8日目:適正体温とは?「史たん」命名と「ボク」のと罪
出生届というものはどうやら期限があるらしい。それも、生後14日以内とな。はやっ!
そんなことを知ったのは、「史たん」が誕生してから、もうすぐ一週間となろうという昨日。いわれなければこんなことも頭になかったとは、全く持って、男親とは困ったものである(え?一緒にするなって?ごめんなさい)。
という訳で、焦って有給申請をしようとした訳だが、そうそう休みが簡単に取れるわけもない(まぁ、黒よりのグレー企業だからね)。それでも何とかかんとか、休みを取り付けたのが、翌週の月曜日。まぁ期限まで2日も猶予があるし余裕でしょ(笑)、と思っていました、その日が来るまでは。
日曜日。その異変は唐突にやってきた。
始まりは朝、前日夜遅くまで(いや、正確には朝早くまでだろうか?)「うた〇れるもの」をやっていたせいもあってか、目覚めはあまりよくなかった。目覚めても頭がぼーっとするし、寒気、、、という訳ではないがなんだか体がゾワゾワする。そして、、、腰が痛い。昨日までもそりゃぁ痛かった。だが、今日はそれも昨日以上にじんじんと痛むのである。まぁ、この時点では悪い姿勢のままゲームに興じていたせいなんだろうな~くらいにしか思わなかった訳だが。
なので、その日も変わらず、痛い腰を引きずりながら引っ越しの準備をしたり、ゲームをしたりでのんびり過ごした。もちろん昼前に突然かかってきた、
『 今、ショッピングに来てるんだけど・・』
から始まる「おかたん」の不定期連絡にもきちんと対応して見せた。
どうやらあちらのお母さんの意向で赤ちゃんセットを追加で買いに行っているらしいのだが、ちょっとなんというか、今なのか?という気がしなくはなかった。入院する前に「おかたん」が頑張って揃えていたのだから、買い足すなら、足りなくなってからでもいいのでは?と思うのは・・・「ボク」だけ、なんだろうな。多分だが、孫を持った親からすれば、やっぱり買ってあげたくなるものなのだろう。
産後まだ体調が安定していない「おかたん」は、早々に疲れ果て、車待機となったために電話をかけてきているそう。
いやいや、そもそも当人を無視して進むショッピングってどうなの?しかもその結末たるや、あまりハッピーエンドは想像できないのだが、、、とは突っ込んでおいたが。などと相槌を打ちつつ話を聞くこと十数分。親御さんが戻ってきそうだ、ということで電話はかかってきた時と同じく唐突に終わりを迎えた。
そんなこんなで、何かあるわけではないが、それなりに忙しい一日が過ぎ去ったその夜、異変は牙をむき始めた。
夕飯時、妙に寒い。
暖房器具がエアコンなためのうすら寒さだと思いこむことにし、熱めのお風呂で暖を取ることにしたのだが、どういう訳か浸かっていてもまだ寒い。いくら入っても、温まった気はしないので、お茶でも飲みながらぐったりすることにした。ただ、それだけでは暇なのでゲームでも、、、と思ったが、どうにもやる気が起きない。ゲーム内で銃なぞ持ち出したら、銃口より先にこちらの口から火を噴く気がしたため、色々諦め、早めに就寝することにした。
したのではあったが・・・就寝後、異様な寒さに目を覚ます。熱いはあっても、寒いをあまり経験したことのない「ボク」なのだが、どうしようもなく寒い。だが、引っ越し準備中の今、布団を引っ張り出すのも面倒くさい。というか、ベッドから起きたくない。だから仕方がなく、丸くなってやり過ごすことにする。丸くなって、自分の体を抱きしめると、何故だか不思議に少し寒さが和らいだ気がする。これが本当の丸坊主っていうんだろうなぁ、などと考えていると、益体のないことを考えているうちに、いつしか意識は闇の中へと消えていったのだった。
で、あくる朝。
区役所はきっと混むだろうからと、朝の8時半の開庁と同時に行けるように目覚ましをセットしていた、、、はずなのに、気付くと今しも朝の8時半を回ろうとしている。
バカな!寝坊だと!?
「ボク」は自分でいうのもなんだが、朝はそこそこ強い方だ。社会人になってからというもの、ギリ狙いのうっかり遅刻はあるものの、寝坊して全く間に合わないなぞということは一度としてない。それなのにである。
お陰で目覚めた瞬間から、フルロットルなのに超絶ブルーな、だるだるモードという為体。「史たん」を日本に認めさせてやる日だというのに、何たることか。その所為か、食欲もわかない。どうにかお茶漬けを軽くかっ込み、いざ出発!
