第1話 手掛かり
「
その日、薬屋「
「父は『ムラセレイ』に会えと言ったんだな?」
茜が確認するように、隣に座る充に聞くと彼は大きく頷いた。
「うん。でも、名前だけで手掛かりになるもの? 探すのは骨が折れそうな気がするんだけど……」
茜の父である
「鬼墨」とは、「
だが、より強い力を求めるようになった邪道が、強い妖怪や鬼を墨の原料として求めるようになり、絳祐はその
ここに集まった面々は、鬼墨になった絳祐を取り戻すために、行動しようと試みていた。
しかしそれにも情報がいる。分かっていることは二つ。
一つは、絳祐を元とした鬼墨は六つに分かれ、最低でも六人の術者の手元に渡ったということ。
もう一つは、「ムラセレイ」という人物を訪ねること。
前者は天狐の桜が以前から調べて知っていたことで、後者は沙羅の「
だが、「ムラセレイ」という名を聞けたからと言って、見つけることが容易でないことは誰もが分かることだろう。同姓同名がいることも考えると、これが手掛かりになるのか、充は疑問に思っているのだ。
「確かに、名前に備わっている意味が分からなければ難しいだろうな」
俺が問いに答えると、彼は囲炉裏を挟んだ向かい側から神妙な面持ちで聞き返した。
「意味?」
「苗字に『ムラ』と付くのは、ある組織に属している人間だけだ」
「ある組織って?」
再び尋ねると、俺から見て充の左隣に座る天狐がすかさず答えた。
「東の
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