第7話 別れ

中須賀 花梨「いきなり呼び出してごめんね」


 三宅を校内の人気のない自動販売機の近所に中須賀はモインを介して呼び出す。


 ここは三宅が中須賀にキスを迫った場所だ。


三宅 貫「いいよ気にしないで。彼氏なんだから呼ばれたら急いで来るよ」


 柔和な笑みを三宅は浮かべる。


中須賀 花梨「悪いね。いきなりだけど重要なことを伝えてもいいかな? 」


 真剣な表情で中須賀は話を進める。笑みなどは一切存在しない。


三宅 貫「どうしたんだい? そんな怖い顔をして。もしかして悩みとかあるの? それとも悲しいことでもあった? いつでも話なら聞くよ」


中須賀 花梨「ここ最近に悲しい出来事があったよ。でも、もう三宅君に話を聞いてもらう必要はないよ。だって私達は今日を持って別れるから」


 さらっと中須賀は別れを切り出す。


三宅 貫「別れる? は? もしかして俺達が? 」


 自身を指さし、三宅は目が点になる。


 静かに中須賀は首を縦に振る。


三宅 貫「バカな! 意味がわからない! どうして俺達が別れないといけないんだ! しかも急だな!! 」


 あまりの出来事に頭が追いつかない。三宅は目の前の中須賀を見つめることしかできない。


中須賀 花梨「それは三宅君が浮気したからだよ。私、全部知ってる」


 普段では見せない鋭い目付きで中須賀は三宅を睨む。瞳には怒りを帯びる。


三宅 徹「浮気ってなにかな? 知らないな~」


 武器の爽やかスマイルで三宅は白を切る。無理やり平静を装おう。


中須賀 花梨「じゃあこれは何? 」


 制服のポケットからスマートフォンを取り出し、画面に三宅と浮気相手の女性が濃厚にキスする写真を表示する。


 そのまま三宅にスマートフォンの画面を見せる。


三宅 貫「は!? なんでこんな写真があるんだ! 」


 三宅の顔色が変わり、額からは汗が流れ始める。明らかに動揺が走る。


中須賀 花梨「その反応。もう言い逃れはできないよ」


 中須賀は確信を得る。寂しそうな雰囲気も醸し出す。


三宅 貫「ち、違うんだ。これはフェイク画像だ。見知らぬ他者が加工したんだ。俺は浮気なんかしていない! 」


 必死に弁明をする三宅だが、言葉とは裏腹に身体は震えている。普段よりも顔は赤く染まる。


中須賀 花梨「見苦しい嘘だね。それに私は直で三宅君の浮気場面を目にしているからね」


 スマートフォンを操作し、次は三宅達がラブホから出てくる写真を表示させる。


 三宅に見せつける。


三宅 貫「どうして…こんな写真まで…」


 わなわなと三宅は身体を震わせる。呼応して声を震わせている。


中須賀 花梨「これでもフェイク画像だと言い張る。自分の浮気を認めないつもり? 」


三宅 貫「いや。これはだな。つい魔が差したというか。それにただの友達だから。本命は花梨だからさ。機嫌直してくれよな。謝るからさ」


中須賀 花梨「ただの友達とキスなんてしないよね…しかもラブホまで。…謝るとそういう問題じゃないから」


 冷淡な声で中須賀は答える。既に怒りを通り越している。呆れている。


三宅 貫「花梨……。本当に悪かったと思っているからさ。ごめんなさい」


深々と頭を下げ、謝罪の言葉を口にする。


三宅 貫「なぁ頼むから何か言ってくれないか? 俺達恋人同士なんだろ? 」


 懇願するような口調で訴えるように三宅は問いかける。


中須賀 花梨「そうだね。確かに私達は付き合っていたね。でももう終わりだね。…モインもブロックするからね」


 悲壮感漂う表情を浮かべ、中須賀は別れを告げる。


三宅 貫「待ってくれよ! いきなりそんなこと言われても困るだよ。 納得できないよ」


 焦りからなのか三宅は早口でまくしたてる。


 ひたすら無視に徹し、逃げるように中須賀はその場から駆け足で立ち去る。


 涙が溢れそうになるがぐっと堪え、中須賀は走り続ける。


三宅「おい! 話を聞けよ! まだ話は終わっていないぞ! 」


 中須賀を追いかける三宅の声が響く。


「2度も言わせないで! あなたとは終わりなので!! 」


 中須賀は振り返ることなく全速力で校舎へと戻る。

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