19日目:「史たん」の最初に覚えた言葉は・・・
迷子という名の大冒険から一夜が明けた。
最近は「史たん」の乱が頻発する所為で、毎夜4回は起きるのだが、昨日は目覚めることがなかったような気がする。
いや、目覚めはしたが、覚醒する前にまた夢の中に落ち込んでしまった気がする。う~ん、お酒って怖い(笑)。
本日は土曜日。公休日である(「ボク」が子供の頃は半ドンとか言って、午前のみ登校するわけのわからない日だったなぁ)。
この土日は特にやることもなく、家族団らんの日に、、、
と思っていたのだが、「ボク」の粗父母から、
『 関東から戻ってきて、長男も生まれたのだから、きちんと親戚にあいさつ回りをしなさい。』
とまぁ、事あるごとに前時代的な命を受け続けていたものだから、空いた時間にまずはあいさつ回りに行かなくては、、、と「史たん」のお披露目も兼ねて親戚を回ることに。
「ボク」の家系というか、祖父母宅は由緒正しい、かどうかは分からないのだが、若干前時代然とした感を残したところがある。
暗黙の、、という訳でもないが決まりごとが色々とあり、まぁ面倒くさいのだ。
例えば、折に触れてあいさつ回りはきちんとすること、ただいま/こんにちは/さようならは膝を折り頭を垂れて行うこと等という風に、昭和時代の亭主関白な家庭の色をかなり強く残している。
特に父方の祖父は齢90に迫ろうという年齢でもあり、そういう一般常識上の作法(?)について色々と口やかましくご助言頂くことが多いのである。
はっきり言って煩わしい、としか思わない時も多々あるが、まぁ郷に入ってはなんとやらなので、沿えるときは極力沿うようにしたいと思っている。
とまぁ、そんな訳で折角初の新居でゆっくりできるタイミングで申し訳ないとは思うが、「史たん」のご出馬と相成った訳である。
とはいえ、我が県は無駄に広い。
そして、親類筋は高齢者が多く、会いに行ける人は限られている(施設に入っているのもいるしねぇ)。
まずは手近なところからということで、今日は祖父母と親に会いに行くことに決めていた。まぁ、行ったら最後、軽く半日はつぶれてしまうのが目に見えているのだが…
あ~めんど。
そんな訳で、まずは朝から祖父母の家に行き、お昼前を目途に面倒事はやっつけてしまおう(さすがに昼飯までを一緒にすれば、あちらも満足するのでは?)と勢い勇んでやってきたものの、、、どうやらこれから外出するらしい。
着いてから聞いて知ったのだが、なんと、土曜日はデイサービスという通い介護の日で朝から施設にお出かけらしい。
な、なんということ(←単なる「ボク」のリサーチ不足)!
そんな訳で挨拶だけして、早々にお暇することになった。
ラッキー♪
まぁ、もちろん二人できちんと手をついてごあいさつした後、「史たん」を抱っこしてもらい、写真撮影をして証拠を残すことも忘れてはいない(「ボク」に抜かりはないのだ!そして、この写真を証拠にと祖父母の携帯に送ったがために、この日の夕方小一時間以上説明する羽目になったのはまた別の話)。
初めのうちは祖父母とも、「史たん」相手にかなりおっかなびっくりといった感じで抱っこしていたのだが、少しすると慣れたのか、声を掛けたり、歌を唄ったりと、結構遊んでくれていた(まぁ、放っておいても「史たん」は右を向いてぱたぱた手足を動かすくらいしかしないので、特に問題はないのだけれども。)まぁ、何を隠そう「ボク」はおばあちゃんっこだったそうで、「ボク」がそれこそ赤ちゃんの頃から祖母には大分お世話になったそうだから、祖母も慣れてしまえば随分と堂に入った抱きっぷりを披露していた。こういうところは流石だね。
そして、短い邂逅の後、祖父母を見送りがてら連れだって辞去。目指すは我が父「じじちゃん」家である(祖父母とは別に「じじちゃん」も家を建てており、「じじちゃん」はそこで我が母「ばばちゃん」と二人暮らし。ここから大体30分ほど離れた場所に住んでいるのだ)。
正直、「じじちゃん」相手には大分適当である。
三つ指なんてつかないし、挨拶は適当でOK。世代を経るごとにここら辺はゆる~くなっていくから、まぁ気楽と言えば大分気楽である。心なしか「おかたん」も、まぁ少し肩の力が抜けて見える。
ま、こっちの場合は挨拶なんぞよりも「史たん」だろう。
「史たん」を見せてすぐ、「ばばちゃん」が
『 わ~かわいい!小さい頃の「おとたん」ソックリ~』
と爆笑。
どこがじゃ?
