第14話 自宅に行きたいらしい&目撃

中須賀 花梨「ねぇ昨日は一緒に帰ったよね。今度は木越君の自宅にお邪魔してもいい? 」


 先日と同様に奇遇にも昇降口で中須賀と遭遇する。


俺「はぁ? なんでそうなるかな。話に筋が通ってないな」


 俺は怪訝な表情を浮かべる。一緒に帰った次は自宅にお邪魔したい?どうやったら、そんな思考に繋がる。理解に苦しむ。おそらく女子は皆が似た思考なのだろう。勝手に決定づける。


中須賀 花梨「ダメかな? 確かにおかしいかもしれないけど」


 瞳をウルウル潤ませながら、上目遣いの仕草を見せる。その後に小首を傾げる。不覚にも中須賀の美貌が起因し、その動作がとても可愛らしく見える。

 

 くっ……これは断れないぞ。こんなことをされて断る男がいたら見てみたいものだぞ。これが美少女の力なのか。


俺「まあ、別にいいけど……」


 素っ気なく俺は了承する。完全に中須賀に屈する。


中須賀 花梨「本当!ありがとう! 楽しみだな~木越君のお家」


 満面の笑みで中須賀は喜ぶ。つい先ほどの弱々しい態度とは大違いである。


 こいつわざとだったのか。もしかして演技してたのか。定かではないが。だとしたらあざとい奴だな。


 俺も少し気分が高揚している自分に腹が立つ。本当に単純すぎるだろう。


俺「それで、1回自宅に帰るよな? 」


中須賀 花梨「ううん、今日はそのまま行くよ」


俺「えっ!? そのまま行くのかね」


中須賀 花梨「そうだけど……何か問題あるの?」


俺「…いや…特に問題ないが…」


中須賀 花梨「なら良かった。制服でお邪魔してもいいよね? 」


 笑顔のまま中須賀は歩き出す。勝手に中須賀は話を終了させる。


 なんだよこいつ~。


 それにしても、俺の自宅に中須賀が来るだけなのに。なぜか落ち着かない。


 ソワソワする。女子を自宅に入れた経験が無いからだろう。


 とにかく俺の部屋だけ片付けないとな…。どうにか時間を稼がないとな。


三宅 貫「だり~。学校の生徒達から逃げるために人目を気にしながら校門に向かう日が来るとは」


 周囲に注意を向けながら三宅は歩を進める。未だに複数人の生徒からキツイ視線を浴びる。生徒達は遠慮せずに軽蔑の視線を向ける。


三宅 貫「いち早く視線を避けるために、学校から抜けないとな」


 視線に耐えられず、三宅は足を高速に回転させる。


三宅 貫「な、あれは!? 」


 その刹那。瞬時に三宅は足を止める。顔には焦りが滲む。


三宅 貫「どうしてだ。どうして花梨とクラスの陰キャが一緒に下校してるんだ…」


 三宅の視線の先には俺と並んで歩く中須賀の姿がある。驚愕している。他方の生徒の視線など完全に忘れてしまっている。


三宅 貫「まさか、あいつら付き合ってんのか? そんなことありえるはずがないな。あんなやつが花梨に相応しいわけがないな。そうだ! きっと何か裏があるはずだ。あの 2人の間にはな」


 何やらブツブツ独り言を言いながら考え込む。


中須賀 花梨「ふふっ。何それ! 」


 上品に口元に手を当て、可笑しそうに笑顔を溢す中須賀の姿を三宅は視認する。


 三宅とは真逆で中須賀は楽しそう。


三宅 貫「許せない……花梨の隣に相応しい人間は俺なんだ!」


 嫉妬の炎を燃やし、三宅は2人の元に駆け寄ろうとする。だが……


三宅 貫「ぐっ。だが今日、脅迫された3人との約束があるぞ。くそ! どうすればいいんだよ! 」


 不幸にも三宅の学校内での行動は硬く縛られる。


 苦悶に満ちた表情で、三宅は立ち止まる。悔しそうに拳を強く握りしめる。そして唇を噛み締める。


 どこかその姿は虚しく滑稽だった。陽キャでイケメンの姿とは思えないほどに。

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