第7話 ん?今、何でもするって言ったよね? 【過去2】


「あっ、本堂ゆうき君……だよね?」


「えっ!? あ、はい」


 いきなり名前を呼ばれ、思わず返事をしてしまう。

 誰だろう? 近くでまじまじと見ても見覚えが無い。


「ごめんなさいナンパ男さん。彼氏が来たわ。ねっ、ゆうき君♪」

「「は?」」


 ナンパ男と声がハモる。

 今まさにナンパに引っかかったタイミングで実は彼氏を待ってましたムーブ!?

 アクロバティック過ぎるだろ!

 俺とナンパ男が呆然とする中、女性はお構いなしに腕をからませてきた。

 ここから俺は恋人役を演じないといけないのか……。難易度高杉内。


 それにしても、突然俺を巻き込んできた女性はとんでもなくスタイルが良い。

 細いウエストにボリュームのあるヒップ。

 服装もそれを引き立てるようにピッチリとしていて、綺麗なくびれが魅力的。

 そして何よりも目立つのが、服を大きく押し上げるバスト。……胸デカいっす。

 身体のラインがとても煽情的で、ナンパしたくなる気持ちも分からないでもない。

 年齢は俺より少し上くらいか。



「ごめんなさい、彼氏のフリをして(ボソッ」

「いやいや、あの流れからじゃ無理でしょう(ボソッ」

「お願い、困ってるの(ボソッ」

「さっきまでノリノリだったくせに(ボソッ」


「あのー、もしもし君たち?」


「ち、違う、そ、そんなことないわよ(ボソッ」

「ほら動揺してる(ボソッ」


「オレの声、聞こえてますー?」


「ゆうき君にワタシの何が分かるのよ(ボソッ」

「知りませんよ。そもそもあなた誰ですか?(ボソッ」


「無視しないでくれるかなー」


「うそぉ、ワタシだよ、ワタシワタシ(ボソッ」

「詐欺?(ボソッ」

「オレオレちゃうわ(ボソッ」

「やっぱノリいいじゃん。じゃ、俺はこれで(ボソッ」

「行かないで。あのナンパ男、面倒くさいのよ(ボソッ」

「そこは同意(ボソッ」


「全部聞こえてますよー、おーい」


「お願い助けて。ちゃんとお礼はするから(ボソッ」

「ん? 今、何でもするって言ったよね?(ボソッ 」

「言ってない!」

「えっ、お礼は身体で返すって? ―――いいんですか?(ボソッ」

「だから、言ってない!」

「お姉さんがそこまで言うなら……。じゃあ、抱かせろよ(ボソッ」

「男の人っていつもそうですね! 私たちのことなんだと思ってるんですか!?」

「うるさいなぁ、ほんとに」


「大概にsayよ ! もういいよ……リア充死ね!」


「とにかくナンパ男を撃退するまで付き合ってよ」

「はぁ……まあ、いいですよ」「ありがとう!」


「ということで、ナンパ男さんすみません! 彼氏が来たからあなたとは―――  あれっ、いなくなってる!?」


 いつの間にかナンパ男の姿が見えなくなっていた。

 諦めたのかな? まあ、明らかにナンパ慣れしていなかった。数字も4だったし。

 ナンパ上級者なら経験人数は最低でも2桁だよな、知らんけど。



「よかったですね。じゃあ、俺はこれで」

「待って、ゆうき君。今から時間ある? お礼させてよ」


 そう言って、ずっと絡ませていた腕を放そうとしない。

 それどころか、やたらと胸を押し付けてくる。

 腕が谷間にスッポリと収まるほど、破壊力抜群な胸のふくらみだった。


「お姉さん半端ハンパないって! じゃなかった。それよりなんで俺の名前を?」

「えっ、まだ分からないの? ワタシだって、ワタシワタシ」

「詐欺?」

「それもういいって! ワタシはゆうき君と同じバイトの―――」

「あっ、あいつ!」


 視界の先に、見知った人物を見つける。

 その人物は―――名取なとり討真とうま。トー君だ。

 トー君が、知らない女の子と手を繋いで歩いていた。

 こちらからは後ろ姿しか見えないが、随分と親しげに見える。

 そして気になることがもう一つ。トー君の数字は―――2だった。



「あいつ、他の女の子と……。エーちゃんはどうしたんだよ」


 俺は居ても経っても居られずにトー君のあとを追いかける。


「まだ話は終わってな―――って、もう! ゆうき君、ちょっと待ちなさい!」


 えっ、なんでこの人付いてくるの?

 後ろから先ほどの女性が追いかけてくる。

 だけど俺もトー君を見失いたくないので、足を止めない。


 トー君を尾行する俺と、その俺を追跡する女性。


 奇妙な追走劇が今始まる!




 ――――――――――――――――――――




 カレンとクラスが別れた中学3年。

 それまでは同じクラスだったので何をするにも一緒だった。

 周りからは恋人どころか夫婦と言われるくらいべったりだった関係。


 その関係が少しずつ変化していった。


 6月になると、新しいクラスにも十分に慣れる時期。

 俺の隣には、エーちゃんがいるようになった。カレンではなく。


 4人で行動する際も、その変化が徐々に現れる。

 例えば、並んで歩く時。

 4人で横一列はスペースが足りないことが多い。自然と前後で2人ずつになる。

 これまでは幼馴染ペアで別れるのが当たり前だった。

 同性同士で別れることはあっても、俺とエーちゃんがペアになることはほぼない。


 でも、この頃になると俺とエーちゃん、カレンとトー君の組み合わせが増えた。

 移動する直前までエーちゃんと会話していて自然な流れでそのまま並んで歩く。

 ふと後ろを振り返ると、カレンとトー君も楽しそうにしゃべっている。

 そんな光景が多くなっていった。


 決してカレンとの関係にヒビが入ったわけではない。

 これまで通り仲良く登下校をしていたし、休日に2人で出かけることもあった。


 単純に4人の仲がだけ。そう捉えていた。

 エーちゃんに惹かれ始めている自身の心のうちを、俺は直視していなかった。

 なぜなら、当時の関係性を心地良いものと感じていたから。

 ―――あるいは、どちらかに選べなかったから。


 しかし、エーちゃんとトー君は違った。俺とは考えと結論を出した。



 夏休みを控えた7月上旬。

 エーちゃんから「放課後に2人で会いたい」と誘われる。


 待ち合わせ場所の校舎裏に行くと、エーちゃんは緊張した面持ちで待っていた。

 その表情を見て、自ずと理解してしまう。

 その頃になると、エーちゃんからのスキンシップが露骨になり、会話の最中にじっと見つめられるようになっていたから。


「やっほー、ゆうき。来てくれてありがとう」

「ああ」

「まどろっこしいのが苦手でさ、ズバッと言うね……。ゆうきが好き、わたしと付き合って!」






 ―――――


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