草原ダンジョン 閑話

【まえがき】

 物語に直接関係無いので手抜きです。申し訳ありません。



「あ、コメント来てるぞ。美波は好き嫌い無いのか?ってさ」

「亜人なら大体あるわよ。私は魚と熱い物が食べられないわね」

「雪ん子と鬼のハーフだから熱い物が食えないのは分かる。魚は……もしかして柊鰯?」

「新鮮な物なら大丈夫なのだけれど、少しでも生臭かったら駄目ね。特に海魚は最悪だわ」

「そう考えたら桃太郎に出てくる鬼って大分追いやられてるよな。海に囲まれた岩島だから魚しか食う物ないぞ?」

「桃から生まれた化け物と不愉快な仲間達に同胞を殺されてるし、金品まで強奪されてるからなぁ。ほんま不憫やわ」

「鬼の前でその話はタブーよ。私はハーフだからか何とも思わないけれど、純血の鬼が聞いたら荒れ狂うわ」

「嘘だよね!?怖くなって来たんだけど!!」

「その話は俺も知らなかったな……いい機会だし、お互いの種族が忌避感を感じる行動や気を付けた方がいい事に関しては共有しておいてもいいかもしれん」


「鬼は桃太郎と魚以外にタブーあるんか?」

「改めて聞かれると難しいわね……性に奔放で他種族の異性を襲うとかかしら」


「コウ、気を付けてね」

「コウ気を付ける。」


「私はハーフだと言っているでしょう!襲わないわよ」


 しかしコメントは大盛り上がり。鬼ヶ島に言って襲われてくるぜと言う猛者まで現れる始末。


「あとは、そうね。同性に対して暴力をふるうとか、血を見ると狂暴になるとか」

「二人とも気を付けろよ」

「ちょっと玲、何で私から離れるのかしら」

「暴力反対」

「ハーフだから衝動とかは無いのに……」


「じゃあ雪ん子はどうなんや?」

「悪戯好きだから身の回りに気を付ける?」

「なんやフワッとしてるなぁ」

「温和な種族だもの。基本的にタブーも無いわよ」


「まぁ、美波に関してはどちらも当てはまってないみたいやしあまり考えんでもええな。それよりアンタのオトンとオカンの対格差エグない?夜の異種格闘技やん」

 

 そう言った毬の頭には、コウによって強烈な一撃が叩き込まれた。


「で、そういう鳳凰の亜人はどうなんだよ」

「んー?確かにタブーって直ぐには出てこおへんなぁ。好きな異性にダンス勝負を挑むことがあるくらい?」

「ちょっと面白いのやめてくれ」

 

「あっ一個思い出したわ。鳳凰は体のあちこちに鱗が生えてんねんけど、他人に触られるとごっつい気持ち悪いねん」


そう言って薄く赤の鱗が生える足首を見せた。


「逆鱗ってやつか」

「霊泉と竹の実しか食べないって噓なのよね」


「嘘に決まってるやろ。霊泉とか言う不思議泉は存在せえへんし、竹に関しては何十年も実を結ばへんねんで?でも甘い物はみんな好きやし、果物はもっと好きやなぁ。後は姫の存在自体がタブーやったわ」


タブーさんがそう言うと、玲が何かを思い出したような顔をした。


「何で姫がタブーなの?」


「所有するステータスとかスキルが特殊っていうのもそうやねんけど、鳳凰は蟻とか蜂とかと一緒で姫個体しか子供を産めへんねん。だから姫を人質にされるとその血族全員の行動を制限できる……あっ、これオフレコな?」


「全世界配信中だよ馬鹿野郎!!!」

「一度でいいから鳳凰のお偉いさんに怒られてくれないかな?」


「コーライクイネはどうなのかしら?」

「チョコレートが食べれません。玉ねぎが食べれません。お肉が好きです。以外で頼むぞ」

「馬鹿にしないでよ!アボカドも食べれないし生の牛乳も飲めないからね!」

「殆ど犬やん」

「因みに、狂犬病のワクチンを受けてない亜人に嚙まれると大変なことになるから気を付けてね」

「やっぱ犬やん」


「まぁ、覚えておいて損はない情報ばかりだったな。じゃあ、少し早いけど今日はもう解散するか」

「いや、コウの話がまだやん」

「サピエンス種はどうやねん」

「サピエンス種は詮索を嫌う」

「それはあなたの特性でしょう?」

「つまり、種族と言う物差しで測るだけではなく、先入観を捨てて臨機応変に対応しないとだめだというわけだな。お疲れさん」

「ほな、コウの特性でええやん。視聴者よ。質問なら今だぞ」


 PM 5:45 [How much] : 借金二千万ってまじ?


