26日目: 久しぶり(?)の再会

 朝だ。

 見知った天井、見知った景色。

 うむ、今日も体長は悪い。

 というか、腰が痛い。昨日歩き疲れた所為だろうか?

 まぁ、もうこれはデフォルトなので仕方がないとあきらめるしかないだろう。


 さて、本日のご予定はというと、、、そう、お迎えである。

 我が愛しの家族たちに実に五日ぶりの再会を果たす日、といえば聞こえはいいが、詰まる所アッシーである。

 不調が過ぎると、睡眠が無駄に長くなるようで、今日も今日とて、

 『 やっべ、もうこんな時間か!』

 からのスタートとなった。

 洗濯、掃除、荷解きとやらねばならないことをマッハの速度で片付けつつ、お迎えの準備をする。と、もう気が付けば整体院(3月から腰痛治療で通っているが、これは効いているのだろうか?)に行く時間となってしまった。

 何故か最近ギリギリになることが多いため、今日こそは!と思っていたのだが、やっぱり今日も今日とてギリギリを攻めることになる「ボク」であった。


 『 ゴキリゴキリ…っう』

 「ボク」の腰は軽快な音を立てる。

 が、快方に向かっている感覚は残念ながらない。

 相変わらず、車に10分以上乗ってしまうと、満足に歩けない状態は変わらず、、、心配した親族の勧めで、先週、評判の病院に行ってはみたものの、CT検査やら何やら一通りした挙句に、

 『 多分、ヘルニアですね。』

 の診断をいただいただけで、

 『 まだ若いので様子を見ましょう。』

 ということになった。結果、大量の痛み止めとシップを貰うだけもらって経過観察という名の放置なので、一縷の望みに頼って、整体院へは通い続けている訳だ。

 『 ってか、腰痛って、こういんもんなの?こんなに医療の発達した現代でも、ただただ自然治癒を待つだけって、、、やべー大病を患ったといっても過言ではないのではないか?』

 等と思ってしまう。

 まぁ、でも、この整体院に係り始めて半月、それなりには動けるようになってきたのだから、治療としてはマイナスではないんだろうが。

と、そんな感じで治療を終え、いざ、我が愛する家族のお迎えに!


 整体院から、車を運転すること約30分。

車窓から見る4月の東北の町並みには未だ桜の影は薄い。

 というか、入学式に桜が舞い散る校門で、運命の出会いなんて、東北じゃぁ物理的に無理だよなぁ。


 そんな益体もないことを考えている間にあっという間に車は我が実家へとたどり着く。


 車を降りて、

 『 うー』

 と呻くこと数分。腰を伸ばしながら、体の再起動を待つ。

 そして、

 『 よしっ!』

 の気合とともに、実家への階段を上りだす(っても、3段くらいしかないけど。)

 実家の玄関戸を開けて(いや~東北の否かって本当に不用心だな)、一言、

 『 た~だいま~。』

 その声を聞きつけたのか、開け放たれた窓から、

 『 あ、「おとたん」だよ!お出迎えに行こう!』

 の声が聞こえる。

 まぁ、エスっ気根性逞しい「ボク」はそんな声を聞きつけたって、玄関でお出迎え待ちをしてあげるわけなぞない。感動の再会?ないない(笑)

そんなわけで、さっさと靴を脱ぎ、お土産片手に、玄関横のリビングのドアに手をかける(当然先ほど声の聞こえた部屋である)。

 ガラッと開けたその先には、予想通り、「史たん」を抱っこして、立ち上がろうと屈む「おかたん」の姿。逆光越しに見ても見間違えようのないその姿を目にとめた「ボク」は、

 『 ういうい~』

 と、まるで酔っ払いのような声を上げる。と同時に、「おかたん」の口から、

 『 あら~「おとたん」早かったよぅ、折角お出迎えに行こうと思ったのに。』

 と不満げな声が聞こえる。

 その手の先、もぞもぞ動くその姿は我らが「史たん」のそれであった。


 『 大丈夫~期待してないからね~』

 との「ボク」の一言に、

 『 ん、っもう!そういうことばっかり言って!』

 と多少むくれ気味の「おかたん」。

 そんな言葉遊びをしつつ、もぞもぞ虫に近づいていく「ボク」。

 数歩の距離を経て、見下ろした、実に5日ぶりに見るその虫の姿は、、、


 大して変わっていなかった。

 まぁ、そらそうだろ。

 だが、前回から大きく、そして、虫に見える原因ともなった変化が一つ。

 そう、うつ伏せなのである。

 「おかたん」フォンでも報告はされていたが、ちゃんとうつ伏せをする「史たん」。

 ただ、よく見ると、肘を曲げた状態で、腕を支えに頭をもちあげようともがいている最中らしく、なんというか、めっちゃ危ない。何が危ないって、

 『 うんうん』

 とうなりながら、持ち上げられるその頭は、やわやわな首を支点に上下にカタカタ震えている。今にも落ちそうなその様を見ながら、

 『 ねぇ、これ、大丈夫なの?』

 と聞こうとする間もなく、

 『 (ばふん)』

 あ、落ちた。

 顔から思いっきり座布団にダイブする『史たん』。そして、完全に動きを止める。

 『 え?大丈夫なん?』

 とまた声をかけようと、「史たん」に指を指しかける「ボク」だったが、、、

それよりも早く「おかたん」が助けに行く。そして、かなり泡を食った様子で「史たん」を仰向けに戻す。

 どうやら、大丈夫ではなかったらしい。

 ひっくり返されて、ちょっと涙目の「史たん」を見つつ、「おかたん」に視線を向けると、、、

 『 す、凄いでしょ!大分うつ伏せでいられるようになったんだよ!いや~偉いねぇ。「史たん」。「ばばちゃん」の特訓の成果だね!「おとたん」も見てたでしょ?「史たん」うつ伏せ上手にできるようになったんだよ!寝返りももうちょっとで出来そうだし、凄い進歩!』

 と、何か見てはいけないものをごまかすかの如く、上機嫌に話を進める「おかたん」

 「ボク」的には、

 『 え?あれで上手?』

 の心境ではあったものの、そこは「おとたん」も空気が読めるダンディな大人である。もちろん口に出したりはしない。代わりに、

 『 そ、そうなのか~凄いね、みんな頑張ったね、お疲れ様!』

 とねぎらいの言葉をかけるに留めるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る