海の家でバイトをしたらギャルに好かれた

海の家でバイトをしたらギャルに好かれた

作者 坂本宙

https://kakuyomu.jp/works/16817330660443523057


 父が経営する海の家でバイトをしている山本和樹は、小学生時にバーベキューで出会った父の友人の娘、飯塚梨奈と再会、両思いとなって付き合うことになる。埼玉に住む彼女と遠距離恋愛になると思っていたが、飯塚父の転勤により山本家の隣に引っ越してきたため、会えなかった夏の分をこれから埋めていく話。


 誤字脱字等は気にしない。

 語尾が「~た」と続いて単調になりがちなところがある。音読して気になるところを直すともっと良くなる。

 二人の夏はこれからが本番、という読後感がいい。


 主人公、男子高校二年生の山本和樹。一人称、俺で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。


 メロドラマと女性神話の中心軌道に沿って書かれている。

 現在の家に引っ越す前、小学生だった山本和樹は父親の友人たちと川辺でバーベキューをした。その時、飯塚親子と会い、肉が食べられない梨奈の皿の肉を自分の皿に乗せたことがある。

 七月末。主人公の山本和樹は高校ニ年の夏、あまり友達がないからと、勝手にシフトを入れられて、父親が経営している海の家でバイトをすることになる。

 腰が悪い父のかわりにビールケースを運んでいると、店前で三人の男にナンパされている金髪ギャルを助けた。夕方、父は知らないおじさんと楽しそうに話し、隣には助けたギャルがいた。父の大学の友人の飯塚と娘の梨奈だった。彼女から昼のお礼をいわれて戻ると二人の父親は酔い潰れていたため、海の家で彼女も泊まることとなる。

 翌朝まで酔い潰れていた二人の父親を起こし、ハメ外しすぎと梨奈に怒られ、なんでも言うこと聞くから許してくれと主人公の父親がいうと、三日間住み込みバイトをさせてくれと頼まれる。飯塚父も妻と喧嘩して家に居辛いからと三日間居候することとなる。

 飯塚父に美容院へ連れられ、美容師をしている友達の息子を紹介されて韓流マッシュにカットしてもらう。「めちゃくちゃ似合ってる」と彼女に褒められる。

 営業時間語にバーベーキューをすると、「川辺でバーベキューをしたのを覚えてないか?」と聞かれて小学生の時のことを思い出し、肉が食べられなかった女の子の皿から肉を取ってあげたことを思い出す。スイカ割りをしてみんなで食べながら、こんな夏休みならずっと続いてほしいと思うようになる。

 営業時間、暇をしていると昨日の美容師がやってきて、「梨奈ちゃんはどんな髪型でも似合ってるって言ってくれそうだよな。梨奈ちゃんは和樹くんのことが好きだから」「あんな見た目だけど彼氏いたことないみたいだよ」「まあ、和樹も梨奈ちゃんのことが好きなら思いを伝えてみれば」と教えられる。

 ホームセンターで花火を買って海の家に戻ると、父親に怒られる。見ていた飯塚父は事情を聞き、「夜あいつ抜きで花火やろ」と慰められる。

 閉店後、二人の父親は飲みに出かけ、二人きりになって、彼女に告白。両思いとなって二人は付き合うこととなり、「私、彼氏と花火やるの夢だったんだよね」と二人で線香花火をする。翌日、埼玉に帰ることを知り、遠距離恋愛になってしまう。毎日電話しようと連絡先を交換すると二人の父親は帰ってくる。

 一緒のベッドで寝ているとき、無防備の彼女にキスをすると起き、はじめてだったと怒られ、もう一度する。不死gなくらいぐっすり眠れた翌日、彼女の姿はなく、「本当は、今日までいる予定だったんだけどお父さんの転勤の関係で家に帰らないといけなくなっちゃった。突然のことでごめん。なんかあったら、連絡してね」と置き手紙が残されていた。

 九月になり、二学期が始まる。梨奈は引っ越しの準備が忙しく、あまり電話をかけることもできなかった。沈んだ気分で射ると、隣の席の女子から髪を褒められ、彼女ができたのかと聞かれる。彼女なら射ると答えると、教室みんなにしれわたるほど大きな声で「いるの⁉」といわれる。

 始業式後、隣の席の女に「一緒に帰らない?」と声をかけられ、共に校門を出ようとすると、梨奈に出会う。隣の女子は急いで帰っていった。

 父の転勤先が近くだと話す梨奈とデートし、ゲームセンターでプリクラを一緒に撮る。昼を過ぎて、この後どうするか聞くと家に来てと彼女に言われる。よくないよというと、「とにかく、行くよ」手を引っ張られる。すると、ついた先は主人公の家の隣だった。

