陽炎 ☆☆☆

【陽炎】https://kakuyomu.jp/works/16817139557882273870

(総文字数2000字)


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あらすじ

 男が気まぐれに訪れた神社では懐かしい邂逅があった。懐かしいのに思い出せないその相手とのほんのひと時の会話、穏やかに流れるその時間の中で、男は何を思う?

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 この【テキストDJ 手前味噌 on air】というインデックスを作るにあたり、読み返してみたら『これ、結構いいやん』って思いました。ドラマチックな展開なんてないのだけれど、『いい雰囲気やなぁ』と。手前味噌全開でお恥ずかしいのですが。読む前はなんとなく☆二つかなと思っていた自己評価を☆三つに変えてしまうくらいに。


 辺りは全くの無風に感じられるのに、何故か一つのナニカだけが風に揺れているという風景って時折見かけません? そういった誰も気にとめていないけど、自分だけが気付いた不思議な現象ってあると思います。この物語は私の日常の中にあったそんな経験から想像力を膨らませて書いたものなんですが、皆さんにはどんな経験がおありでしょう。大人になると、そんな事を無邪気に話すような事はなくなってしまいますよね。だから、他人のそういう経験は中々知りようがありません。聞いてみたいなぁ、誰かのそんな経験。


 大人になるってステキな事なんですけど、大人になる事って、時には日常を楽しくなくならせたりもするんですよね。『こんな不思議な事があったんだよ』と無邪気に話せば『子供かよ。幼いな、感性が』みたいに思われる事もあるでしょうしね。


 さて、以下に書くのは、とあるネイティブアメリカンの部族が何人かで組んで、それぞれに役割を決めて鹿だかなんだかを狩る時の話です。

 一人の男が弓を持って物陰に隠れ、仲間が追い込んできた鹿の群れが来たら矢を放ち仕留める役割を引き受けた。しばらくすると予定通り鹿の群れが矢の届く範囲に走ってやって来たが、男は弓を引く事をしなかった。すると怒った仲間たちがその男の所までやってきて『なぜ、打たなかった。一頭も仕留められないなんて事は狩りをしてればある事だが、矢を打たなければ仕留められる訳がないじゃないか』と詰め寄った。すると男は答えた『雲を見ていた』と、空を見上げながら。そして、『鹿はいつでも狩れるけど、あの雲は今しか見れない』と続けた。それを聞いた仲間たちはその後、みんなで一緒に空を仰ぎ雲をずっと眺めた。


 今の日本の大人社会では考えられない話ですね。この話をいつどこで読んだのかを思い出せませんし、この話が本当にあったものなのか、それとも作り話なのかも私には分からないのですが。


『子供かよ。幼いな、感性が』と思われる事がないに越したことはないのが現代の日本かな、なんて事を思います。

でも、感性のままに生きて、喋って、それが仲間に受け入れられる世界って、なんかいいですよね。

 そういったコミュニティに入れる事って何よりの宝なのかも知れませんね。


 人が見れば幼いと映ってしまう感性も、創作の場においては宝ですしね。その宝を昇華するのも腐らせるのも、それを良しとするコミュニティに属せるかどうかにかかってくる事もあるのかも知れません。


 そんな事を思います。



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 それでは聴いてください。

 フジファブリックで【陽炎】

(良かったら、YOUTUBE等で【フジファブリック (Fujifabric) - 陽炎(Kagerou)】と検索してみてください)

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