こちらはもう物怖じもせずに「史たん」を抱きかかえ、離す気配がない。流石である。一通り愛でた後、
『 ほらほら、「じじちゃん」も。』
と、今度は「じじちゃん」に手渡される「史たん」。たらいまわしである。そんな「史たん」を、
『 い、いや、俺は別に、、、』
といいながら、おっかなびっくり受け取る「じじちゃん」。
そうだよね?男親ってこういうの怖いよね?でも、なんか「ボク」のファーストコンタクトの時より大分スムーズに受取り、「史たん」の収まりもいい。くそぅ、負けた気がする(そりゃぁそうだわな。だって、「ボク」ら3兄弟を育てた親父なのだものと、後々思い返してみればそう思う)。
『 ちっちゃくって、こえぇなぁ。』
と言いながらも、それでも上手にあやす「じじちゃん」。
その後、また「ばばちゃん」に取り返されて、、、と、おもちゃにされる「史たん」を横目に、ちょっとしたお願いを切り出す「ボク」。
『 あーそうそう、あのさ、来週なんだけど、「史たん」と「おかたん」こっちで預かってもらえない?「ボク」さ、新人研修で丸一週間留守にするんだよねぇ。一人で世話ってのも大変だろうし、ご飯も心配だからさ。』
『 別にいいわよ?』
『 ホント?サンキュー』
『 あーついでに、あいさつ回りもしとこうか?行ってないでしょ?○○おばさんとか、××おばさんとか。予定も分からないでしょ?土日はデイ(デイサービスの略語)とかでいないこと多いし。』
『 え?マジで?助かるわ~』
ってなわけで、あっさりと「史たん」の外泊とあいさつ回りの日程が決まったのだった。ホント、気の休まる暇がなくって、ごめんね「史たん」。そして、「おかたん」が気苦労で倒れないかが少し心配になったりもしたが、、、まぁ、「おかたん」ならきっと大丈夫!
その後は、来たついでだからとお昼ご飯もご馳走になり、「史たん」のお昼寝を理由にさらっと辞去。我ながらスムーズな試合運びであったと自画自賛する「ボク」だった。
そんな怒涛の一日を無事に終え、帰宅したのはまだ午後2時前の時間。
自宅リビングでほっと一息をついている「ボク」の横で「史たん」もまたパタパタ手足を動かして遊んでいる。
「史たん」はこの月齢の子にしては結構よく寝る子だ、と思う。そして、お腹がすいてなければ泣き喚いたりはあんまりしない子だ。その上、寝起きでも騒がず、気付けば一人でまたぱたぱたと遊んでいる。
あれ?この子って、意外と手のかからない良い子なのでは?というのが最近の「ボク」の感想である。
まぁ、真夜中はいざ知らず、良く分からんタイミングで泣きわめき始めることはあるけども、まぁそれはそういう時期だから仕方がないと思うしかないしね。
という訳で、総じて手のかからない「史たん」。
「じじちゃん」家で疲れ果てたのか、車では速攻で爆睡であったが、家に着いたら安心したのか、起きてぱたぱた遊んでいる。
『 へげげ、へげげ。ぅ、へげ、へげ、へげげ。』
ん?変な鳴き声?
あー、そうそう、読者の皆様にはこれが初出しとなるのだが、実は「史たん」、喋るのである。
「おかたん」も
『 ここ数日くらいからじゃないかな?』
と言っていたので、明確にいつ、とは言えないのだが、ここ最近喋るようになったのだ。曰く、
『 へげ、へげ。』
と。手足のぱたぱたが、悦に入ったタイミング(どんなタイミングだよ!)なのか、見えない何かが近くに来たタイミングなのかはわからないが、一人で楽しそうに、
『 へげ、へげ。』
と言っていることをここ数日よく見かける。
今も「ボク」の座るソファの横に置かれた座布団の上で、手と足を力の限りぱたぱたと上下動させながら、一生懸命
『 へげっ、へげっ、ぅぅへげっ』
と、やっている。
まぁ、何と言っているのかは全然わからないが(最初、『たすけて~』だったらどうしよう?と思ったりもしたが、楽しそうなので今では完全放置)。
よく子供が最初に話した言葉が、『まぁま』だったとか、『だっこ』だったとかいう議論(?)を聞く。そして、『お父さん』とか『パパ』は大分後の方にしか言ってくれなくて、父悲しいとか。でも、これ、うちの子に限ってはもう、『へげへげ』で良いんじゃないだろうか?そうすれば、「ボク」も『おとうさん』と言ってくれないと延々悩む必要もなくなる訳で。そうだ、そうしよう!「史たん」よ、君の最初に喋った言葉は『へげへげ』じゃ!「おかたん」が後で何と言おうと、『へげへげ』じゃ!
そんな益体もないことを考えながらソファでくつろぐ「ボク」。最近、「史たん」がちょっとだけかわいく見えたりもしなくもない時もあるような気がする。子ザルは子ザルだし、「ボク」の方を全然向いてはくれないが。
『 なぁ、「史たん」。君の初めての言葉は『へげへげ』でいいのかい?後悔はないかい?『パパ』って言ってみてもいいんだぞ?ほれほれ?』
等と無理難題を呟きながら、「史たん」のほっぺをぷにぷにする。それでもこちらは一向に向こうとはしない。
『 ほれほれ、聞いとるんか~』
と言いながら、なおもほっぺぷにぷにをやめない「ボク」。
うららかな昼下がり、こうして「史たん」の初めての言葉は『へげへげ』に認められたのだった(誰に?いや、「ボク」に、だよ?後日「おかたん」の承認も取ったしね)。
因みに、この間「おかたん」はずっとベッドに横たわっていたのだった。まぁ、疲れたよね。それに、あと30分もすれば、「史たん」式お腹すいたアラームが鳴り始めるのだろうから、今はそっとしておいてあげよう。
そう思い、スマホのゲームを起動する。
こうして、新居での親子三人、初めての休日は過ぎていくのだった。
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