 夏休みは終わったが、主人公の中では今日から始まるのだった。


 三幕八場の構成で書かれている。

 一幕一場のはじまりでは、海の家のバイトをする主人公が、ナンパされているギャルを助け、父の友人の飯塚娘の梨奈と知り、カノン所から礼を言われる。二場の主人公の目的では、飲みすぎたため飯塚親子を家に泊め、二人が三日間住み込みすることになる。

 二幕三場の最初の課題では、飯塚父につれられて美容院へ行き、友人の息子の美容師に髪を切ってもらう。四場の重い課題では、バーベキューで野菜嫌いの主人公の皿に野菜ばかり乗せられては飯塚親子に笑われ、小学生のころ川辺でバーベキューしたとき会っていたことを思い出す。

 五場の状況の再整備と転換点では、主人公が野菜を避けながら肉を食べ、梨奈がその野菜を食べるのをみて、バーベキューで肉が食べられないからと野菜しか食べていなかった子を思い出す。

 六場の最大の課題では、水を飲みに行こうと夜中に目を覚ますと隣に梨奈がいるのに気づく。一緒に階下へいき、コルクボードに貼られたバーベキューのときの写真を見て、この頃からk好きが好きだったのかもと梨奈が言う。美容師の男から梨奈は和樹が好きだから、彼女が好きなら思いを伝えてみればとアドバイスをうける。

 三幕七場の最後の課題、どんでん返しでは、花火のあとで告白して付き合うこととなるも、埼玉に住んでいる彼女と遠距離恋愛になるし、明日には帰ってしまうという。一緒に寝ながら初めてのキスをし、翌朝にはもう飯塚親子の姿はなかった。

 八場のエピローグでは、九月となり飯塚父の転勤による引っ越しで連絡が取れなかった主人公の前に梨奈が現れ、デートをしてプリクラを撮る。彼女の家に連れて行かれると、主人公の家の隣だった。一緒に過ごせなかった夏の分を、これから取り戻していく。

 お話の構成は考えられているし、展開もテンポよく進んでいく。

 

 書き出しも、いつ、誰が、何をしていて、どうしてかといったことがわかりやすく書かれている。

「高校では、あまり友達がいないから夏休みは暇だが父親は勝手にシフトを入れてしまうから少し困る」と、本人の意志でバイトをさせられていないことがわかる。

 しかも、「父親は、腰が悪い関係で重たい荷物は全て俺が運ばないといけない」ことから、父親としてはどうしても息子を当てにしなければならない理由があった。

 

 店前でナンパされていたときの対応、手際がいい。

 今年はじめて海の家のバイトをしたのではないのだろう。昨年の夏もやっているだろうし、中学時代も手伝っているかもしれない。

 

「俺は、海の家の中に戻り厨房でドリンクを作り始めた。今日は、なぜかいつも以上に人が多くとても忙しかった。昼休憩を取ることもできずに夕方までずっと働き詰めだった」

 海の家で働いている様子が現実的に、伺い知れる。

 とくに「昼休憩を取ることもできずに夕方までずっと働き詰めだった」と、具体的に書かれていることで、お話全体に真実味を感じるところがいい。


 梨奈の描写があまりない。

 最初は金髪ギャルで登場するのは問題ないのだけれど、そのあととくに書かれていない。川辺のバーベキューのときの写真に写っていた、小学生時の彼女の姿は書かれているけれども。

 主人公が梨奈を好きになったのは、外見の要素からではない、といいたいのかもしれない。

「俺は、今までギャルが苦手だった。しかし梨奈さんと出会って優しいギャルがいるということが知れた」とのちに書かれているため、彼女を好きになったのは見た目ではなく中身、優しさ。

 だから、見た目の描写があまりないのだ。


 前半の主人公は、どちらかといえば受け身で書かれていて、海の家に泊まると出だすのも梨奈から。

 彼女からグイグイこられると返せないところからも考えて、押しに弱い男子なのだろう。

 そんな中、主人公が本当に嫌だと思ったのは卒業アルバムを見られることだった。

「なぜなら、今の俺と違いすぎてどこで間違えたのか考えてしまうからだ」とあるので、子供のときは普通だったけれど、いまは内向的になってしまっている。

 

