番外編小噺 テレビ

 大学生の頃、所属していたサークルで使っていたテレビを買い替えようという話になり、全員でカンパした後古い方のテレビを貰い受けることになりました。当時テレビを欲しがっていたのが私くらいだったのと、カンパの際に多めにお金を出したこと、後は単純に私が当時部長だったのもあったので、特段反対意見などもなくそのテレビは実家の自室に置くこととしました。

 今でもそうですが当時の私は中々のゲーマーだったため、自室でゲームを何時間もすることが多かったので、テレビを搬入してからは大喜びで据え置きゲームを買い漁り回ったものです。近場の中古ショップで販売の終了したゲームを山ほど買っては、そこでレジをしていた友人によく笑われたのを覚えています。


 さて、そのテレビというのは物凄い古いものではなかったのですが、いわゆるリモコンが付属していなかったものなのでいつも手動でモニターの電源を入れていました。その日も夜遅くまでゲームをし倒した後、翌日の予定のためにとベッドへと入りました。時間は確か、午前二時を過ぎたあたりだったかと思います。

 ベッドに入ってどれくらいでしょうか。ふと浅い眠りから覚めた私は、どうしてか部屋が不自然に明るくなっていることに気付きました。もう朝になったのかと時計を見ますが、ベッドに入ってから一時間程しか経っていません。なら何故、と身体を少し起こしてから目に入ったのは、自室に置いてあるテレビがカラーバーを映しているということでした。

 テレビの電源を消し忘れたのだろうか、とその時は深く考えず、ぱちりと電源を消しました。ふっと消えた画面が暗転して、私はそのまままたベッドへと入ります。その後は気付けば朝を迎えていて、起き出した時にはテレビがついていることはありませんでした。


 しかしそれから数日後でしょうか。今度は自室でレポートを書いていた時でした。もう深夜とも呼べる時間帯に差し掛かっていることに気付いた私は、そろそろ寝ようかと伸びをしてから後ろを振り向きました。そして、うわ、と思わず声を出してしまいました。

 背面に置いてあるテレビが、いつの間にか電源がついていてカラーバーを映していたからです。今日は帰宅して一度もテレビをつけていないのにも関わらず、どうしてだろうと首を傾げながらその電源を消しつつ時計を見た私は、更に声を上げてしまいました。

 その時見た時計は、確か初めてこの現象に見舞われた時の時間とほぼ同じだったのです。


 流石に二度、それも同じ時間に起こる気味の悪さから、結局それからすぐに私はそのテレビをリサイクルショップへと売ることにしました。偶然であるとはいえ、三度目が起こった日には寝れなくなるだろうと考えたからです。杞憂だとしても嫌な恐怖に囚われるよりはましだと思ったのもありました。金額は二束三文程度ではありましたが、その後新品で買ったテレビではそのようなこともなかったので、実家から越すまでずっとそのテレビを使い続けていました。

 その不思議な現象から数年が経った頃でしょうか。既にその時には実家を出ていたのですが、その折にふと同サークルでホラー好きの友人と久々にお茶をした時、件の話をぽろっと零したことがありました。

 すると友人は首を傾げながらも、こんなことを口にしたのです。

「そのテレビ、侑介の家に行ってから民放見たの?」

「いや、見てないよ」

「じゃあおかしいじゃん。あのテレビって部室にあった時からゲーム用にしていたから、そもそもB-CASカード自体なかったでしょ。テレビが電波を受信していなかったら、カラーバーって映らないはずじゃない?」

 友人の言葉に、私はあっと声を上げます。確かに以前、まだそのテレビを自室に運んですぐ民放が映らないか試したことがありました。その時はそもそも何も映らず真っ暗になっていたのです。

 それでは、深夜のあの時、テレビに映っていたそれは何だったのでしょうか。既に手放して数年経った私では、真相は分からないままです。

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