第20話 告白される

モブ男子「ごめんね中須賀さん。いきなり呼び出したりして」


 中須賀は男子から呼び出しを受けた。


 場所は中須賀が三宅に別れを切り出した、校内の人気のない自動販売機の近所だ。何かとここは人を呼び出しやすい。その上、2人きりで話もしやすい。


中須賀 花梨「う、うん。それは構わないよ」


 嫌な思い出があるのか。ぎごちなく中須賀は応答する。


モブ男子「確認だけど。中須賀さんはあの三宅と別れたんだよね? 」


中須賀 花梨「…うん。そうだね」


 顔も名前も知らない男子から疑問を受ける。ここ最近、中須賀はフリーになってから告白を受け続けている。既に両手の指では数え切れないほどに告白を受けては断っていた。


 どうやら断るには理由が潜んでそうだ。


モブ男子「中須賀さんのことを一目見て惚れました。付き合ってください! 」


 勢いに頼ったのか。素早く頭を下げ、告白する。モーションだけは早かった。


中須賀 花梨「ごめんね。告白を了承することはできないかな」


 申し訳なさそうに中須賀は首を左右に振る。


モブ男子「そんな。そうだよね…」


 モブ男子はこうべを垂れる。完全に身体から力が抜ける。


中須賀 花梨「…ごめんなさい」


 申し訳なさそうに謝罪する。


モブ男子「もし、もしよかったら。理由を教えてもらえないかな? そうしたら諦められるから」


中須賀 花梨「え!? 」 


 中須賀の顔に動揺が走る。予想外の質問だったのだろう。


モブ男子「お願い!」


 両手を合わせて懇願する。


中須賀 花梨「理由…理由か」


 何度か同じ言葉を呟く。


中須賀 花梨「好きな人がいるからかな」


 思い当たる理由を中須賀は口にする。


モブ男子「好きな人? 本当に。そうなのか。はははっ」


 モブ男子はぎごちなく苦笑いを浮かべる。


中須賀 花梨「私の好きな人はね。頭が切れて優しくて。私のことを心配してくれる人なの。本当にカッコいいんだよ! 」


 聞いてもいないのに惚気話を始める。


モブ男子「ははっ。それは結構で。ごめんね時間を奪って」


 惚気話を耳にした直後、逃げるようにモブ男子はその場から立ち去った。惚気話に耐えられなかったのだろう。


中須賀 花梨「どうしたのかな? いきなり走って」


 一方の中須賀はキョトンと不思議そうに首を傾げていた。

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