第3話
第二章 波瀾
何かが爆ぜる音が学校中に響いた。周囲を見渡すと机の下に隠れて泣きそうになっている男子や、混乱して泣き叫びながら教室を走り回っている女子がいた。
「……一体なにが起こってるんだ。」と僕は呆然とした。
先生は混乱しながらも震えた声で「みんな落ち着いて」と生徒達を宥めている。教室内に設置されているスピーカーからは無機質な機械音で「緊急事態です。緊急事態です。先生方は生徒達を引率して外に移動して下さい」と耳鳴りするほどの大きな声で繰り返し放送されてた。
混乱した思考の中、どう動くのが最適解か考えていた。すると突然、後ろから肩を叩かれた。振り向くとそこにリーがいた。
「おい、お前ら俺についてこい」とリーが真剣な顔で僕に言った。リーの隣には今にも泣き出しそうな目で僕の目を見つめているレイがいた。
調和を失った人々で溢れ返った廊下を僕とレイはリーの筋肉質な背中を追うと、ドア型の緊急事態用瞬間移動装置がある部屋についた。僕は人が多いだろうと思い、その部屋に行くつもりは無かったが、そこはたった一つの机の上に紅色のボタンと真っ白なスピーカーだけがある閑散とした場所だった。幸い未だ人はいないようだ。その後、その装置を使用するために学生証をカードリーダーに当てて電源を起動させた。すると、紅色のボタンの横に置いてあるスピーカーから「速やかにドアの場所に移動して下さい。」と女性の落ち着いた声がアナウンスされた。その後、白銀色に染まっているドアが真ん中の天井から現れた。
ドアが一瞬で降下すると、レイがドアノブを引いた。その後レイが蒼色の光に包まれて姿が消えた。無事、瞬間移動ができたようだ。
ドアが閉まるのを待たずに僕とリーはレイが消えていった瞬間移動装置に入っていった。
瞬間移動装置から出ると、噴水と太陽の光を浴びて緑色の光を放っている木々が現れた。どうやらここは広場のようだ。穏やかな木々とは裏腹に周りの人々は動揺した様子でアルカディアに注目していた。視線をそこに向けると、宙に浮かんだ巨大なドーナツ型の学校が不安定に揺れており、今にも地上に落ちそうな様相を呈していた。
少女の悲壮な叫び声の様な金切り声が学校から聴こえた後、地面が割れるかのような音を鳴らして僕の儚い青春の象徴が地に堕ちた。
「これは現実なのか……」とリーは絶望した表情で僕に語りかけてきた。
「……信じたくないがこれが現実だよ」と僕は言いながら同意を求めるかのようにレイを見つめたが
「全部私のせいだ」と彼女は瞳から涙を流しながら嗚咽していた。
「この悲惨な事件の犠牲者は全校生徒と職員含め、四百七十六人中二百八十ニ人死亡、八十七人行方不明です。二十二人は重傷で、三十七人が軽傷でした。…………速報です。この事件の犯人と思われる人物の遺体の一部が幾つか見つかりました。警視庁のテロ対策本部の見解によると犯人は自爆したと述べています。」僕は憔悴し切った眼で僕の学校で起こった事件のことを喋っているニュース映像を、汎用型AIの眼鏡型デバイスを通して見ていた。この事件の影響で僕の通っている学校は閉校になり、数少ない生き残りの先生と学生は心的外傷後ストレス
僕はあの事件が起こって以降、リーやレイと会っていない。
「……レイは今どうしてるだろうかぁ」とソファーに沈みながら静かに呟いた。眼鏡型デバイスを外し、携帯情報端末を使い暇を潰していると、リーからメッセージが届いた。
<リー>シュヴァルツの予定空いてる日教えてくれよ。レイが話したいことがあるらしいぜ
<シュヴァルツ>今週末空いてるよ
<リー>おけおけ、じゃ今週末三人で集まってなんかしようぜ
<シュヴァルツ>了解
シャングリラ内のカフェで僕とリー、レイは集まった。
三人は挨拶を交わした後、飲食店型ロボットがいるカウンターに一言も喋らずに移動した。各々が飲み物を注文した後、レイがソファに座った。その後、僕とリーは椅子側に座ると気まずい雰囲気が場を支配した。
「Armなんだよ私」レイは端整な顔を苦しそうに歪ませ沈黙を破った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます