第10話 伝わる

 三宅はポケットに両手をツッコミ堂々と廊下を歩く。


三宅 貫「くそ。俺は諦めねぇぞ。絶対に復縁してやるぞ」


 苛立ちが顕著に表れる。ぶつぶつ独り言を呟き、歩を進める。


廊下に身を置く女子1「ねぇねぇ。あの人だよね。中須賀さんの元カレでフラれた人って」


廊下に身を置く女子2「間違いないよ。三宅君ってこの学年ではイケメンで有名だよ。顔を見ればすぐに分かるよ。中須賀さんと付き合っているのにも関わらず浮気したらしいよ。最低だよね。イケメンなのに残念だよ~」


 ひそひそ話が女子2人の間で成される。


 軽蔑した目線が三宅に幾度となく突き刺さる。


三宅 貫「なんだ? 」


 視線を察し、三宅は怪訝な表情を作る。額にも3重ほど皺が寄る。


廊下に身を置く女子1「うわっ。こっち向いた」


廊下に身を置く女子2「逃げないと」


 女子2人は足早に三宅の近くから立ち去る。


三宅 貫「ちっ。なんだったんだよ…。最近なぜ不幸なことばかり起こるんだよ」


 舌打ちをし、黙って三宅は廊下を進む。


三宅の友人1「お、おい。三宅! 」


 廊下にも関わらず、駆け足で友人が三宅の元に駆け寄る。到着すると、多量の汗を流しながら両ひざに手を載せる。


三宅 貫「どうしたんだよ? そんな慌てた様子でよ」


 友人は大きく口を開き、息を整える。


三宅の友人1「お前、中須賀さんにフラれたのは本当か? 」

 

 友人の様子を見て、ただ事ではないと悟ったのか三宅も真剣な顔つきになる。


三宅 貫「ああ。それは間違ってないが。だが俺は諦めないな。学年1の美少女との復縁を達成するからな」


 三宅は自信満々の口調で言い切る。


 一方、友人の顔色が変わる。眉間にシワを寄せ、歯ぎしりをする。


三宅の友人1「バカ! そんな呑気なこと言ってる場合じゃないんだ。お前が浮気をしたから中須賀さんが別れを切り出した。この情報が学校中に拡散しているんだ! 」


 必死な形相で友人は訴え掛ける。


 三宅の目が大きく見開く。


三宅 貫「なんだと。俺の浮気をしたことが広まっているだと! 」


 三宅の顔に著しい焦燥感が生じる。


三宅の友人1「バカ! この場で肯定するな! 」


 時すでに遅し。周囲の人間達は逃さず三宅の言葉をキャッチし。


女子達「やっぱり浮気していたんだね」「最低男じゃん」「私なら即行で別れたくなるかも」


男子達「考えられねぇ」「1発殴ってやりたいぜ」「いや抹殺かね? 」


 等々、辛辣な言葉が次々と飛んでくる。


三宅の友人1「ほらみろ。周りを見てみろよ」


 三宅は周囲を見渡す。軽蔑した目をした生徒達が三宅を取り囲む光景がある。


三宅 貫「なんてことだ……」


 周囲に三宅の仲間は皆無。廊下に身を置く人間全員の視線が三宅を追い詰める。


 三宅には周りの人間すべてが敵だと錯覚してしまうだろう。えげつない雰囲気が漂っていた。

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