第18話 推理
俺「悪いな。いきなり呼び出して」
俺は詫びの言葉を発し、軽く頭を下げる。
那須 真希「それは構わないが」
小林 文「花梨ちゃん。この人誰なの? 」
中須賀の友人2人は俺に対して怪訝な視線を向ける。まあ当然か。名前も顔も知らない男子が屋上で待っていたのだからな。怪しいとも思うだろう。
中須賀 花梨「この人は木越君。私がお世話になっている人なの。木越君から2人に話があるらしいの」
中須賀が説明を加えてくれ、幾分か中須賀の友人2人は納得する。だが未だに俺に対する怪訝は残る。
俺「単刀直入に聞くが、この紙に見覚えはないか? 」
俺は茶封筒から例の紙を取り出し、中須賀の友人2人に見えるように掲げる。
那須 真希「…知らないな」
小林 文「…こんな紙見たことないよ」
例の紙を注視した後、中須賀の友人2人は共に首を左右に振る。
俺「なるほど。わかった。実はな、この紙は中須賀の自宅に送られてきたものなんだ」
那須 真希 小林 文「「え!? 」」
中須賀の友人2人は驚きを隠せない。驚嘆な声を同時に漏らしたほどだ。
那須 真希「本当なのか花梨! 」
小林 文「なんで相談してくれなかったの! こんな紙が送られてきたら怖いよね! 」
友人2人は心配な顔で中須賀の元に駆け寄る。
中須賀 花梨「う、うん。今でも怖い。だから木越君に相談したんだ。そうしたら犯人が分かったらしいの。そこで2人を屋上に呼んだの」
俺「その通り。俺は中須賀の友人2人のあなた達のどちらかが、この紙の送り主だと確信している」
中須賀の友人2人を交互に見つめながら断言する。
中須賀 花梨「ちょ、ちょっと待ってよ木越君。それは聞き捨てならないよ! どうして真希ちゃんと文ちゃんのどちらかが犯人なの? 2人は私の大切な友達だよ」
俺の言葉に反論し、中須賀は必死に訴えかける。
小林 文「そうだよ! 私達はそんな手紙を送ったりしない!」
那須 真希「あたしも同意だ。そんなことありえない! 」
中須賀の友人2人も同じように反論してきた。
俺「そうだな。確かに普通ならありえない。だがそのまさかなんだよ。なぁ小林文。 お前が中須賀にこの紙を送った犯人だよな? 」
俺は犯人の名前をフルネームで口にする。
犯人の小林文は目が点になる。
小林 文「え…。何を言ってるの? 木越君だっけ? ふざけてるの? 私は花梨ちゃんの友達だよ。そんな罵倒した紙を送るわけないよ」
一瞬、目が点になった後、我に返り小林は少し怒り口調で答える。
俺「ああ。もちろんふざけていないさ。確信を持って言える。小林文さん。あんたが犯人だとな」
自信満々に言い切る。
小林 文「……証拠はあるの? 」
俺「ある! じゃあ推理の時間といこうか。まずこの茶封筒。宛先の住所は記されているが、差出の住所は記されていない。差出人の住所を記載する決まりは無いらしいが、それでも違和感は残る。それにこの紙の機械的な文字。おそらくだがWEB郵便で出したから紙は機械的になっている」
小林 文「それが何? たまたまかもしれないじゃない。それに私は花梨ちゃんの住所を聞いたことがない」
中須賀 花梨「う、うん。そうだよ。この学校で住所を教えた人は生徒では存在しないよ。知ってるとしたら学校の先生ぐらいだよ」
俺「いいや知ってるはずさ。位置情報共有アプリを介してな。話を聞いたが、お前達2人と中須賀は位置情報をアプリで共有しているそうじゃないか。そこで中須賀が自宅にいるかどうかをモインなどの連絡手段で確認し、後は中須賀の位置情報を表示する場所をインターネットで調べればいい。現代ではインターネットで住所を調べれば容易に特定できるからな」
小林 文「……なるほどね。それで私が犯人だって言うのね。でもそれだけじゃ不十分よ。私以外の誰かという可能性だってある」
俺「いや、ないな。それと残ってるはずだぜ。WEB郵便で送った履歴がお前のスマートフォンにな! 」
俺は人差し指を小林に向ける。
小林 文「……くっ! そんなの」
俺「じゃあ見せてくれないか。お前のスマートフォンの中身を」
俺は小林の元に歩み寄り、手を差し出す。スマートフォンを受け取る準備は完了だ。
小林 文「そ、それはプライバシーな情報だから」
歯切れ悪く小林は答える。先ほどまでの余裕は完全に消えていた。
俺「拒否するのか。それならばお前が犯人だと断定してもいいのか」
小林 文「そ…それは」
俺「それにな。送り主の名である
小林は押し黙ったまま何も語らない。
小林は答えない。
中須賀 花梨「文ちゃん」
中須賀は心配そうに現状を見つめる。
周囲には沈黙が走る。那須は1言も発さない。
小林 文「…そうだよ。私が犯人だよ。花梨ちゃんにその紙を送ったのは私だよ」
沈黙を破り、観念したようにあっさり小林は自白した。
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