44日目:初ドライブは静寂の中
長期休みが嫌い。
え?なぜかって?
だって、終わりの始まりが地獄だから。
昔は指折り数えて、心待ちにしていた長期休暇。
その指折りが、いつからだろう?死刑台へのカウントダウンのように感じられるようになったのは。
始まりの期待より、終わりへの絶望の方が大きくなってしまったのは、年の所為??
まさかね。
というかさ、みなさん、長期休暇ってエンジョイできてますか?
これは我が家だけの話なのか分からないけど、長期休暇って、長期休暇ではないよね?(あ、いや、違う違う、哲学的な話ではなく!)
だってさ、長期休暇となると、イベントが目白押しません?
イベントってさ、休んでないよね?
あ、いや、そういう長期休暇でしかできないこと、非現実を味わうことこそがリフレッシュに繋がる、、、なんていう、与太話をする人は少し黙っていてください!!!
休暇の時しかできない、、、ってのは、嘘!
休暇なんだから休めよ日本人!
という訳で、今回は最近休暇が休暇ではないって話です(?いや、違うと思うが)。
「史たん」が産まれてこの方、、、いや、職を変え、故郷に戻ってこの方、休暇という休暇がほぼ、あいさつ回りとかいう謎イベントで潰されまくって、フラストレーションが溜まり溜まっているボクです。
田舎の風習。
あいさつ回り。
はっきり言おう、もう廃れるべき悪習だと。
新年度早々から、折角の休日に、どこどこに顔を出せとか、誰誰が「じさま」の家に来るから顔出せとか、まーーー本当に面倒くさいことの連続だった。
ボクはただ何もせずお家で過ごせればそれだけで満足だというのに、何故に邪魔をする?
今年は特に「史たん」誕生や、ボクの地元再就職など、ビッグイベントが多かった所為か、まぁ「じさま」やら「ばさま」やらが本当にうるさい。
そして、何故にあの世代って、親兄弟が多いんだろうか?
顔を出さねばならない親類縁者がいるわいるわ。
最早、かの名言『人がごみのようだ!』を地で行くくらいいるのではないだろうか?
人とできるだけ関わらないで生きていきたいボクとしては何故にこうなった?としか言いようがない。
しかも盆暮れ正月はそんな煩わしいエンカウントイベントが多数発生するという地獄。
そう、そんなお盆がやってくる。
しかも、なんと、今年は2回もある!
何故に2回って?
だってさ、夫婦になるってことは、親類縁者が増えるってことで、そうすると出なきゃいけないイベントも倍になるって訳。
つまりは、結婚すると行事は2倍。
その上、ちびっこがいると会いたい人が1.5倍くらい増えるため、体感イベントは3倍に上るのだ。
しかも前段の通り、主役級な訳だから、最早出席はマストといっても過言ではない。
、、、本当に、どうしてこうなった?
そもそもお盆とは年に一度、先祖様の御霊が現世に降りてくるらしい期間で、その間のご供養を目的とした休暇、なはずである。
日本ではこの時期、企業も公所も、ありとあらゆるところがほぼ休みとなるのだが、帰省に、墓参りに、親族の集まりにと、休暇とはいいつつ、イベントだらけの日々を過ごすこととなるという謎の長期休暇である。
一般人にとってはご機嫌(?)な、ボクにとっては苦労な、そんな休暇なわけである。
そもそもの話、お盆とは
目連が供養をささげた日が旧暦の7月15日あたりな為、日本に伝わった際にもこの近辺に行う行事となった(諸説ある)。
まぁ、つまり何が言いたいかというと、普段から修行をしているお坊さんでも亡き母親を救うためにそれだけのことをやらねばならなかったのだから、普段何にも供養なぞしていない人がその時だけ供養した気になったって、大した意味はないのである(まぁ、契機としてはいいのかもしれないから、完全に否定はできないのだけれども)。
だから、無駄なことなんかやめてお家でのんびり過ごそうよ?ねぇ?ってこと!
と、そんなうんちく(?)をバックミュージックにボクの運転する車は、スムーズに高速に乗り入れた。
7月某日。
車中は涼しめだが、外は案外蒸し蒸しと暑い。
助手席には荷物。
後ろには「史たん」と「おかたん」がゆったりと座っていやがる。
え?何故7月?と思った方も多いだろう。
それはまぁ、冒頭の通り、8月は単純に忙しいのだ。
墓参りに行ったり、お家の仏壇を拝みに来る人にあいさつしたり、逆に拝みに行ったり。
しかも今年はそんなお盆を2度せねばならない。
もう、考えただけで車酔いしそう。
そんな訳で、7月に「おかたん」ズ実家で1度目のお盆としゃれこみに行く、今はその道中なのである。
ボク的には「史たん」を連れての初めての遠征。
正直、乳児の長距離移動は問題が山積だと思っていたボクであったが、、、
ふたを開けてみてびっくり!
高速に乗る前はあんなにぐずったりなんだりしていた「史たん」が、高速乗って安定走行になるや否や
。。。
。。
。
寝た!
すっかり静かになってしまった車内。
さっきまで熱く語っていたボクも、この雰囲気にはなんというか、、、
無言にならざるを得なかった。
そして、
そのまま
約2時間半。
「ばぁば」の家が見えるんじゃないかという頃になってようやく、
『うぁぁ、うあぁぁ』
という、「史たん」の泣き声が聞こえてきた。
『(よ、よかった。生きてたよ。てっきり、ボクの話がおもろすぎて昇天したのかと、、、)』
そんなボクの心の声をよそに、泣き続ける「史たん」。
『あのぅ、「おかたん」さん、泣いてますけど?』
『そだねぇ、でも、車の中だし、もうすぐ「ばぁば」のお家だし、もうちょっとこのままがんばろっか?ね?「史たん」?』
もう、この車ぶつけちゃろうかしら?
寝起きの「おかたん」の対応に(因みに、「おかたん」も「史たん」の横でずっと爆睡だった)若干イラっとしながらも、なんとか「ばぁば」の家の駐車場に入る。
しっかし、この子、本当に末恐ろしい子である。
まさか、初ドライブがこんな快適なドライブになるとは。。。
ってかみんな寝すぎじゃね?
などと思いつつ、ボクは後部座先に回りドアを開ける。
『あ、どもども、すいやせんね。』
そんなふざけたことを言いながら、「史たん」を抱いた「おかたん」が車を降りる。
「史たん」は駐車場に入ったタイミングでパイタイムになっているので、一人をエスコートすれば、二人分しているようなものだ。
そして、そのまま、「おかたん」が実家に向かうのに任せ、ボクは一通りの荷物を何とか装着して、後を追う。
『(ピンポーン)』
先を行く「おかたん」が来訪のベルを鳴らす音が遠くから聞こえる。
すると、ドアを開ける音と共に、「ばぁば」の通る声も聞こえてくる。
『あら~「史たん」いらっしゃい!大丈夫?いい子でこれた?さぁ、入って入って!』
『(バタン)』
あ。
とまぁ、そんなこんなで無事に「ばぁば」宅に到着。
閉じられた玄関のドアと同じく、逃げ場のない一度目のお盆が、今始まろうとしていたのだった。
いや、いっそこのまま帰、、、
『あら、「おとたん」さんもいらっしゃい!お荷物大丈夫ですか?』
『だ、大丈夫でふ。』
『お疲れでしょう、ささ、上がってください。』
『は、はい、お邪魔します。』
『(バタン)』
こうして、一度目のお盆が始まったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます