サキュバスさんかつての相棒を思い出す
・こ、これがリアル婚約破棄!?
・すんげえええええっ!!
・同接すごっ!?
・どこのロケだよ
・異世界だよ
・あるわけねえだろうがボケ!
・ま~だ信じてない奴居るんだww
・普通に信じられないのが普通だからな?
突如として勃発した創作物さながらの婚約破棄の現場にコメントは大盛り上がりである。
「あれは?」
「えっと……あの女性はジャンヌ様で、指を向けている男性はジャンヌ様の婚約者であるトーマス様です。お互いに伯爵家ですわね」
「ほ~」
家格は同じなのかとサキアは頷く。
こういう場合、どちらかの家の格が大きい方に婿入りか嫁入りするものだとサキアは思っていたがそうではないようだ。
まあ彼女自身前世の知識があるとはいえ、そういった家の事情に関してはてんで知識を持ってはいない。
「ジャンヌ様とトーマス様は……その、こう言ってはなんですがあまりにも両親に振り回されている方々ですわ。特にジャンヌ様は望まぬ婚約とご友人に漏らされていたようですから」
「……それでも我慢しないといけないのが婚約ってもんだよな」
「そうですね。私もそうでしたけれど、あのようなことがあって婚約は無くなりましたが」
あのままだとアリスは間違いなく偽りの心のままに結婚までしたはずだ。
その後に捨てられたとしても……きっとあの魅了のアイテムのせいで、捨てられることさえも黙って受け入れていたであろう光景が容易に想像出来る。
「サキア様のおかげですわ」
「そうか。なら助けることが出来て良かったよ」
実際問題、こうして王都に来なかったらサキアはアリスと出会わなかった。
もしかしたら別の世界線だと不幸に真っ直ぐ突き進んだアリスが居たかもしれないと思うと、やはり助けられて良かったと考えるのは普通だった。
・あれ? 何か知らないうちにあったの?
・というかそのご令嬢さんもめっちゃ美人!
・なんで異世界の人ってそんなに奇麗なの?
・異世界だからだろ
・Vtuberの方が可愛くね?
・二次元と三次元を比べるんじゃねえよ
・異世界は三次元……これもう分かんねえな
「コメントも大盛り上がりだなぁ」
「コメント……あ、これですか?」
「そうだ。そこに文字を打ち込んでいるのはこの世界……ここには絶対に来れない人たちだ」
「はぁ……え? サキュバス……?」
さて、事態は少し進んだ。
サキアの魔法はアリスも包んでおり、この場に置いて二人の姿は周りの人間たちからは認識されておらず覗き放題だ。
「魔女め。君のような女が婚約者だったとは思いたくもない……こんなにも優しいマドレーヌに酷い言葉を言い続け傷付けたというじゃないか!」
「酷い言葉など言っておりません! 確かにもう少し柔らかい言葉で諭せば良かったかと思いましたが、あくまでこれは注意でしたもの!」
「何が注意だ! その度に彼女は泣いていただろう!」
纏めると、トーマスに抱き寄せられているマドレーヌという女性に対しジャンヌが注意をし、それが原因でこんなことになっているらしい。
望まぬ婚約と言うならジャンヌ自ら首を絞めるようなことをするとも思えないが、貴族として平民に注意をしただけなんだろう。
「マドレーヌ様……一月前にこちらに編入された方ですね。今サキア様が考えられたように彼女は平民ですが、なんというか男性の懐に入り込むのが得意な方なのです」
「ふ~ん……」
寄り添い合うトーマスとマドレーヌから視線を外してサキアはジャンヌを見る。
ジャンヌの言葉は切羽詰まったものを感じさせるが、その瞳には決して嫉妬心のようなものは浮かんでいない……あるのは焦りのようだ。
(……もしかして、家での立場がそんなに良くないのか?)
そう思ったサキアに、先んじる形でアリスが教えてくれた。
「ジャンヌ様はとても秀才な方です。魔法の腕も学業も非常に成績は良いのですが、少々ご実家の方が不安定なのです。彼女のお父様が手がけていた事業が失敗したらしく、多額の借金を負っている形ですね」
「……なるほどな。つまりそれを肩代わりというわけじゃないが、一族として未来に生き残る希望を娘の婚約に託したと」
「はい。それで必要以上に婚約に拘っているのかもしれません。自分が上手く行けば両親も大丈夫だからと」
正に本当の意味で愛を求めない結婚というわけだ。
・異世界ってなんつうか……やっぱそういうことがあるんだなぁ
・政略結婚とかこっちからしたら時代遅れだもんな
・あるとこにはあるらしいけど
・でも……あのマドレーヌって人も美人だね
・めっちゃ可愛い
・俺はジャンヌさんかなぁ
・あたしもジャンヌさんの方が良いかも!
リスナーの中だと貴族令嬢のジャンヌ派が多いようだった。
コメントと現場を交互に見るようにしているサキアだが、こういった状況は何度も言っているが創作物の世界でよく見ていた。
こういう場合、守られている女が転生者であり不思議な力で男を魅了し操るというのがメジャーなもの……その観点から状況を見ていたが、トーマスは別に魅了されている様子はなく単純にマドレーヌに惚れているだけだ。
「それにしては……マドレーヌは何も言わないな?」
「そうですわね。ずっと下を向いていますし……」
全体的に体の成長に乏しいマドレーヌだったからか、男心をあまりサキアはくすぐられずそこまで注意深く見ていなかった……だが、そこでサキアは気付いた。
それはサキアだからこそ少しでも注意深く見れば分かること……いや、意識すれば分かることだった。
「……あれ?」
「どうしました?」
「……………」
サキアの瞳はマドレーヌを完全にロックオンした。
長い髪によって隠れる顔から下……まな板のように平らな胸からゆっくりと、ゆっくりと腰辺りに移動した時――サキアは確かに感じ取った。
男が持つべき未来に必要なマイサン、かつて自分も持っていたそれを。
「……マドレーヌの奴、ち〇こ付いてるじゃん」
「……っ!?!?!?!?」
・なにっ!?
・ふたっ!?
・やめろBANされる!
・いやでもおち〇ちんが付いてるって……えええええっ!?
・〇で隠しても分かるだろ!
・ちょっと待て! 異世界の女性には付いてるものなのか!?
・それはそれで需要があるのでは!?
・ここには変態しか居ねえのか!!
「いや……マドレーヌは男だ」
・!?!?!?
・男の娘!?
・きちゃああああああああっ!!
・さあさあ面白くなってきました!!
・もうわけが分からないよ僕には
・一体何が起きているというのだ!?
サキアさん、配信者として持っているようだ。
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