出発したはいいものの、腰は痛いし、体は重い。寝坊のどん鬱気分の所為とはいえ、あまりに体が重い。それでもなんとか区役所に到着したのが午前9時半。
普段なら15分の道のりが、何故か30分もかかってしまった。人の多い区役所のため、病を移されてはたまらないとつけてきたマスクであったが、温かい庁舎の中ではただただうざったい。乾燥を気にしすぎる所為なのか、ずっとゴホゴホと咳が出る。
そんな体調を騙し騙し、受付を待つこと5分。
『 93番の方~』
と呼び声がかかる。電子受付のアナウンスを聞き逃したらしい。この距離にいて何故聞き逃したのだろうか?解せぬ。
疑問符を抱えたまま、カウンターにたどり着くと
『 「史たん」さんの登録をされに来た方ですか?この漢字なのですが、土でしょうか?士でしょうか?』
といきなり聞かれる。そんなに字が下手か?わかるように書いたつもりなんだがなぁ、と思いながらも
『 土です、土三つです。』
と答える。
『 わかりました、土三つ、こちらの漢字ですね?では、こちらで登録しますので、もう少々お待ちください。』
そんなやり取りのあと、さらに数分待つと、
『 93番の方~』
と呼ばれた。お役所とはいえ感じのいいおじさんである。
『 お疲れさまでした。こちらでの手続きは以上になります。ほかに手続きが必要と考えられる書類はこちらの案内の通りとなっております。案内をご確認の上、必要と思われる手続きを行ってください。ですが、児童手当の申請は必要になると思いますので、まずは3階で手続きをなさった方がよいと思います。』
とのアナウンス。当然、病院からもらった書類にも書いてあったので知ってはいた。そこらへん「ボク」に抜かりはない(つい先日まで知らなかった奴が何を言うか?という声はお静かに願いたい)のだが、そこでドヤっても仕方がないので、指示の通り3階に向かうことにした。
こうして「史たん」は日本という国に名実ともに認められた存在になったのであった!多少、拍子抜けではあるが、まぁ、そこは家にとっては一大イベントだが、世間的にはごくありふれた光景になるんだろうから、仕方がないと言えば仕方がないのだろうがなぁ。
そして、3Fに向かおうと歩を進めた「ボク」だったが、体は重く思うように前には進めない。仕方がないのでエレベーターを使うことにしたのだが、どうやら選択を誤ったらしい。まさか、こんなところで荒れ地の魔女(超失礼発言)と出くわすことになるとは!乗った早々、恰幅のよいおばさまに後乗りされてしてしまい、「ボク」は端っこで小さくならざるを得なかった。数秒とはいえ、こんな窮屈な思いをするのなら、いつもどおり黙って階段を使えばよかったと、後悔し続けたのは言うまでもない。
それでもなんとかたどり着いた3階。
まず驚いたのはちびっこの多さ。十人はいるだろうちびっこがキッズルームと思しき場所で遊んでいる。母親らしき女性がその横で何人もしゃべっているのを見る限りでは、何かの手続きの待ち時間らしい。そんな傍らを通り抜け、教えられたカウンターにたどり着く。母子手帳と先ほど発行してもらった住民票やら何やらを見せながら、書類を書くこと数分、大した手間もなく手続きは終了した。
『 あ~だるい、ゴホゴホ』
そう一人愚痴を言いながら来た道を戻る「ボク」。
ほかにも2、3手続きはあったが、どれも大して手間のかかるものではなく、無事に終了。
いや~いろいろあったけど、これにて無事に「史たん」は世間に認められる存在になったのであった。お疲れ!「ボク」。
そして、ここからは余談だが・・・実はこの後、「おかたん」の勧めもあって、病院なる悪の巣窟に行ってきた「ボク」。
病院に着くなり、渡された体温計の目盛りは38℃ジャスト。どうりで区役所を出てからは体調がよくなった気がしていたのだ。まさか体温が適温になった所為だったとは!びっくりだぜ(え?それは高熱の部類?そんなまさかぁ。だって、体温38℃って、一番体の調子がいい温度だよね?経験則から間違いないって!←大間違い)。
そして、案の定というかなんというか、その後の診断結果でまさかの事態が判明する。なんと下された診察は、、、インフルエンザB型。
だよね?思い返せば、体の痛み、だるさ、咳、前日からの悪寒、そして、実は朝出るときに測った体温は38.5℃(ただ、先にも述べたとおり持論ではあるが、38℃ジャストの体温はとても元気に活動できる体温な気がする、いや間違いない!)。こういう状況から類推するに、この病名は妥当な線と言わざるを得ない。病院では即刻隔離を宣告(というか診察前から待合室に待機はさせてもらえず、奥のよくわからない個室に連れていかれていたのだが)され、そのまま長期の休暇に甘んじることになった。
引っ越しのため雑然とした室内、看病してくれる人もおらず(あれ?相方がいても果たして看病してくれていただろうか?という疑問はさておき)、寂しい一週間を過ごすことになった。
と、ここまで書いて思ったのだが、あの3Fのちびっ子たちは果たして大丈夫だったのか?沼地の魔女は?横目で見た限り、立って走れる子はほぼいなく、はいはいがやっとの子ばかりだったような。子供って薬飲めないんだよね?タミフルなんてもってのほかだった気がする・・・まぁ、神様は常に試練を与えるものなのだよ!子供たちよ、強くなれ!世の中、危険はどこに隠れているかわからないぞ!
(といった「ボク」のマジもんの害悪行動の裏で、まさか我らが「史たん」にまで、その危機が迫っていたとは・・・次々回へ続く!)
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