第19話 理由

小林 文「そうだよ。私が花梨ちゃんにその紙を送ったんだよ」


 ようやく自白したな。俺の予想通りスマートフォンには中須賀の自宅宛てに送った履歴があるのだろう。


中須賀 花梨「どうして文ちゃん。なんでそんなことを! 」


那須 真希「そうだぞ文! 」


 攻めるように中須賀達は問い詰める。


俺「理由は紙に記載されてたろ。こいつは三宅のことが好きだったんだよ。それで三宅をフッた中須賀に怒りを覚えたわけだ。 違うか? 」


小林 文「そうだよ。木越君って何でも分かっちゃうんだね」


 不機嫌そうに小林は俺に睨みを利かす。


俺「考えられることをただ口にしているだけだ。それともう1つ付け足せば、お前は中須賀が三宅と付き合ったから仕方なく諦めたんだよな」


小林 文「すごいね。その通りだよ。木越君は名探偵か何か? 」


俺「生憎そんな大層な大物でもない。ただのお前の同級生だ」


 わずかに得意げに俺は笑みを浮かべる。


中須賀 花梨「そんな…。文ちゃんが三宅君のことが好きだったなんて。知らなかった」


 悲しい目で中須賀は小林を見つめる。


小林 文「そうだろうね。誰にも言ってないからね。三宅君と付き合ってる花梨ちゃんには口が裂けても言えないよ」


 吐き捨てるように小林は言葉を紡ぐ。


小林 文「羨ましかった。一目惚れで好きになったイケメンの三宅と付き合える花梨ちゃんが。でも諦めるしかなかった。…私は花梨ちゃんみたいに可愛くないから…」


 決して小林は中須賀と目を合わせない。


中須賀 花梨「そんな。文ちゃんも…」


 そこで中須賀は口を噤む。


 ここで可愛いと口にしても小林の励ましにはならないと察したのだろう。


俺「これからどうするかは3人で仲良く話し合ってくれ。俺は部外者だから失礼するよ」


 踵を返し、俺はひらひらと手を振る。


俺「小林、もし三宅と付き合いたいなら今がチャンスかもな。浮気して中須賀にフラれてフリーだからな」


 盛大な皮肉を残し、俺は屋上を後にした。

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