サキュバスさん潜入を試みる
「おいす~。待たせたなぁみんな」
・待ってた
・こんばんは!
・ってお空!?
・おぉ飛んでる……!!
・あ、酔ってきた……
・酔いはしないだろ(笑)
・草
サキアによる本日の配信は空からだ。
リスナーからすれば突然にぷかぷかと空を浮かぶ映像で驚いたかもしれないが、羽を持つサキアだからこそこれは別に珍しいものではない。
「今日はちょいと思い切ったことをするぜ――王都の城、王族の住まう住居に魔族らしく不法侵入するぜ」
・不法侵入!
・犯罪だぞサキュバスさん!
・異世界だから良いんだよ!
・異世界でも不法侵入はダメだろ!
・しかも王族!!
・おらワクワクしてきたぞ!
「バレなきゃ犯罪じゃないんだよ――まあ簡単な話、魔法のおかげで完全に気配を消せるから大丈夫だっての」
・覗き放題じゃん
・魔法ってすげえ……
・これ本当なら許されないだろうけどサキュバスさんだからだよなぁ
・異世界だもんな!
・異世界だからこそ現代基準で判断出来ないのか……
・サキュバスが異世界で不法侵入していますなんて通報できねえだろ
・確かに(笑)
いい感じにコメント欄も盛り上がってきたところでサキアは今回どうしてこんなことをするのかの説明を始めた。
「どうも魔族に関しての認識に齟齬があるみたいでな。まるで魔族は滅ぼすモノだと洗脳染みた教え方をしているみたいなんだわ。俺が関わった人間たちが今までの教えにどうして疑問を抱かなかったのかって驚く姿を見るとどうもな」
・なんかありそうな設定ですね
・魔族は滅ぼすモノだと洗脳……何かありますねぇ
・それ、疑問を持ったら殺されたりしない?
・確かにそのパターンありそうだな
・その貴族さんたちは大丈夫なの?
疑問を抱けば殺される……そのパターンは当然サキアも予想が出来ている。
何か不思議な力か、或いはそう教え込むものだとこの王国でされている場合……所謂異端者に分類された瞬間に何をされるか想像もしたくない。
考えすぎかもしれないが、だからこそサキアはアリスたちにあまり言わない方が良いと伝えている。
『分かりましたわ。サキア様の言葉に従います!』
頼もしいほどに従順なアリスには苦笑したが……取り敢えず、こうして夜になった今だからこそサキアは動き始めた。
「見えたぜ」
・おう……これが王城!
・なんとかの伝説に出てきそう!
・シェエエアアアアアア! とか言って剣振り回しそう
・やめとけ
・金髪の王女様を助けたりするのか!?
・だからやめとけ!!
「あはは……聞き覚えっつうか想像出来るけど言及は止めとくぜ」
そんなこんなで城の最上部に到達だ。
あまりにも自然に王都に入れたことで気付かなかったが、どうもこの王都には聖なる力によって発動する結界が張られているようだ。
魔に属する者が触れれば体を焼かれる聖なる結界……何故サキアが通れたのか、それはサキア自身にも残念ながら分かっていない。
(……それも分かるかもしれないな。取り敢えず行ってみるか)
いざ城の内部に潜入しようとした時、ふとサキアは立ち止った。
なんだと思い目を凝らして気になった方角に視線を向ける――するとそこに居たのは妹分でもあるリルアともう一人、リルアと同じくらいにサキアのことを慕うボーイッシュなサキュバスの姿があった。
「……ティアラか」
ティアラ……小さく呟いたものの、心配性だなとサキアは苦笑した。
王都に入り込んだことに心配でもしてくれたのだろうが、今はとにかく目先のことにサキアは集中する。
「おはこんばんにちは~」
前世でちょっと聞いたことのある挨拶をしながら暗がりの城に入り込んだ。
まあ一番真上から侵入したようなものなので、屋上のバルコニーに続く階段には兵士たちの姿は一切ない。
やはり何の反応も無しに何者かが入り込むとは思ってもいないのだろう。
「……さて、王様か王妃か王子か王女か……どうすっかねぇ」
・悪い声と顔だわぁ
・その顔で罵られたい
・分かる。搾られたいよな
・何が?
・ナニを
・黙れい!
・搾られたら死ぬだろサキュバスだぞ
・それもまた男の夢!
・草
城の中は隅々まで掃除が行き届いているようでとても綺麗だ。
サキアにとって城というとサキュバスクイーンが根城にしている居城が一番馴染み深いところだが、それよりももっと綺麗である。
「……こっちに行ってみるか」
城の構造を知らなければどこに誰が居るかも当然分からない。
屋上から内部に進めば進むほど、夜だというのに巡回している騎士たちやメイドの姿をよく見る。
辺りを観察しながら歩いているサキアだったが、物陰で逢引きしている男女を見つけた。
「あぁ……こんなところでそんな――」
「良いでしょう。仕事はちゃんとやっておりますので」
「仕方ないですね。どうぞ来てください」
熱いキスを交わす二人を映像はバッチリ捉えている。
コメント欄が色んな意味で更に盛り上がる中、当たり前のようにエロいことには耐性のあるサキアは更に面白くしてやろうと彼らに向かって息を飛ばす。
「ふぅ」
それは視認できない桃色の吐息だ。
サキュバスにのみ認識出来るそれは男女の心に潜む性への渇望を分かりやすく発現させるもの。
・何したの?
「ちょい特殊な魔法みたいなもんだ。男の場合は数時間やり続けても全然萎えなくなるし、女の場合も同様で更に感度が上がる」
・なにそれ
・吐息バージョンの媚薬!?
・そ、そんなことも出来るんだ……
・え? 大丈夫……? 他の人にバレたりしない?
「理性は残るから大丈夫だ……たぶん」
それからサキアはそっとその場を離れ、直感の赴くままに進んでいく。
そうして辿り着いた先はとある一室――王女の寝室だった。
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