須賀 花梨「うん! 大好き! でも木越君限定!! 」


 俺限定で甘えてくれるのか。まぁ悪い気はしないけどな。逆に嬉しいくらいだ。


 中須賀の頭を優しく撫でた。


中須賀 花梨「あぁ~幸せ~~。そこ撫でられるの最高だね」


 中須賀の表情が蕩ける。中須賀は目を細め、気持ち良さそうな表情をする。


 その反応が嬉しく、俺は無心に手を動かし続ける。自然と身体が動く。中須賀の笑顔が俺のエンジンを稼働させる。


 昼休みにも知覚したが、中須賀の髪はとてもサラサラしている。ずっと触っていたい気分になる。とても心地良い感触である。人間をダメにする肌触りである。


中須賀 花梨「彼氏に頭を撫でられるシーンを写真に収めたいな~。写真を撮ってもいいかな? 」


 俺の顔を見ながら訊いてきた。わずかにトロンとした瞳で、上目遣いをキープして、俺の目を覗き込んだ。


 いやいや俺を壊す気か。こんなの反則だ。可愛すぎだ。


俺「ご自由にどうぞ。ほれ、スマートフォン用意しなよ」


 俺が断るはずもなく、2つ返事で了承した。


中須賀 花梨「やった! これで木越君の写真をコレクション追加できる」


 何か呟いていたような気がする。


中須賀 花梨「私の頭を撫でた状態をキープしてね。私はカメラでアングルを調整するからね」


 中須賀は自撮りモードに切り替えた。画面越しに撮影を開始した。


 頭に手を置かれた中須賀の顔だけが画面に映った。


中須賀 花梨「いいね~! この構図最高だね! 私達付き合ってる感じがするね。実際には付き合ってるんだけどね」


 中須賀は満面の笑みを浮かべながら、アングルの調整を続ける。


中須賀 花梨「私の顔は映ってるから。木越君も画面に映るように、私に顔を近づけて欲しいなぁ」


 中須賀の指示に従い、俺は画面に映る位置まで顔を動かした。中須賀との距離は10センチもなかった。少しでも顔を動かせば、中須賀の頬に触れる距離だった。中須賀の体温も微量だが感じ取れた。


中須賀 花梨「ありがとう。ばっちりだよ。それでは撮るよ」


俺「ああ。いいよ」


 俺の表情が明らかに硬くなる。彼女と初めてのツーショットだ。だらしのない顔だけは避けないとな。


 カシャッというシャッター音が部屋に響いた。


 中須賀はスマートフォンの画面を確認した。


中須賀 花梨「うんうん。良い写真が撮れた。待ち受け画面に設定したいな~。お揃いにしたいな~」


 わざとらしく、中須賀は語尾を伸ばす。甘えた声も出す。


 絶対に希望を通す気満々である。


「構わないよ。だから俺宛てにモインを介して写真を送ってくれよ。それと、学校の人間にバレないようにスマートフォンを開く際は警戒してよ」


「もしかして木越君は目立つのが嫌だ? 私と付き合ってることは、皆にバレたくないかな? 」


 中須賀は不安げな様子で、首を傾げた。

 

 中須賀花梨は学年1の美少女だ。そんな彼女が俺と恋人同士だと知れ渡れば…。嫌でも目立つ存在になってしまうだろうな。


俺「できればな。だが、中須賀が望むなら、俺は学校の人間にバレてもいいかな」


 彼女のためなら全然構わない。目立つことは苦手だが、中須賀のためなら、痛くも痒くもない。


中須賀 花梨「木越君に無理強いはしないよ。木越君の意志を尊重するね。ただ木越君が他の女の子に取られないか心配だからね」


 中須賀は唇を尖らせ不満そうな顔をした。


俺「安心しろ。俺が好きなのは中須賀だけだから」


中須賀 花梨「元カレさんも同じことを何度も口にしてたね。どうだかね~」

 

 中須賀は俺の言葉を信じていないようだ。


 俺が他に好きな人がいると思っているのだろうか?


中須賀 花梨「まぁ木越君は三宅君とは絶対に違うタイプだと思ってるから。信用してるから! 」


 中須賀は笑顔で俺を見つめ、スマートフォンを操作し始める。


中須賀 花梨「はい! モインに写真を送ったよ! 」


 数10秒ほどして、ようやく写真が送られた。


俺「結構時間が掛かったな? 他にも何か作業していたのか? 」


中須賀 花梨「そんなことないよ。ちょっと手間取っただけだよ」


俺「ふ~ん。何だか怪しいな。俺の写真で何をしてたんだ? 」


中須賀 花梨「本当に何もしてないよ」


 中須賀は表情を崩さず、淡々と答える。


 俺の追及を軽く受け流している感じである。表情や口調は怪しくないが、直感的に違和感を感じる。


 だが、これ以上追求しても仕方がないと思い、話題を変えることにした。

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