 飯塚父は妻と喧嘩して帰れないといっている。

 娘も海の家にいるので、妻は一人きりでいることになる。

 それはそれで可哀想な気がする。

 なぜ喧嘩していたのかを考えると、転勤と引っ越しがかんけいしていると推測する。

 転勤の内示が出て、妻は埼玉から引っ越したくなかったのかもしれない。

 引越し先は主人公の家の隣。

 どこの県に住んでいるかわからないけれど、海のある関東圏と推測して、千葉、茨城、神奈川。

 他にもなにか理由があるかもしれない。

 飯塚父は引っ越し先もわかっていたので、いろいろと相談をするために友人である海の家をしている山本に会いに来たと邪推する。

 娘の梨奈は、普通に友達と海に来たのだろう。


 飯塚父が、友人の息子の美容師に主人公の髪を切らせにきている。

 おそらく、飯塚父の地元は主人公の父と同じなのだろう。ひょっとすると、美容師の父である友人も、出身が同じかもしれない。

 邪推すると、美容院そのものが友人が経営しているのでは。

 主人公に髪を切らせるのは口実で、今度こっちに転勤で引っ越してくることを友人に伝えるために、美容室へきたのではないかしらん。


 小さな殻を破る瞬間として、髪を切る。

 結果、物理的にも主人公は変化する。

「韓流マッシュにしてみたよ。ロン毛より似合ってるよ」から、主人公はロン毛だったのがわかる。

 ひょっとすると、目元を隠すほどだったかもしれない。印象が暗く、性格も暗かった可能性が考えられる。 

 髪型の変化により、これまでの内向的な性格も変わったはず。

 とくに見た目の変化は、読み手にもわかりやすい。

 しかも「めちゃくちゃ似合ってる」と梨奈に褒められt少し嬉しくなる。このことが自信へと繋がっていく。


 ロン毛で見た目がいまいちで、受け身的な性格だった過去の自分から、見た目の変化で脱却できたおかげで自信を取り戻し、過去の自分とも向き合えたから、バーベキューで出会っていたことや梨奈のことも思い出せたのだ。


 壁のコルクボードに貼られた川辺のバーベキューの写真。

「その写真には、まだ陽キャだった小学生の時の俺が写っていた。梨奈さんも写っていた。今とは、違い黒髪で今よりも全体的に髪は、短かった」とあり、これまでの主人公が陰キャだったことがようやく明らかになる。

 また、二人の様子も、今とは逆になっているのがわかる。

 小学生時は、陽キャの主人公と陰キャの梨奈。

 高校時では、陰キャの主人公と陽キャの梨奈。

「この時から和樹のこと好きだったのかもなー」の梨奈のセリフから、主人公みたいな容姿になろうと思い、現在の金髪ギャルになったと推測する。

 つまり、小学生時の主人公は髪を染めていたのかもしれない。


 告白するために、美容師が助言に現れる。

 そもそも、どうして彼女が主人公を好きなのを知っているのか。

 考えられるのは、彼のいる美容院を梨奈が利用しているからかもしれない。そもそも飯塚父の友人の息子なので、川辺のバーベキューのときに参加していた可能性が考えられる。

 その後もバーベキューのような交流はあったけれども、主人公は集まりに参加しなくなったため、梨奈と会う機会がなかったのかもしれない。

 

 その後の主人公は、意外と積極的に行動する。

 そもそも、陽キャだった主人公が陰キャになったのはなぜなのか。

 恋愛絡みだったと想像する。

 なぜなら、梨奈とキスをして眠ったとき、「俺は、不思議なくらいぐっすりと眠れた」とある。これまではぐっすり眠れなかった日々が続いていたと推測。

 なぜ眠れなかったのかといえば、梨奈からの置き手紙を読んだあとの、「今日の夕方まで一緒にいられると思ってたのに。デートにドタキャンされた人の気分が少しわかるかもしれない。大袈裟かもしれないが俺は、そのくらいショックだ」の「デートにドタキャンされた人の気分が少しわかるかもしれない」という文言にヒントがある気がする。

 過去にデートをドタキャンしたことがあったのでは。

 そのことがきっかけで、陰キャへとなっていったと邪推する。


 登校して、隣の席の女子が面白い。

 さり気なくほめて、彼女がいると知っての「いるの⁉」と大きな声を出すところ。しかも一緒に帰ろうと声をかけてくる。

 さぞかし主人公がイケメンになったのだろう。

 こういう周りの様子を描いて主人公の変化を読み手に伝える書き方は良い。


 梨奈が同じ学校の制服を来て校門にいる。

 つまり、始業式に参加し、主人公が出てくるのを校門で待っていたのだ。ということは、クラスは違うのだろう。

  

 引越し先が主人公の隣の家なのはベタだけど、いい。

 良いのだけれど、隣の家に誰かが引っ越してきたことくらい気づきそうなのに主人公はしらなかった。ということは七月末から八月三十一日まで、ずっと海の家でバイトしていたのだろう。

 和樹がいない間に、引っ越しを済ませていたのだ。

 梨奈はきっと、驚かせようと連絡を意図的に控えていたのかもしれない。


 内容のわかりやすいタイトルだったし、二人にとっての夏はこれからが本番という期待と希望を感じる終わり方をしていて、読後は良かった。

 九月に入っても、暑い日が続く。

 二人の恋も、より暑くなるだろう。

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