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「まず最初に、異変に気付いたのは二週間程前の事でした。ねぇ?アギト?」
「ブッ!?ゴホッゴホゴホ……あ、あぁ。そうだな。あれは二週間前だった。」
そうむせ返りながらおうむ返しにしたのは半袖Tシャツにジーパンという随分と軽装で筋肉質な男だった。
どうやらアギトと言うらしい。
ん?あぁ、そうか。
そういえばこの男は最初に肉を取られて怒ってた男だったか。
なるほど。
さぞ肉が好きなのだろう。
どうりで噴き出す直前まで際限無く箸を口に運んでいた訳だ。
……と言うかなんで噴き出したんだ?
などと割とどうでも良いようなことを考えていると、シスターは続きを話すようにアギトへ促した。
「はぁ!?俺に全部話せってのか!?……ったく。
あー………はぁ……気付けたのは偶々だったんだ。確かあん時ゃ現場に変化が無さすぎて撤退命令が出ててよ。折角だからいつもより広めに見とこうと思って歩き回ってた訳だが………おかしかったんだ。その日。どれだけ歩いても奴らに鉢合わせることは無かったんだよ。」
その指示に難色を示しつつも、渋々と言った感じにアギトは話してくれた。
ただ少し気になるな。
「すまない。少し良いか?その感じだと普段はもっと出会うという解釈になるがそれで合ってるのか?」
「おう。普段なら少し歩けばそれだけでわんさかわんさかよ。しかもそん頃はよく襲われてな。『せめて目の前に出てくるな』だとかよく思ったもんだが……まさか出てこないなら出てこないでこんなに不安になるとはな………」
『失って初めて分かる大切さ』……って訳じゃ無いが、似たようなモノだろうか。
尤も、大切さが恐ろしさに変わった時点でそこには何のロマンもへったくれも無いわけだが……と言うかそんなレベルで多いのか。
どうやら俺の中のイメージを一新しなければいけないらしい。
「なるほど。一応聞いとくが数が減った原因に心当たりは?」
「いや、すまない。それがさっぱりなんだ」
ようやく手に持った皿をテーブルに置きながらアギトはそう言った。
「俺がそれに気付いた後、それを薫さんに報告して、もう少し詳しく調べようとしてみたんだ。ペイントボールを付けたりだとか腕を切り落とした奴を目印にしてみたりな?だがソイツら、発電所の内側に入ったっきり出てくることは無かったんだよ。んで、俺らで調べようと思ったんだが、ダメだった。数が多すぎるからな。そこで俺らは薫さんに頼んだんだ。」
「『阿』を貸してくれってな」
………あぁ、なるほど。
それでようやく合点が行った。
それで俺に仕事を振ってきた訳だな。あのおっさん。
まぁ、要するに………
「俺は断られた『阿』の代用品って訳だ」
「……すまん」
「いや、謝るな。気にしちゃねぇよ」
……だが時東薫。テメーは駄目だ。
だなんてふざけて言ってみたが割とマジでふざけんなよ?
なんで俺がテメーのビビリに付き合わなきゃならんのだ。
テメーが切り札切ってたらさっさと片付いてたろ。
「はぁーあ………じゃ、さっさと行くか」
「は?も、もう行くのか?杭とかは………」
「いらねーよ。要るとしたら……あ、そうだ。一人だけ最低限の武装でついて来てくれないか?」
「んぐっ………分かりました。では私が」
「ありがとう。それじゃ残った二人は肉が終わってからで良いからフル装備で頼んだ。あ、特に電爆は忘れないでくれ」
「お、おう……っていつまで肉食ってんだテメェ!!」
「うわっと!あっぶないな!いきなり何するのさ!」
……多分直ぐに来てくれるだろう。
そんな二人を尻目に弧白とシスターを連れて廃工場の外へ出た。
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