第6話 決意
テテテテテテン。テテテテテテン。
俺が学校の宿題に取り組む最中、スマートフォンが振動する。画面には応答と拒否の2つのボタンが表示される。
俺「中須賀から…。こんな時間に何の用だ? 」
俺は首を捻った。時刻は21時を回っていた。どうやらモインを介しての電話だった。
俺「…もしもし」
無視するわけにもいかず、電話に応答する。
中須賀 花梨「あっ。繋がった」
中須賀の驚いた声が俺の鼓膜を刺激する。どうやら電話した本人が繋がるかどうか不安だったらしい。
俺「ああ。それでどうした? 何か困ったことでもあったか? 」
宿題の問題集をゆっくり閉じ、俺は疑問を呈した。いち早く中須賀が電話した理由を突き止めたかった。
理由は何となくだ。でないと落ち着かないのだ。
中須賀 花梨「遅い時間にいきなり電話してごめんね。でも木越君にどうしても伝えたいこととお願いしたいことがあって」
俺「そうか。別にいつでも電話してくればいい。それで心が落ち着くなら尚更だ」
本心からの気持ちだ。未だに悲しい気持ちは中須賀の心に残るだろうからな。少しでも心の苦しみを軽減してやりたいからな。
三宅の浮気する情報を提供した俺が、こんな感情を抱くことが愚かな行為かもしれない。
中須賀 花梨「ありがとう。木越君は優しいんだね。今の私にはすごい心強いよ。木越君がいなければ心がすぐに壊れてしまいそうだよ」
中須賀の言葉が震える。
もしかしたら涙が溢れる寸前かもしれない。本日の浮気の場面が脳にフラッシュバックしてしまったかもしれない。
不思議と中須賀にお礼を言われ、嬉しい感情が巻き起こる。
俺「そうか。それなら存分に俺を頼ってくれ」
邪な気持ちは一切ない。ただ中須賀に貢献したい。三宅を中須賀から別れさせるために行動したのに。中須賀の悲しい姿を想像すると力になりたい。
中須賀 花梨「じゃあお言葉に甘えて。それでね。私、決意したの。だから木越君が見せてくれた例の2枚の写真が欲しいんだけど 」
俺「問題ない。自由に使ってくれ」
スマートフォンでモインを起動し、中須賀宛てに例の2枚の写真を送る。数秒ほどで送信は完了する。
俺「無事に届いたはずだ。どう利用するかは中須賀しだいだ」
中須賀 花梨「うん。ありがとう。それとわがままかもしれないけど、私の話を聞いて欲しいかな。愚痴だったりとか」
電話越しからも中須賀の苦笑が認知できる。息遣いで推察できた。
俺「おう。存分にしろ」
最終的に2時間ほど中須賀の愚痴や胸中の状態に耳を傾ける羽目になった。だが、不思議と苦痛では決してなかった。
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