「マジだ。でもまぁ、勇者協会が色々と取り計らってくれているからあまり心配はないな」


 PM 5:45 [マウント厨] : レベルとステータスを教えろ。


「レベルは53、ステは生命が5でそれ以外は6だ。因みにスキル適正は無い」


 PM 5:46 [下世話な詮索家] : どうやって知り合ったの?


「教室で担任と部活動の話をしていたら玲に勧誘された」


 PM 5:46 [恋愛脳] : ぶっちゃけ、誰と付き合ってんの?


「「あぁー」」

「鋼は性自認が女の子だから、誰とも付き合っていないわよ?」

「おい、それは……」

「これで皆も安心してガチ恋になれると違う?勿論、コウ含め」


 PM 5:47 [安心院] : 安心した。

 PM 5:47 [アラサー] : 美波、俺だ!結婚してくれ!

 PM 5:47 [考察厨] : 糞真面目な美波ちゃんが言うって事は本当なのか?

 PM 5:48 [5りら] : 知らないとはいえ済まなかった。これからはマネージャー君改めマネーちゃん。いや、お姉ちゃんって呼ぶからな。


「迷惑なんだけど」


 PM 5:48 [ヌアライ] : お姉ちゃんと言うよりは姉御っていう感じだよね。

 PM 5:49 [裁判官] : 姉御で可決しました。


「もう原型も残ってねぇよ……まずい、スマホの充電が無くなってきた」

「モバイルバッテリーあるん?」

「あるけどこれは明日の分だから配信は切るぞ」


 PM 5:50 [犬] : おつ

 PM 5:50 [猿] : お疲れ

 PM 5:50 [雉] : 明日もあるか

 PM 5:51 [マウント厨] : 炎上につられて来たけどしばらくは見るわ。ちな毬ちゃん押し。


 コウは配信が着れている事を確認し、寝袋と魔物除けの匂い袋をもって女性陣から離れていく。


「夜目の利かない夜の番は大変だと思うけど頑張ってくれ」


 彼はそう言って再びかぶりを振る。


「僕、夜目効くよ?というか、近くに誰が居るかは匂いで分かるし、物音が立ったら起きちゃうんだよね」


 玲はそう言って頭の上に乗っていた二つの耳をパタパタと動かした。


「この中で一番五感が弱いのは貴方でしょう?守ってあげるから近くで寝て良いのよ?」


 昼間の苦渋にまみれた顔はどこへやら。彼女は自身と余裕に満ち溢れた声で笑う。


「どうして遠くで寝ようとしてたの?」

「流石にそろそろ言ってもええんと違う?」

「えっ!何が!?」

「コウはトランスジェンダーやあらへんで?」

「そうなの!!?」

「黙っていて悪かった」

「因みに私も知っていたわよ」

「というか、最初からおかしかったじゃない。亜人の中には成長の途中で性別が変わる子も居るし制服の変更もアレンジも自由だというのに、この人と来たらずっとズボンを履いていたんだもの。それに、玲の胸もチラチラと……」

「ちょっと、榊原さん!?もういいんじゃないですか?」

「黙っていた罰よ」

「僕の胸を見てたの?」

「見てません」

「正直に」

「ちょっとだけ」

「ふーん。見たいなら堂々と見ればいいのに」


「……あぁそうか。玲はそうやったな。じゃあ、コウが玲のお腹を撫ぜたいって言っていたのもバラシてええか」

「だっ、だだ駄目だよ!!何考えてるの!?」


 四足歩行の哺乳類は往々にして、いわゆる恥部が胸ではなく腹部に存在してる事は広く知られている。玲は亜人なので体の造りはサピエンス種に近しく胸部も第二次成長期から僅かに膨らみ始めているのだが、羞恥心自体は元となった生物に準拠するらしい。


勿論、鋼もその事には気が付いていたのだが、それでもその日の夜はあまり眠る事が出来なかった。



【補足】


Q.炎上していた割にアンチコメント少なくない?


A.雰囲気を悪くしないように鋼君が触れていないからだと思います。心の目で覗いてみれば見えるかもしれません。

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